第135話 綺麗な人



 拠点へと戻った蓮見と美紀はエリカ、七瀬、瑠香と再度話し合いをした。

 優勝候補の一つでもある【灰燼の焔】そして綾香が手を組んでいる【雷撃の閃光】。

 この二つが動き出した事が非常に大きかった。

 話し合いと言っても最終確認の意味を込めてだった。

 エリカの罠設置率も後数分で終わると聞いた美紀はある決断をする。


「なら予定通り、ここからは紅も戦場で戦って貰う事にするわよ」


 美紀は七瀬と瑠香から聞いた報告から少なくとも【灰燼の焔】そして【雷撃の閃光】からこの後何度か攻撃を受けるかもしれないと考えていた。


「わかった。それにしても思ったよりこれはヤバイかもしれないわね」


 七瀬は蓮見と美紀の目を見て言う。


「そうね。でもまぁこっちも最終兵器を動かす以上リスクは伴うけどうちのギルド長はそう簡単に負けないわよ。ね、紅?」


「うん? あぁ! 任せろ!」


「私もそう思います。紅さんが負けるとしたら圧倒的物量差かトッププレイヤーだけです。元々私達はとても不利な状況からの開始です。だからこそリスクを取ってでも勝ちにいかないとです!」


 瑠香の言葉に全員が頷く。


「ならまずは敵の居場所を掴むという意味でも周辺ギルドを潰していくわよ」


「任せろ!」


 ようやく待ちに待った蓮見の外出許可にテンションが上がる。


 当時【灰燼の焔】からはなんだかんだ相手にすらされないと考えていた蓮見達は予定外の事の多さに何度も作戦を修正をしていった。その中で美紀と七瀬は敢えて蓮見を戦場に出す事を考えたのだ。蓮見ならば拠点を破壊するのに適している。なにより戦場に出ればそれだけでそっちに敵プレイヤーの目が集中する。そしてその案は先程の休憩兼会議中に満場一致で承認された。


 それにそうなるとこちらの拠点防衛は比較的に楽になると考えたのだ。

 なぜなら皆のお目当てである【神眼の天災】本人がここにいないからで、襲ってくる敵と言えばそうゆうのを関係なしに拠点制圧をするプレイヤーに限られるからだ。確証はない、だけどその可能性は十分に高かった。


「となるとだけど、私かミズナどちらかが必ずフォローするとしてどっちにする?」


 美紀の質問に七瀬が考える。


「ここは里美にお願いする。なんだかんだ紅と里美、私とルナの方がペアのバランス的にはちょうどいいしね」


「わかった。なら少し休憩したらまずは北から攻めてくるわ」


【深紅の美】ギルドはイベント専用MAPのかなり北西よりに位置しており、北と西は比較的に地形の関係上敵ギルドが少ない。


「OK~」


「防衛は私達に任せてね、紅君」


「ありがとうございます」


「次の作戦発動までは絶対に私達が守り抜きます! だから紅さん達は拠点を沢山手に入れて来てください!」


「わかった。それにしても今日のルナはご機嫌だな」


「はい! 今なら罵倒されて身ぐるみ剥がされて戒めを受ける事になっても紅さんがそれを望むなら受け入れられるぐらいに興奮してます!!!!!!!」


 この時、蓮見の思考が置いてけぼりになってしまう。

 よく意味はわからないが、瑠香が興奮してやる気がある事はわかった。

 だけど何て答えていいのかがわからないので、すぐ近くにいる七瀬に助けを求める。


「なんて言えばいいと思います?」


「なら裸になれ! とかどう?」


「それ俺捕まりません?」


「大丈夫よ。仮にそうなっても私が護ってあげるから。それにルナMだから喜ぶと思うけど?」


 七瀬は妹より蓮見の味方になると言ってくれたが、なぜだろうあまり嬉しくない。

 コソコソ話しをするものの、一向に解決の糸口が見つからない蓮見は今度は逆サイドにいる美紀に助けを求める。


「俺どう反応したら正解と思う?」


「任せて」


 美紀はそう言うと、手をポキポキと鳴らし始める。


「エリカ? ゴメン、数分でいいから見張りお願い。私ミズナとルナと大事なお話しがあるから」


「あらあら、元気が良いわね」


 そう言ってエリカは美紀に髪の毛を掴まれて拠点の裏へと連れて行かれる姉妹を笑顔で見送る。

 そして聞こえてくる姉妹の悲鳴に蓮見は背筋がゾッとしてしまった。


「あら紅君大丈夫? ふふっ。見張りは私がするからここで休んでていいわよ」


 エリカはそのまま外に出て、拠点の見張りをする。


 蓮見は拠点の小窓から石段の一番上に座るエリカを眺め、なんだかんだ仲良し女三人組の帰りを待つことにした。


「それにしてもエリカさんってこうやって見ると、本当に綺麗な人だよな」


 蓮見は一人残った拠点の中でポツリと呟いた。

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