第111話 第三回イベント開始


 ――翌日。イベント開始時刻、ギルドホームにて。

最後まで各々がやるべきことをやりきったところで、ついにイベントがやってきた。


今回は五人での参加である。



「さぁ【天災】様率いる【深紅の美】ギルドの力を見せてやるわよ!!!」



「「「「おぉ!!!」」」」




蓮見、美紀、エリカにとってはゲーム初の団体戦。

【深紅の美】ギルドを創設した三人が手を組む。


少数精鋭の力を見せつけてやろうと意気込んでいると、五人揃って光に包まれてバトルフィールドへと転移した。



 眩しい光が消えると次に自分達の知らない家の中にいた。


 蓮見達が拠点としているギルドホームとは違い家具などは一切なく、広さも六畳あまりとそんなに広くない。だがここがイベント専用の自分達の拠点である事は全員がすぐに理解できた。窓から見える景色は緑一色。


 部屋の間取りは一部屋と狭い廊下に玄関と一人暮らしをしている人の家みたいだった。


 美紀と七瀬は部屋と廊下、後は拠点の周りを捜索してすぐに戻って来る。


「拠点に対しては特に何も仕掛けがないわね」


「えぇ、ただこの拠点障壁が張られているわ。多分障壁を破壊されると破壊が可能になりそうね」


「って事はやっぱり数で攻め込まれたら結構キツイわね。作戦はあるにしても私にも限界があるし」


「そうなると早めに拠点の数を増やして、拠点を全て失わないようにするしかありませんね」


「だね。とは言っても山の上、しかも頂上。よってここに来る唯一のルートである長い石段で敵を迎え撃てば何とかなりそう。反対側は崖だから流石に上ってくるのは無理だろうし。当然私達も石段側からしか攻撃に行けないけど挟撃される心配はなさそうね」


「なるほど。それでお姉ちゃん私達はもう行くの?」


「紅構わない? ……ってどこ行った?」


 その時、さっきまでここにいたはずの蓮見を皆が慌てて探す。

 声が聞こえない時点ですぐに気付いておかなければならない事実に今気付いてしまったかのように。


 美紀達が慌てて外に出ると、腕を組みブツブツと言っている蓮見。


「森、山の頂上、石段、拠点…………」


 状況を把握しているようだったが、周りからしたら何か凄い事を考えているようにしか見えないので、すぐに蓮見を拠点の中に戻す。


「ちょ、えっ?……なに?」

 と暴れて七瀬と瑠香の腕を振り払おうとするが、抵抗虚しく中に戻された。


「私達が攻めてくるから、大人しくしてて!」


「そうです。開始一分で何かされたら九時間も私達がついていけません。女の子は何回でも逝けますがそれはそれで体力的に辛いんですよ。別に紅さんとなら嫌じゃないですけど、せめてペース配分を考えてください」


「そうよ。するなら最後に激しく……」


 ここで姉譲りと言っても過言ではない瑠香の性癖に七瀬が言葉を止める。

 ついその場の勢いでつられてしまいそうになったが、何とかすぐに言葉を止めて近くにあった美紀の胸を揉む。

 そして冷静さを取り戻して、


「ルナ! もっとまじめに……キャァァァァイタイイタイイタイってばぁ」


 七瀬が胸を抑えながら、美紀を見ると顔を赤くして睨むように七瀬を見ていた。

 そして揉み返すのではなく、絞り取るように力を入れていた。

 だが気持ち良かったのか満更嫌そうでもない七瀬の表情に美紀が怒る。


「姉妹揃ってバカ言ってないで早く行ってきなさい!」


「「……はい」」


 美紀に怒られた七瀬と瑠香が返事をして外に出ていく。


「なら私も付いて行くわね。流石に二人だけじゃ……世間的に心配だから」


「お、お願いするわ」


 そう言ってエリカがすぐに二人を追いかける。

 途中脱線しそうになったが何とか当初の作戦通りに事が進みだす。

 蓮見は紅シリーズではなく俊足シリーズで装備を固めている。

 美紀は少なからず【紅】と【拠点】どちらを先に潰しにくるかと少し考えてみるがやはり【紅】なのだろうとは思わずにはいられなかった。


 だって拠点を破壊している間、【神眼の天災】が暴れると考えたら、周りからしたら恐怖でしかないのだ。実力的には美紀の方が強いのだが、それを一切感じさせない蓮見。


 よって抑止力にはもってこいなのだ。


 知名度だけで言えば最早NO,1と言ってもいいぐらいに蓮見の名前【紅】ではなく通り名である【神眼の天災】は有名だった。


 そしてその【神眼の天災】は本当の意味では未だに敗北を知らないと。


「なら私達はしばらくここで休んでいましょう?」


「そうだな。なぁさっき見てて思ったんだけど、里美ってミズナさんとそう言った関係なのか?」


「ち、違うわよ! 私は男が好きなの! 変な勘違いするな、ばか!」

 二人は窓から周囲を見渡し警戒しながら、お話しをしながら待機する。


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