第十六章 成長を超えた進化
第166話 喧嘩する程仲が良い
時間が経ち、イベントもラスト三十分となった頃。
ようやくイベントも大詰めとなったタイミングでと言うべきだろうか。
【深紅の美】ギルドの第二拠点となった場所に一つの大型ギルドメンバーがやって来た。
「あれ……まさか……綾香じゃないよね……」
七瀬が遠くから歩いてくるギルドメンバーの一人に指を指して言う。
「うん……残念ながら綾香さんだね」
「あはは……」
瑠香の言葉に七瀬が苦笑いをする。
このタイミングで最後のラスボスと言うべき相手が自らこちらに近づいてくる。
こんな事が現実にあるだろうか。
「あ~あ、どうする? 逃げる? 戦う?」
最悪のタイミングと言えばタイミングだが、瑠香は軽く準備運動をしながら戦うか逃げるかを七瀬に問う。
七瀬が口を開こうとしたタイミングで、二人の後ろから声が聞こえてきた。
「戦うに決まってるだろ」
「く、紅さん?」
「と、その前にミズナさんには言いたい事が沢山あるけど……」
チラッと蓮見が七瀬を見ると、ビクッと身体を震わせる。
「心当たりあるんですね?」
「う、うん。ごめんね」
「まぁ今回はいいです。俺も大分ミズナさんにご迷惑をお掛けしていますので」
「そう? それなら――」
「よかったなんて言わないわよね?」
「誰のせいで私がイライラしたか心当たりないの?」
ミズナの心の声を先読みしたように美紀とエリカが言う。
その言葉にミズナが視線を宙に泳がせる。
「……あはは」
「「ん?」」
「すみませんでした。私が悪かったです。紅迷惑かけてごめんね」
「まぁ反省してくれているなら」
「紅が許しても私は怒ってるからね」
「紅君が許しても私は怒ってるわよ」
「はい……すみません」
「まぁまぁ二人共落ち着いて。ミズナさんも反省しているし」
願いが通じたらしく。
「「…………まぁ、今はそれどころではないわね」」
蓮見の仲裁に美紀とエリカの矛先が今も徐々に距離を詰めてくる二十人に向けられる。
【雷撃の閃光】ギルドは勿論最後の悪あがきの標的になっており、防衛にも戦力を回している。当然【灰燼の焔】ギルド相手にもすぐに決着がつくわけがなく、今もソフィを中心とした部隊が戦っている。
だけど敵部隊にはあの綾香がいる。
だからなのか四人のやり取りを静かに見ていた瑠香が胸に手を当てて安心する。
ここで仲間割れをして争っていては負けると直感が感じ取っていたのだ。
「ふぅ……まったく皆さんは仲がいいのか悪いのかよくわかりませんね」
瑠香がボソッと呟くと。
「さぁ第三回イベントもようやくラストスパートだな。皆行くぞーーー!!!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」
気合いを入れた五人の元に綾香を先頭に【雷撃の閃光】ギルドメンバーが目の前にやって来る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます