第229話 エリカのフラグ回収
角笛が吹かれさっきまで和気あいあいとしていた武士が一斉に慌ただしく動き始める。
「行くよ?」
「おう!」
走りだした美紀と瑠香を先頭に蓮見、七瀬、エリカの順で後ろをついて行く。
襲い掛かってくる武士を瞬殺し道をこじ開けて進んでいく。
蓮見は弓を構え矢を番え、遠くから走ってくる武士を倒していく。それでもカバーが間に合わない敵を七瀬が魔法を使い補っていく。
徐々に増えていく敵の数の多さに蓮見が決断する。
「ここは俺が!」
そして上空に出現した紫色の魔法陣から毒の矢が放たれる。
「行け! スキル『猛毒の捌き』!」
Killヒットからの絶対貫通効果によりさらに別の敵への追撃をしていく蓮見。
だけど遠距離攻撃は蓮見の専売特許ではない。
弓兵が遠くから蓮見達を狙い一斉に弓を構え矢を放ってきた。
降り注ぐ矢の雨を無視して走り続ける五人。
「スキル『導きの盾』」
薄い緑色の障壁が七瀬の上空に出現し降り注ぐ矢の雨から五人を護る。
「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」
「スキル『水手裏剣』『ダブルサンダーブレイク』!」
弓隊のいる方向に向かって蓮見の攻撃が先行し敵の陣営を崩し、動揺し隙が生まれた敵の元に水手裏剣と雷が追撃する形で敵を倒していく。
本来は大型ギルド級の人数で攻略するクエストを半ば強引にクリアしていく五人。
蓮見の攻撃が敵の指示役にKillヒットしてくれているおかげで敵の動きが鈍くなっている。
「紅!」
「わかりました!」
二人がアイコンタクトで意思疎通をする。
「スキル『爆焔:chaos fire rain』!」
「スキル『猛毒の捌き』!」
七瀬の味方に対する補助魔法の一つが蓮見の毒の矢を全て呑み込む。
上空に出現した巨大な魔法陣があの日多くの者が恐れた悪夢の惨劇を武士にプレゼントする。
完全毒耐性ではない限り一撃でも喰らえばダメージ必須の矢が三百本戦場へと放たれていく。Killしテクニカルし絶対貫通によって何人者武士に地獄を見せる矢は終いには地面に刺さり地面を毒のフィールドに変えていく。攻撃を受けずとも毒によるダメージを受けた敵はKillやテクニカルじゃなくてもただ攻撃を受けただけで倒されていく。
「ぐはぁ!?」
「あぁぁぁぁ」
「ガハッ!?」
そして多くの叫び声が戦場に響き渡るがそれでも止まる事を知らない惨劇に美紀、エリカ、七瀬、瑠香がまさに神災だと思ってしまった。そもそもよくよく考えれば毒のダメージをこの先自分達も食らうのだと思うとそうとしか思わなった。蓮見は自分達の侵攻方向の敵を倒すと機転を利かせたのだが、地面にまでは機転が回らなかったらしい。なにせこの男だけは完全毒耐性を持っており毒は受けないのだ。
しばらくし敵の数が一気に減った所で、今度は前衛の二人が突撃する。
「行くわよ!」
「はい!」
美紀と瑠香が三人を置いて勢いよく手薄となった敵陣へと向かって行く。
二人が武器を構え突撃すると、毒のダメージを気にせずに敵も二人に向かって突撃してくる。だがそれは安易な行動だった。弱った敵など美紀と瑠香の前では大した敵ではないのだ。
「スキル『パワーアタック』『連撃の舞』!」
「スキル『加速』『ペインムーブ』!」
美紀の十四撃と瑠香の六連突きさらには二人の怒涛の攻撃に敵は光の粒子となって消えて行く。
「相変わらずやる気出した時の二人は獅子ね」
「まぁ二人共戦闘狂みたいなところありますから」
「たしかに」
すると敵の大将が中から顔を出してきた。
それを見た蓮見はすかさず行動にでる。
「こうなったら俺も負けてられないぜ。スキル『猛毒の捌き』!」
さらに九十本の毒の矢が上空から降り注ぎ始める。総数四百二十本まで増えた毒の矢は過去最高に仲間を戦慄させる結果となっていく。ただしそのうち九十本は敵の大将一人に向けられた。プレイヤーがある一定区間まで侵入した事でアルゴリズムによって動いたボスは腰から刀を抜くと同時にHPゲージ出現からの九十の毒の矢を自ら受ける形となってしまった。それでもVIXの高さから生き残ったボスではあったが毒のダメージが身体を蝕んでいき美紀達が到着した頃にはHPゲージが三割まで減っていた。
それからボス戦闘エリアに入ると同時に間髪入れずに止めを刺しに行く三人にボスは防御姿勢を取る。
「スキル『パワーアタック』『破滅のボルグ』!」
「スキル『睡蓮の花』!」
「スキル『爆焔:炎帝の業火』!」
元々かなりのダメージを受けていたボスはあっけなくそのまま光の粒子へとなってしまった。
それからエリカが【亡命の大魂】×20個を手に入れて大喜びかと思いきや、それとは別に亡命シリーズのアイテム一式がギルドメンバー全員に勝利アイテムとして配布された。
そのまま目的を果たした五人は来た道を歩いて戻っていく。
そして。
「ご褒美よ」
そう言ってエリカが皆の前で蓮見の唇を奪った。
「……エリカさん?」
「ふふっ、ご褒美だから気にしないで」
「ちょっと! なにしてるのよ! あれは冗談だって言ったじゃない!」
美紀が慌てて蓮見とエリカの間に割って入る。
「あらなんのことかしら?」
とぼけるエリカ。
「ちょっとエリカさん! 何してるんですか!」
「こ、恋人でもないのにそんな事、だ、ダメに決まってるじゃないですか!」
七瀬と瑠香もすぐに美紀の両脇に移動しエリカから蓮見を護る。
そこから状況についていけない蓮見をおいて、女の戦いと言う名の討論が始まった。蓮見は予想外の嬉しいラッキーハプニングに目をパチパチさせて一人思い悩んでしまった。エリカさんって俺の事好きなのかな……それに頬を染めてたエリカさん可愛いかったと。
こうして美紀が一歩リードするとエリカが一歩リードしなおすと恋愛戦争は火花を激しく散らしていた。そして今まであまり関与してこなかった七瀬と瑠香が今回加わった。
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