第196話 常識が通じない相手もいる
ヘビだった。
全身白色でありながら全長七メートル越えと蓮見より大きい。
舌を出して獲物を見つけたようにして、少しずつ近づいてくる。
その瞳はオッドアイズで赤色と青色。それがまた薄暗い倉庫の中で不気味に光って見える。
倉庫の中には物は何一つないことから隠れる場所等どこにもなかった。
ただ倉庫は横にも縦にも広く、動き回るには十分すぎる広さがある。
「Killヒットポイントが舌だけだと!? ふざんけんなよ! それじゃちゃんと戦わないといけねぇじゃねぇかぁ!!!」
蓮見は驚いてしまった。
運営も馬鹿ではない。蓮見対策を多少なりともしているのだ。
そもそも運営からしたらたまにはちゃんと戦えと言う話しである。
ヘビは舌を出したり直したりしているため狙いにくい。しかもヘビの舌は細く小さいことから狙う事がただでさえ難しいポイントとなる。
ヘビは鼻だけではなく舌を使うことで近くにいる獲物や捕食者の匂いを感じ取る習性がある。 舌を今みたく出し入れしているは、空気中に漂っている微小な水分粒子に含まれる匂いを集めているとされている。 そして、口の上の部分にあるヤコブソン器官という部分に舌を入れて匂いの感覚情報を脳に送る。つまり戦闘中全く狙いわけではないが狙うのは至難の業と言えよう。
口元から見える鋭い二本の白い牙はくわえた獲物を逃がさないように先端が内側に向かって曲がっていて細い。一度でも噛まれれば蓮見の身体を貫通してしまう気しかしない。
「まぁいいや、たまには真面目に頑張って見るか!」
白ヘビは今も少しずつ近づいてきている。
ここで蓮見が弓を手に取り、戦闘態勢にはいる。
「とりあえずデカいし一発決めてやる! スキル『虚像発火』!」
ヘビは火が苦手だと言うことぐらいバカな蓮見でも知っている。
ただこれが毒ヘビなのかそうじゃないかは知らないが――。
パクッ
「うそ?」
ゴクリ
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!!!!」
炎にビビる所か全長十メートルにもなる白ヘビは矢をパクッと食べ吞み込んだ。
そして体内でジュワ―という音を立てて消化する。
これには流石の蓮見も驚いてしまった。
「てめぇ、ヘビの癖に常識はずれなことするなよ!」
お前がそれを言うな! と周りに誰かがいたら言われそうなことを叫ぶ。
相手が想定外の事をするのは得意でもされるのは全く慣れていない蓮見は一瞬で頭がパニック状態になってしまった。
そんな蓮見を白ヘビが黙って待ってくれるはずもなく。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……頼む……」
白ヘビが頭から突撃して蓮見の身体を吹き飛ばす。
壁まで吹き飛ばされた所でようやく蓮見の頭が冷静にこの状況を分析し始める。
そう言えばここに来る前に武士の一人が「凶暴なだけでなく常識が通じない奴です」と言っていた事を思い出す。つまりは火を恐れないと言う事なのだろう。
「いてて……」
更に白蛇の体当たり。
「……グハッ!?」
すぐに態勢を立て直してヘビの胴体の下をくぐり抜けて、反撃するために狙いを頭部に絞る。
すると視覚外からの尻尾で追撃に今度は倉庫の奥深くに飛ばされる蓮見。
地面をボールのようにして転がってボロボロになりながらもすぐに立ち上がる。
このまま負けてあげられる程、蓮見は優しくないのだ。
「ふざけんなよ、これでも喰らえ! スキル『猛毒の捌き』!」
三十本の毒の矢が蓮見の後方に出現した紫色の魔法陣から勢いよく連射され白ヘビに向かって飛んでいく。毒の矢が次から次へと刺さるが殆ど効果がないように見える。
それを見た蓮見の口から思っていたよりも早く弱音が出てきた。
「これはヤベェな……」
こちらのHPゲージは早くも半分まで減ってしまった。
だが相手のHPゲージはまだ一割程度しか減っていなかったからだ。
第三層へと続く忍者と言い白ヘビと言いAGIやVIXと言った値の一つがずば抜けて高いのだ。
そのVIXの要となっているのが体表の白く綺麗に輝く鱗である。
また『猛毒の捌き』の毒攻撃は一切効かない事から白ヘビには完全毒耐性があることがわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます