第十八章 天災突破と白熱恋愛戦争

第188話 第三層への挑戦




 第三回イベントが終わって第三層への告知がされてから数日後。

 日付は六月十五日で土曜日である。


 この日蓮見は珍しく朝から起きて、ログインしていた。

 今日は遂にまった第三層へのボス攻略日なのである。


 朝からエリカ、七瀬、瑠香からのラブコール。

 更には美紀が蓮見の部屋に突撃訪問と蓮見がもう少し寝ると言う選択肢がなくなった日でもある。


 視界が光に包まれ、しばらくして視界が回復すると二層のギルド前にいた。

 そのままキョロキョロと視線を飛ばすと、蓮見を起こして一足先にログインした美紀と朝からラブコールをくれたエリカ、七瀬、瑠香がいた。


 ちなみに美女三人からのラブコールの内容は、


「あっ起きてる、偉いわね蓮見君。今日は大事な日だから今すぐ起きてログインお願いね。場所はギルド前よ」


「おはよう~。今日は早起きの日だよ。って事で今からギルド前集合ね」


「おはようございます。今からギルド前に来てください」


 と全員から同じ事を三分起きに言われ、それでも寝ようとする蓮見に止めの一撃で美紀が部屋に来て布団をはぎ取り「今からボス攻略するから起きて!」と言われ、ログインする準備が出来るまで美紀にせかされ続けた。


「ふはぁ~おはようございます」


 大きな欠伸をしながら蓮見は皆に挨拶をする。


「お! 来た来た! ちゃんと起きて偉いわね紅君」


「なら早速行くわよ!」


 これ以上我慢できなさそうな美紀を筆頭に五人はアイテムの確認を済ませてから第三層へと繋がるダンジョンの場所の確認を行った。



 蓮見はログインしたばかりでボスの情報を何一つ知らない。

 昨日までどうせ明日確認してもいいだろう。なんたってこっちには美紀と七瀬がいる。と完全にトッププレイヤーの二人を特に勝手に信用し勝手に情報収集しているだろうし後で聞けば教えてくれると甘い事を考えていたためだ。それに瑠香とエリカもいる。と思っていたのだが、蓮見はこの時内心少し困っていた。


 四人が楽しそうに会話を続けているせいで、今更ボスってどんな奴とは聞けない状況ができていた。それでも一歩一歩と近づいてくるダンジョン。


 ここは正直に頭を下げた方がいいのか。


 それとも知っている振りをした方がいいのか。


 蓮見が寝起きの頭をフル回転させて考え始める。


 だが先日見た金髪美女の一件以来、下手な事を言えばまた怒られるかもしれないともう一人の蓮見が訴えてきた。


 そんなこんなで色々と悩みに悩んだ結果――聞く事にした。


 どうせ後でバレるならと思い腹をくくり、美紀に声をかける。


「なぁ、里美。実は――」


 美紀達が立ち止まる。

 そして全員の視線が蓮見に集まる。


「実は俺な――」


「ん? わかってるって。暴れてきていいから頑張ろう!」


「そうよ。紅君。紅君は一層でボスと私を攻略(落と)したじゃない。だから今日も期待しているわ」


 蓮見の言葉を遮るようにして美紀とエリカが肩に手をあてて笑みを向けてくれる。


「それにもう着いたし」


「って事で紅君一番最初に入っていいわよ。私達はその後ろでいいから。ね? 里美」


「そうね」


 蓮見に何も言わせず七瀬と瑠香がボス部屋の部屋を開けて、美紀とエリカにそのまま背中を押される。


「ちょ、ちょ、待って二人共――」


 慌てて踏みとどまろうとするが、そこに七瀬と瑠香が合流し力で押し負ける。

 そのまま蓮見を戦闘に五人がボス部屋と入った。



「おっ! 今回のボス部屋も結構広いわね」


 美紀がボス部屋を見渡す。


「そうねー」


 エリカがボス部屋を見渡す。


「それにしてもボスは?」


 七瀬がボス部屋を見渡す。


「さぁ、どこにいるんだろう?」


 瑠香がボス部屋を見渡す。


 美女四人の声にようやくお目覚めになられた蓮見の頭が活発に動き始める。


 ――ん? 見えない?


 ――となるとホラー系のボスか


 ――もっと言えば幽霊の類? 


 いやいやいやいや、幽霊とかいるわけ……いや……ゲームの中の幽霊って……誰かが人工的に作ったNPC……でも透けたり、浮いたり、取り付かれたりするのか……


 蓮見だけが黙り疑問に思ったのか美紀が視線を蓮見に向ける。


「あれ? そんなに震えてどうしたの?」


「ん? そ、そんな事ないぞ」


「もしかしてボス怖いの?」


「そ、そんなわけ……あはは」


 身体を小刻みに震わせて蓮見が答える。


 そんな蓮見を見て美紀が小首を傾げる。


 なぜなら蓮見はボスの情報を何一つ持っていない。

 つまり一番弱いくせに一番情報を知らない。

 故に今のメンバーでは致死率だけで言えば蓮見がナンバー1とも言えよう。

 そんな状況で心に余裕などがないわけで。

 もしこれでホラー系のボスだったら蓮見に未来はない。

 だが今更逃げるわけにもいかないので覚悟を決める。


 美紀様、エリカ様どうかわたくし目に普通のボスをお与えください。


 七瀬様、瑠香様なにか会った時は私に優しさと言う愛情をお与えください。



 突然巻き起こった暴風はボス部屋中心部に集まり、ボスが姿を見せた。

 その後ろには第三層へと続く魔法陣が結界に護られて一緒に出現した。


 蓮見と大して変わらない背丈で全身が鋼鉄で出来た忍者だった。顔はない。ただ人型なだけ。


 ボスと一緒に空中に出現した数字がカウントダウンを始めゼロになった。


 戦闘開始だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る