第110話 最後の調整
七瀬と瑠香は久しぶりのタッグである。
前衛で攻撃担当の瑠香と後方支援担当の七瀬、それを意識してモンスターの注意を引き付け多勢に無勢で戦っている。
ギルド戦では敵ギルドを二人だけで落とさないといけないのだ。
そのため後方にいる七瀬を先に潰そうと動いてくる敵や、七瀬だけを狙い前衛を潰してくる敵と様々なプレイヤーがいる。
その全てに素早く反応する為にも、パートナーの動きを見て次何をしたいのかを理解できるように実践を通して、感覚を磨いていた。
『流石瑠香、良い動きね』
『流石お姉ちゃん、何も言ってないのに私が倒して欲しい敵を倒してくれる』
瑠香のレイピアが容赦なくモンスターの身体を貫き、七瀬の魔法が瑠香を護る。
時には七瀬を狙って来たモンスターの攻撃を瑠香のスキルが護り反撃する。
本当はここに美紀がいれば二年前と同じく更に攻撃の手数が広がるのだが贅沢は言っていられない。だったら、美紀がいなくても何とかなるように二人の連携を極めるしかないだろう。
二人はギリギリまで集中して、時間の許す限り最終調整を行う。
七瀬と瑠香は第一回イベントでは蓮見より上位の結果を残していたが、ある事を心の中で確信していた。
――【神眼の天災】だけは唯一ランキングの順位と実力が反比例していると。
美紀とエリカは闘技場で戦っていた。
第三回イベントでの作戦が決まり、蓮見をギルド長とした初めてのチーム対抗戦に闘志を燃やしていた。ようやく一緒に戦えると思うと嬉しくて嬉しくて仕方がなかったのだ。
エリカは金色に輝く剣を手に持ち、防具も金色と派手な装備を身に着けていた。
見た目通り性能は折り紙つきで、剣は軽くて丈夫、防具はダメージ軽減が付加されている。
装備品には指輪二つとネックレス一つ。
そのどれもが【属性耐性】と【HP自動回復】効果を持つ者で、まずは死なない事を前提としていた。
今は美紀の攻撃を受け流すようにして、剣を使っているエリカ。
だがここに蓮見もしくは七瀬の援護が加われば反撃をすることが可能になる。多少の被弾はHPが自動回復するので気にせず攻撃をすることが可能である。敵プレイヤーはエリカに集中したくても蓮見と七瀬の遠距離攻撃を無視して攻めようとはしてこないだろう。特に蓮見は無視したくても出来ないと踏んでいた。一人では実力が不十分でも仲間の力を借りる事で一人前のプレイヤーとして戦場に出る為にエリカはここ数週間ずっと頑張っていた。
それにエリカは蓮見の案を丸々横取りしてあるアイテムを隠し持っている。それは再現が難しいと言って一度諦めたのだが、蓮見の喜ぶ顔を見たくて頑張っていた結果、昨日完成した。つまりエリカには蓮見ですら知らない切り札があった。
ただ美紀との練習でそれを使う事はなかった。
一人がいいと言われた蓮見は夜のフィールドを歩きながら、どうにかしてこの短時間で強くなれないかを必死になって考えていた。
先日白馬のチュンチョン王子とか何とか……そんな感じの名前をした男のナンパから美紀を助けたのだがその後美紀のストレス発散を兼ねた修行で気が付いたのだ。まだこの程度では本気の美紀には敵わないと。
「明日のイベントこのままでは皆の足を引っ張る気しかしない」
そう第一回イベントの結果からわかるように、美紀、七瀬、瑠香は蓮見より上位にいたのだ。それに三人共一緒に戦っていてわかったのだが、いつも蓮見に対して少し遠慮してくれているのかペースを合わせてくれているのだ。実力があるからこそ弱い自分に合わせてくれているのだとここ数日痛感していた。
厳密に言えば何をするかわからないこそ、常に一歩身を引いて余裕を作っておかないと巻き沿いを喰らう可能性しかないからだとは誰も教えてくれないからこそ、こうして蓮見が勘違いをしているのである。
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