第197話 蓮見VS白ヘビ


「やっとか……俺の闘志がめちゃくちゃ燃えてきたぁ!!!!!」


 ピンチと言う局面は人を絶望に陥れるとは限らない。

 それを証明するかのように蓮見がニヤリと微笑みながら目をキラキラさせ始める。

 そっちがその気ならこっちだって目にもの見せてやろうと言う、目には目を、機転には機転を、と言う考えである。

 どちらが相手の発想を上回るか実に興味深いと本来とは違う方向に頭が働き始めた蓮見。


「行くぜ!」


 正面から突撃し、白ヘビの一撃をわざと受ける蓮見。

 そこから痛みに耐えてギリギリまでHPゲージを減らしていく。

 残り一割程度となったタイミングで攻撃を受けるのを止める。

 水色のオーラが蓮見の身体から出現し、AGIが1.5倍まで上昇する。

 火事場スキルの併用で機動力を調整できる範囲でギリギリまで高めた蓮見は一度大きく深呼吸をする。


「やるか! ここからは俺の全力シリーズ。ど根性だ!」


 気持ちを切り替えて、集中した蓮見が倉庫の中を縦横無尽に走り始める。

 そんな蓮見を顔を動かして視界に捉え続ける白ヘビ。


「スキル『連続射撃3』!」


 五本の矢が白ヘビに向かって飛んでいく。

 だが殆どダメージが通らない。

 それでも通常攻撃と合わせながら、攻撃の手を休めない蓮見。


「まだまだ! スキル『虚像の発火』!」


 矢が炎が次々と襲い掛かる。

 白ヘビも大きい身体を動かして蓮見を追い詰めて体当たりするが、動きが速くなった蓮見には当たらない。

 そして攻撃が外れ、バランスを崩した白ヘビの隙を狙い蓮見が攻撃していく。

 狙いはテクニカルヒットポイントとなる身体の表面ではなくその裏側にある白く綺麗な鱗に護られていないテクニカルヒットポイント。

 攻撃を上に意識させてからの下腹部への攻撃。


「やっぱり筋肉しかない裏側は表に比べたらダメージが通るな!」


 だがテクニカルヒットしなければSTRが低い蓮見ではダメージと呼ぶには弱すぎる程度にしかHPゲージが削れなかった。


 おおよその攻撃パターンを掴めてきたところで心に余裕が出来た蓮見は更にここから手数を増やしていく。


「今こそ目覚めろ! 最恐にして最強の力! 法陣は更なる進化の過程に過ぎず! 矢を正義とするならば、悪を貫く理由となるだろう! 目覚めろ『猛毒の捌き』!!! 更に『虚像の発火』だぁ!!!」


 詠唱を行い攻撃力を高めた毒の矢とスキル『虚像の発火』の連続攻撃。


 攻撃は白ヘビの鱗を少しずつ削りながらダメージを与え、一定のダメージが鱗に加わり怯んだ所に裏側にあるテクニカルヒットポイントへ炎を纏った矢が突き刺さり爆発と同時に発火による火傷のダメージを毎秒与えていく。


 ようやく攻撃と呼ぶにふさわしいチャンスがきた。


 ここで休んでいるわけにはいかない。


「スキル『罰と救済』!」


 蓮見が射撃体勢に入ると、金色の魔法陣が前方に出現する。

 それは神々しく光輝き、魔法陣の淵には魔術語で書かれた文字が浮かんでいる。

 だがこれ単体ではスキルの性能を引き出す事は出来ない。


「スキル『虚像の発火』!」


 蓮見の構える矢の先端が炎を灯す。

 矢は赤いエフェクトを纏う。


「悪いがここからは俺の全力シリーズ、名付けて白ヘビの丸焼きだ!」


 まず矢を放つ。

 矢は金色の魔法陣を通り、赤いエフェクトすら燃やしてしまいそうな勢いで荒々しく燃え始める。

 罰と救済の効果で強制的に硬い鱗を無視して爆発し大ダメージを与えた虚像の発火の一撃に続くようにして蓮見が白ヘビの上に飛び乗った。


 そのまま急いでアイテムツリーを確認する。


「しまった……補給し忘れてた。まぁ八個あれば多分足りるだろ……うん!」


 そう言って沢山の攻撃を受けてボロボロになった白い鱗の隙間に強引に手榴弾のピンの部分をひっかけていく。

 間違ってこんな所でピンを抜いたり、白ヘビが動いた反動で抜けてしまえば蓮見も一緒に天に帰る事になってしまうので、連続攻撃で白ヘビが怯んでいるうちに迅速に対応していく。

 テクニカルヒットの連発に湯気を上げる身体。

 だがそれでも白ヘビのHPゲージは四割ある。

 油断は出来ない。


「良し、八個飾りつけ終わり!」


 蓮見は急いで白ヘビから離れる。

 まるでクリスマスツリーに飾り付けするかのように危険と書かれた手榴弾が白ヘビにデコレーションされた。


 タイミングが良かったのか蓮見が離れると白ヘビが立ち直ってきた。


「あぶねぇ! 正に間一髪だったな」


 バカみたいに一直線に突っ込んでくる白ヘビの突進を躱して、通常攻撃で手榴弾を撃ち抜く。

 撃ち抜かれた手榴弾が爆発し、誘爆を誘い残りの手榴弾も爆発していく。

 鱗がボロボロになりダメージが通りやすくなった白ヘビに大ダメージが入る。

 爆炎が倉庫内で舞い、強い光が一瞬倉庫内全体を照らした。

 爆炎が晴れると、蓮見の視界の先では口を開けて苦しむ白ヘビの姿があった。


「まだHPあるのかよ。ったくしぶといな、一なら死んでくれよな、もぉ~」


 そのまま手に持っていた通常の手榴弾を一つまるでお賽銭箱にお金を入れるようにしてピンを抜き放り込む。


 するとすぐに白ヘビの体内で爆発して白ヘビの丸焼きが完成した。


「良し、白ヘビの丸焼き完了!」


 白ヘビは防御力がかなり薄い内側からの攻撃を受けて倒され、光の粒子となって消えていった。

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