第51話 トッププレイヤ―達ですら敵わない相手


 蓮見の腕を取り、矢の軌道を予測しながらも木々を利用して逃げる美紀。

 数秒後、後少しで二人に矢が当たるタイミングで振り切る事に成功する二人。

 そのまま、木の影に隠れてMPポーションを飲む。


「早くHPポーションも飲まないと」


「いや俺はこのまま行く。今の俺じゃアイツについていけない。何より里美の足手まといにしかなっていないからな。ならアイツと同じく強くなるしかねぇだろ!」


「わかった」

 どうやらこのままでは生き残る事も難しいと考えた蓮見は賭けに出る事にした。

 敢えてHPゲージを減らす事で、小百合と同じく強くなることを。

 だけどそれは諸刃の剣でもあった。

 HPがなくなれば攻撃が掠っただけでも危険になる。

 それでもやるしかなかった。

 戦況は二人にとって良くない状況だった。


「里美頼みがある」


「なに?」


 そのまま蓮見が美紀に耳打ちをして作戦を伝える。

 相手が自分達の想像を超えてきた、だけどそれは何も相手だけが持っていた手札ではなかった。相手の想像を超えると一点においては美紀を凌駕、否トッププレイヤ―達ですら誰一人敵わない人物がここにはいる。美紀はそう思っていた。いつもそう。気付けば離しても離してもすぐに背後を歩いてくる人物に期待していたのだ。彼は次何をしてくれるのだろうかと。だからこそ普段なら無茶と思える作戦では合ったがコクりと頷く事にした。


 だがこの作戦は蓮見だけでは成功しない。

 美紀が失敗したらそこで終わる。

 だから美紀は限界まで集中する。


 長くても後数分耐えれば負けはないこの状況で逃げるのではなく勝ちに行くために!


「スキル『加速』!」

 次の瞬間、美紀が小百合に向かって走っていく。

 姿勢は低く、飛んでくる矢を最小限の動きだけで躱していく。

 限界まで高めた集中力は飛んでくる矢の速度を遅くしてくれた。

 今までとは違い、時に二段ジャンプをして木から木へと飛び移り、木の枝を足場にして駆け、動きに緩急を付けたりして小百合を翻弄していく。

 そのまま徐々に間合いを詰め、懐に入る。


「スキル『パワーアタック』『雷撃』!」

 後退して距離を取ろうとするが、小百合の動きは全て意味をなさない。

 美紀が小百合の動きを先読みして、逃げ道を塞ぐように鋭い突きと一緒に雷撃を当てる。

 雷撃が直撃し小百合が感電する。

 これで動きを制限できる。


「逃がさないわ! スキル『破滅のボルグ』!」

 小百合の反撃を姿勢を低くして躱すと同時にその場で一回転して投擲の構えを取り槍を全力で投げる。槍は小百合の身体を貫き更にHPゲージを削る。すると小百合の身体から溢れ出るように全身の炎が激しさを増し更に熱くなる。


「ここからは俺のパーティータイムだ!」

 そう言って蓮見が【鏡面の短剣】を二本複製し両手に持ち小百合に近づいて行く。

 小百合の炎が蓮見にダメージを与え、HPを近づいただけで徐々に奪っていく。美紀は耐性がありそこまで気にはしなかったが蓮見の場合はそうもいかない。

 それでも、ダメージを少しでも多く与える為に『火事場の速射』『火事場の俊足』『領域加速(ゾーンアクセル)』『見えないふり』『弓兵の観察眼』の重複で強引に能力値を上げる。そしてHPが徐々になくなる。つまりはそれに比例して強くなっていくのだ。


 美紀は蓮見の援護とスキルを使わずにMPの回復に専念する。


「スキル『精神防御』!」

 ここからは防御を捨て、攻撃に集中する。

 一時的にINT値が上がった事により【鏡面の短剣】の更なる形状変化。短剣が細長い剣と変わる。蓮見はMPがなくなるまで30秒おきに『精神防御』を使い、複製した【鏡面の短剣】が壊されるかタイムオーバーで消える度に複製からの形状変化を繰り返し二刀流剣士として小百合と戦い始める。

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