第120話 振り回されている理由
「ぞ、増援!? このタイミングでか!?」
「見つけた、指示役! スキル『バーニングファイヤー』!」
エリカが大きくジャンプをして敵の指示役をだけを狙い、襲い掛かる。
剣が青い炎をメラメラと燃やしながら、エリカの一振りが決まる。
だが傷は浅い!
だけど、その攻撃は敵プレイヤーに動揺を与える。
そこに追い打ちをかけるように後方部隊を全滅させた蓮見が『連続射撃3』を使いエリカを背後から襲おうとしていた敵三人を撃ち抜く。
そのまま連続で攻撃を開始する。
この時彼らはようやく理解した。
たった二人に壊滅させられていくパーティーに勝利はないと。
これなら他のギルド拠点を探して襲った方が何倍もマシだと。
こうして【深紅の美】ギルドはイベント開始一時間弱で早くも新しい二つの拠点の確保と防衛において順調なスタートダッシュを決めていた。
今は防衛担当の蓮見とエリカはのんびりとギルド前にある石段に座りゆっくりと休憩している。
やはり敵が限られた場所からしか来ないのはとてもありがたい。
そして今は周囲の目はない。
エリカは石段に十五個の『危険』と表面に書かれた手榴弾を無造作にばら撒き終わると、蓮見の隣に来て膝枕をしてもらっていた。
「エ、エリカさん?」
戸惑う蓮見。
「私頑張ったからご褒美よ」
「わかりました」
七瀬と瑠香と一緒に拠点を落とし、すぐに防衛戦に参戦したエリカの疲労はかなりのものだった。
普段最前線にはあまり出ないエリカにとっては表情にはあまり出さないが結構な重労働である事は間違いなかった。
なので蓮見は何も言わず、ギルドの為に頑張ってくれたエリカの好きなようにしてあげる事にした。
――だけどこう見ると、綺麗なお姉さんのはずなのに何か可愛く見えるな
と内心思った。
イベント専用マップを開き、美紀、七瀬、瑠香の居場所と各拠点の状況を把握する蓮見。
今三人はどうやら合流して一ヶ所に集まっているらしい。
それなら何も心配はいらないなと思い、マップを閉じる。
そのままエリカの頭を優しく撫でてあげる。
「ふぁ!?」
すると、急にエリカが変な声を上げる。
そして顔が赤くなる。
エリカが急に変な声を出すものだから、驚いてつい手を止めてしまった蓮見。
「あぁ~止めないでよ。もっと撫でて」
「は、はい」
どうやら蓮見の勘違いだったのか、もっと撫でろと甘えん坊の美紀みたいなことを言ってくるエリカを見て安心する。
――美紀とエリカさんってどこか似てる
「でも敵が来るまでですよ?」
「わかってるって」
美紀が一人イベント前に蓮見と何かをリアルでしていることに当然エリカは気が付いていた。本人達から何も聞かなくても、美紀の顔を見れば二人に何かあった事はすぐにわかった。
やはり美紀とエリカにとっては蓮見をかけた恋愛バトル――ッ否! 恋愛戦争もかなり大事なわけである。
当然蓮見は二人の気持ちを知らない。
故に二人にいつも振り回されている理由も。
蓮見とエリカが活躍し拠点の防衛を成功させた頃、美紀は新しく見つけた中規模ギルドを途中で合流した七瀬と瑠香と一緒に木の上から眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます