第50話 火事場と火事場のぶつかり合い
「やっと終わった……助かった! 行くぞ!」
「うん。前に出る!」
蓮見が木に姿を隠しながら迂回する形で走り始めると、すぐに美紀も走り最短距離で小百合に近づいていく。
「スキル『連撃』!」
小百合は二人から距離を取るように走りながら『連続射撃3』を使い美紀を攻撃する。
美紀はそれを『連撃』を使う事で撃ち落としながら進む。
「スキル『加速』!」
小百合を逃がすまいと更に加速する美紀。
美紀の鋭い槍の攻撃範囲に小百合が入る。
そこからは美紀の連続の突きが小百合のHPを少しずつ削っていく。
躱されているわけでないが、すり傷程度のダメージしか与えられない事から美紀が苦戦していることがわかる。その間も小百合は器用に攻撃を避けながら美紀を狙い攻撃をしていた。弓使いでありながら、AGIを頼りに躱し反撃してくる小百合。
蓮見、美紀、小百合のMPゲージがそれぞれ半分程溜まった。
再び小百合の持つ弓が炎で燃える。そして美紀の攻撃の隙を突いて大きくジャンプして矢を放つ。矢は魔法陣通り矢が魔法陣を通り抜け赤い炎を纏い美紀ではなく援護射撃をしていた蓮見を狙って放たれた。
「スキル『レクイエム』!」
蓮見がギリギリまで矢を引き付けて、『レクイエム』で反撃する。
『絶対貫通』の効果でクリティカルヒットした『レクイエム』は小百合の一撃を無力化しそのまま一直線に向かって飛んでいく。
視線が蓮見に向いたタイミングで美紀が小百合の懐に入る。
「スキル『連撃』!」
美紀の七連続の突きが小百合の態勢を崩しダメージを与える、そして美紀がすぐに後退し小百合と距離を取ると同時に蓮見の『レクイエム』が小百合の身体を貫き爆発する。レクイエムの付加攻撃の発火はすぐに炎が治癒し効果を発揮しなかった。
爆炎が晴れると小百合が片膝を付いていた。
これはチャンスだと判断した美紀がすぐに行動に移る。
「スキル『巨大化』!」
1.5倍の大きさになった槍が勢いよく飛んでいく。
後少しで当たるタイミングで槍が小百合の放った矢と空中でぶつかり軌道を逸らされ近くに合った木に衝突する。
慌てて美紀が槍を操作し回収をする。
小百合のHPはさっきの蓮見と美紀の攻撃によって六割まで減っている。
だがこの時、二人は気付いていた。
それは美紀の槍を攻撃した時の小百合動きが今までより速くなっていた事に。
どうやら蓮見と同じく、HPが減れば減る程強くなるらしい。
まさか今まで力を貸してくれていたスキル『火事場の速射』と『火事場の俊足』が相手に使われるとこんなにも厄介だとは思わなかった。
「マジか……!?」
「……紅と同じくレベル以上の強さね」
HPゲージが六割になると、小百合の身体と弓そして矢が炎で燃え始める。
どうやら今までのボスと同じく攻撃パターンが変わったのかもしれない。
二人が苦笑いする。
「もしかして褒めてくれてる? それならありがとう」
息が乱れ始めた美紀の目はキラキラしていた。
「うん。私……今最高にワクワクしてるから! って事で紅休憩は終わり、行くわよ! スキル『破滅のボルグ』!!!」
黒味のかかった暗くも白いエフェクトを放ちながら小百合に飛んでいく槍に合わせて美紀が今度は腰にある短刀を構えて距離を詰めていく。
蓮見は美紀が走り始めてのを確認してから走りながら攻撃する。
火事場スキルがある以上、距離がある攻撃は有効的ではないと判断した。スキルの特性や恐ろしさは蓮見自身がその身で嫌と言う程実感しているからこそ覚悟を決めて近づく。
そして小百合のMPゲージが全てなくなり小百合と美紀の間に巨大な魔法陣が出現する。
それは今まで矢を強化した魔法陣の三倍以上の大きさ。
二人は直感でこれは危険だと判断して、慌てて動かしていた足を止めてすぐに小百合から距離を取るように走り始める。
「スキル『加速』!」
美紀が最大速度で蓮見の所まで行き合流した直後。
小百合の矢が放たれる。
そして巨大な魔法陣を通り抜け、オレンジ色の炎が深紅色に変わり大幅に強化され美紀の『破滅のボルグ』を無力化し二人に襲い掛かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます