前のエピソード――第167話　【深紅の美】ギルドVS【雷撃の閃光】ギルド

「今だ！」

　その声が瑠香とエリカに届くと、二人は残った三人を倒すべく早速行動に移る。

「スキル『ペインムーブ』！」

　瑠香の鋭く洗練された攻撃が敵一人の身体を貫く。

「スキル『バーニングファィヤー』！」

　エリカの大剣が赤色のエフェクトを纏いながら前衛の二人を身体毎切り裂く。

　グハッ！

「スキル『加速』！」

　怯んだ二人に瑠香が間髪入れずに近づく。

「スキル『水龍』！」

　蓮見とエリカの攻撃で弱った敵の一人を水龍が襲い、もう一人は瑠香が直接止めを刺す。

　蓮見の援護が敵の魔法とスキルを撃ち落としてくれるので回避は対処が間に合わなかったものだけでいい。瑠香にとっては何とも戦いやすい戦場であったことは間違いない。

「スキル『加速』『水龍』！」

　そのまま敵の攻撃をかいくぐり、敵後方部隊へと突撃していく。蓮見の援護が間に合わない物は躱すか水龍を盾にして対処し、そんな瑠香の後ろを追いかけるようにしてエリカが駆ける。

「こうなったら広範囲攻撃だ！」

　敵が少数を対象にした攻撃から前衛の味方部隊がいなくなった事を機に攻撃のパターンを変えてきた。これでは迂闊に近づく事は出来ない。

「ルナ！」

「わかってます！」

　瑠香がエリカの言葉を合図に最短ルートから外れ、エリカの前方から消える。そのまま水龍を囮に敵の注意を惹きつける。

「喰らえぇ！！！」

　エリカは急いでアイテムツリーから手榴弾を取り出し、それを大剣で撃つ。まるで野球のボールがバットで打たれたように手榴弾が敵陣目掛けて飛んでいく。

「まだまだぁ！！！」

　更に一つ、また一つと飛んでくる手榴弾とは別に迂回しながら近づいてくる瑠香。

　そして敵からしたら一番厄介な蓮見の攻撃が障壁を次々と破壊する、この状況に敵は苦戦を強いられる。エリカの手榴弾が次々と地面に落ちて爆発と規則性があればまだ良かったのだが蓮見の矢が障壁を貫通しそのまま手榴弾に触れ爆発とその攻撃は不規則となっていた。

　仮に集団行動を止めてバラバラに動きそれぞれが敵を倒しに行こうとするものならそれこそ【神眼の天災】の思うつぼだと言う事は全員がわかっていた。

　なぜなら【雷撃の閃光】ギルドメンバーから見た【神眼の天災】は理由や状況はどうあれリュークだけでなく綾香とも戦い引き分けに持ち込めるだけの実力がある持ち主なのだ。それにさっきからさり気なく破壊力、速度が通常攻撃より高い『レクイエム』の連発とMPコントロールと言うPS（プレイヤースキル）を身に着けた蓮見相手に安易な行動はそれこそ愚行である。

　それは過去数多くの提示板のスレッドで書き込まれた内容を見ていれば容易に想像がつく事実である。

「紅さん！　一気に攻めましょう！」

「おう！　任せろ！」

　そしてエリカが攻撃を止めたタイミングで蓮見が遠距離攻撃を止め、複製した【鏡面の短剣】を手に持ち走り始める。

　敵から見たら右手から瑠香、正面からはエリカ、左手から蓮見が襲い掛かる。

　ここから三人の蹂躙が始まった。