第167話 【深紅の美】ギルドVS【雷撃の閃光】ギルド



 とある拠点の前では綾香率いる【雷撃の閃光】ギルドと【神眼の天災】率いる【深紅の美】ギルドが対面になりバチバチと火花を散らしていた。


「今度は逃げないの?」


 笑みを向けながら質問する綾香。

 仲間部隊が勝手に手を出さないように手を横に広げて静止させている。


「逃げる? あんな手に二度も引っかかったのは何処の誰でしたっけ?」


 挑発された事を関わらずそれを揚げ足を取るようにして蓮見が答える。


「へぇ~、つまりあれは最初から作戦通りだったってことかな?」


「まぁ、そんな所ですかね」


「なら次はないよ? 私に同じ手は二度は通用しない、そのことわかってる神眼の紅?」


 神眼の天災だけでなく新しい呼び名に蓮見の頭が???で一杯になる。

 が意味はわからずとも、すぐに褒められていると頭が認識した。

 それすなわち蓮見のテンションが上がり始める事を意味することは今更語る必要はないだろう。


「紅君のやる気スイッチが入ったわね」


「えぇ。私達の紅のテンションを上げる。自ら自爆するとは綾香も馬鹿ね」


「人型人造殲滅兵器を甘く見ないでよ」


「ふふっ。紅さんいつも通り私の期待を超えてくださいね」


 エリカ、美紀、七瀬、瑠香がニヤリと微笑む。



 そうして両者が武器を手に取り、戦闘が始まった。



 蓮見の一射が綾香を襲う。

 その瞬間、美紀、瑠香、エリカがそれを合図として突撃する。


「二人とも行くわよ!」


 敵の遠距離攻撃。

 それを躱しながら綾香との距離を詰めていく三人。


「「スキル『アクセル』!」」


 直後美紀と綾香の移動速度が向上する。

 槍と双剣が激しく火花を散らしぶつかり合う。これが暫定二位と三位の実力者の本気のぶつかり合いだと言う事は誰が見ても一目瞭然だった。


 スキルを使わない分派手さには多少欠けるものの瑠香とエリカ、【雷撃の閃光】ギルドの精鋭部隊のメンバーですら下手な援護はかえって足手まといになると判断する。


 カン、カン、キン――


 何度も何度もぶつかり合う武器。


 綾香の護衛となる敵前衛部隊が瑠香とエリカが接触する。


 一見、二対七と分が悪いが蓮見の援護射撃を頼りに二人は前線の維持に成功する。


「エリカさん!」


「任せて!」


 蓮見の連続射撃を利用した攻撃が敵の遠距離攻撃を次々と一撃で撃ち落としていく。


「「「……は?」」」


 敵はその光景にやはり驚かずにはいられなかった。


 こちらの魔法、スキル攻撃がただの矢に撃ち落とされる。

 それも簡単にだ。

 噂に聞いていても実際にその光景を目にした者達は戸惑いを覚えた。


 そしてブツブツと一人呟くそうにして歌い始める蓮見に敵の緊張感が高まる。


「ラ~ラ~ラ~、俺様最強の弓使い~からのスキル『連続射撃3』『虚像の矢』!」


 瑠香とエリカの背後から勢いよく飛んでくる五本の矢。

 慌てて回避行動を取ろうとするが瑠香の猛攻がそれをさせない。

 敵は蓮見の一撃が必殺である事を知っている。だからこそ過剰に反応せざるを得ない。


 たった一人の男が戦局を動かす。

 残念ながらゲームの世界では現実世界に比べるとそれが比較的簡単なのかもしれない。


 圧倒的存在感を放ち、今も歌い続ける一人の弓使い。

 第一回イベントの時はコイツ何をやっているんだと笑ってバカにしていた。だが今は違う。笑ってバカにするには強すぎる相手になってしまった。噂に踊らされて必要以上に警戒し過敏に反応してしまった者たちは瑠香の実力を読み間違える。蓮見と瑠香を比べた時、実際に強いのは瑠香である。が噂がその認識を変える。そしてエリカ。彼女もまた【神眼の天災】に付き従う者。ただ弱いままなわけがないのだが、敵の頭には生産職だから弱いと言う認識が未だにある。それは正解で合って間違い。


 間違った判断をし続けた者達は一瞬で四人倒され、一人が致命傷となってしまった。


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