第187話 エリカの料理センス



 蓮見は久しぶりに現実世界で全力シリーズを使った。

 その結果身体を動かすだけでも痛い状態となっていた。

 そんな蓮見を見て、美紀とエリカも最初はクスクスと笑い楽しんでいたのだが当の本人を見ていると可哀想に思い、動けない事を良い事にした悪戯と言う名のちょっかいをかけて構ってもらう事を止めた。


「いてて……」


「ほら男なんだからシャッキとしてよ」


 そう言って美紀は蓮見の家にある医療用箱からシップを取り出してペタペタとふくらはぎやに貼っていく。

 ひんやりとした冷たさが蓮見の下半身を刺激する。

 とても気持ちいいと思いっていると。


「はい、終わったわよ」


 と言って美紀がシップを貼った上からペチッと軽く手のひらで叩いてきた。


「いてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


 蓮見の叫び声が部屋中に響き渡る。


「全くなんで女の子より動けないのよ。てかよくそんな身体してるくせにゲームの中では有り得ないぐらいちょこまかと動けるわね」


「だってゲームの中はそう言ったのが現実世界程シビアじゃないし。あくまで俺の身体をベースにしてるだけだから、訛ってても関係ないと言うか……」


「ほぉ~つまり本当はあれくらい動けると自分でもわかってたのね?」


「あっ。いや……それは……」


「もぉ~なんですぐに楽しようとするのよ。今日からたまにはちゃんと動く。いいわね?」


「はい」


 蓮見は美紀の呆れた表情に頷く事しかできなかった。

 自ら墓穴を掘った蓮見は美紀が医療用箱を元合った場所に戻す姿を見ながら、優しいのか厳しいのかよくわからんと心の中で思った。

 そのまま美紀は料理を作っているエリカの方へと向かって歩いて行った。


 リビングから聞こえてくる笑い声に楽しそうだなと思い、起き上がって会話に混ぜて貰おうかと思う蓮見ではあったが中々思うように身体が動かず断念。

 自分の身体がまさかここまで怠け者になっているとは自分でもかなりの驚きである。

 対して日頃から身体を動かしている美紀は元気でよく動いている。

 そう考えると美紀が蓮見を心配になるのも当然である。




 しばらくすると美紀とエリカが料理を持って筋肉痛なった蓮見の元へと料理を持ってきてくれた。


 すっかりお腹が空いていた蓮見は二人の手元にある料理に目を向ける。

 そこにはハンバーグ、フランクフルト、ポテト、山菜のごま添え、白米が用意されていた。


「お待たせ~。蓮見君ちゃんとお野菜も食べてね」


 エリカはそう言って蓮見の部屋にあるテーブルに料理を置いて、微笑んでくれた。

 美紀が残りの二人分の料理を置く。


 熱々ハンバーグとフランクフルト、ポテト。ハンバーグはフォークで押すと肉汁がじゅわっ~と溢れ出し、フランクフルトとポテトは香ばしい香りがしており鼻孔(びこう)をくすぐり食欲をそそる。


「すげぇ~。これ本当にエリカさんが作ったんですか?」


「えぇ、勿論」


「そうよ。正直私も目の前で見た時はびっくりしたわ」


 珍しく蓮見の前でエリカを褒める美紀。

 美紀がそう言うと言う事は間違いないのだろう。


「食べていいですか? 俺腹ペコで」


「えぇ、どうぞお召し上がれ」


「ありがとうございます。いただきま~す!」


 早速、手に持っていたナイフとフォークでハンバーグを適当な厚さに切り分け食べる。


「う~ん、めっちゃうめぇ!!!!!!!!!!!!」


 蓮見は喜びの声を上げる。

 そこから蓮見はあまりの美味しさに料理に夢中になって食べ始める。

 そんな蓮見を見て美紀とエリカはお互いの顔を見て微笑み合う。


「なんか子供みたいで可愛いわね。それに幸せそう」


「でしょ。蓮見の場合わかりやすいと言うかね。でもこの顔見るとまた作ってあげたくなるのよ」


「その気持ち今ならわかる気がする」


「でしょ」


「うん」


 しばらくしてから美紀とエリカも食事を開始する。

 エリカはこの時、蓮見が喜んでくれた事が何よりも嬉しかった。

 自分の味付けが蓮見にあうか不安ではあったが、途中から来た美紀に確認してもらいながら一生懸命頑張ったのだ。

 それが報われたと思うととても嬉しかった。

 それに三人での食事はいつも一人で食べている食事とは違い、新鮮で楽しく、人の温もりを感じる時間となった。




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