第121話 動き出したギルド
美紀達が敵ギルド拠点の周囲に罠等かないかを確認している頃【雷撃の閃光】ギルドではソフィと綾香が本陣となっている拠点の中で話し合いをしていた。
「このまま数を増やして支部拠点を増やし続けると攻撃と防御に余裕がなくなる。現在拠点の数は7。これだけあれば後半疲れ切った敵ギルド拠点を潰していけば間違いなく上位入賞できると思うのだけどどうかしら?」
綾香の言う上位入賞とは10位以内である。
「まぁ多分大丈夫と思うよ。仮に10を超える拠点を手に入れても全てを護り最後まで維持するのはそれだけでも殆どのギルドはかなりキツイだろうし中規模ギルドでも結構キツイからね」
ソフィは椅子に座り、綾香は小窓を開けそこに座って外の景色を眺めながら話している。
第三回イベントでの綾香の狙いは【神眼の天災】ただ一人。
その為今は偵察隊から【深紅の美】ギルドが何処に拠点を構えているかの報告待ちの為暇を持て余しているのだ。
大型ギルドである【雷撃の閃光】ギルドは小規模ギルドと違って本陣はとても大きく遠くから見てもすぐにわかる拠点である。ただその大きな外見のハンデとしてギルドポイントも大きく振り分けられており、本陣は持っているだけで10ポイントと最高ポイントとなっている。
そのため【深紅の美】ギルドのように小規模拠点を何個も手に入れるように、人数がいて可能ならば大規模ギルドで大型の拠点を幾つか手に入れそれを確実に護り抜いた方がかなり有利にゲームを進める事ができるのだ。
「とは言っても、大型ギルドが絶対的に有利じゃない以上油断はできないわね」
「どうゆう意味よ? 私と綾香に勝てるプレイヤーなんて限られているでしょ?」
「そうだね」
「それにここには多くの味方もいるのよ。【ラグナロク】クラスの超強豪ギルドが戦力を裂いて攻撃してこない限り私に負けはないわ」
綾香は自信満々にそう答えるソフィを見て、無理もないだろうと思った。
だってそれが普通。
常識的に考えれば確かにそうなのだが……。
「紅はこのイベントで必ず何かをしてくる気がする。その時に私達だけじゃない、恐らく【ラグナロク】を含めた上位を争う大型ギルドが幾つも被害を受けると思うんだよね。だって彼はこの私以上にいつも楽しい事を見つけてくるからさ。そう前回のイベントでもそうだった、相手が強ければ強い程、紅は進化するんだよ。私はその正面からぶつかってワクワクに巻き込まれたいんだよね!」
「確かに第三回イベントが決まってから第一回イベント十六位のルナも仲間に率いているものね。偵察隊からそれを聞いた時は正直焦ったわ。私達の誘いは断るくせに、向こうの誘いは受けるなんてね。彼については何を考えているか全く先が読めない。そう言った意味では何をするかわからない」
綾香は小窓から降りて、ソフィーの近くに行く。
「それは違うよ。きっと考えてないんだよ。ただその時その時を全力で楽しみながら考えているんだよ! きっと私以上にね」
「そんなに笑顔の綾香初めて見たわ」
「そう?」
「えぇ」
綾香は蓮見と戦う事を心の底から楽しみにしている。
そしてその時を全力で楽しむ為に、本当は最前線で戦って活躍したいのを我慢している。戦っているうちに蓮見がここに来るかもしれないからだ。
「それより紅関係の報告早く来ないかな~」
「いつかは偵察隊が戻って報告してくれると思うわ」
その時、二人の元に偵察隊からの報告が入ってきた。
二人の表情が真剣な物になり、表情から笑みが消える。
「報告します。本陣西より敵攻撃隊と思われる所属不明ギルドが進行中です」
「数は?」
「確認できただけで二十七です」
「こちらの防衛は私と綾香を抜けば三十。……仕方がない私も出るとしよう」
そう言って立ち上がるソフィを手を使い止める綾香。
「ちょうどいいや。準備運動がてら私が出るよ。その代わり魔法使いを五人程借りていくけどいい?」
「かまわない、ならすまないが頼んだぞ」
ソフィは力強く頷きながら、座り直す。
ソフィから見た綾香の目はキラキラと輝いており、口角が僅かに上がっていた。
「りょ~かい! 悪いけど敵の所まで案内お願いしてもいい?」
「かしこまりました。では魔法使いの精鋭五人と一緒に案内致します」
綾香は報告をくれた見張りの一人と一緒に敵攻撃隊への場所へと向かった。
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