第49話 最強夫婦、矢の雨どうする?


 小百合の弓が蓮見に向けられると同時に矢が放たれる。

 そこから、矢はすぐに五本に分裂する。


「スキル『イーグル』『連続射撃3』!」

 すぐに蓮見も小百合と同じスキルで対抗する。

 どうやら弓使いが持っている基本的なスキルは全て持っているのかもしれない。


「ってまたか!? スキル『連続射撃3』!」

 蓮見が慌てて美紀の前に立つ。

 そのまま先ほどと同じように放たれた五本の矢に集中して、撃ち落とす。

 小百合は首を傾けて、状況を理解しようとしているらしい。

 そして連続射撃では通用しないと判断したのか、大きくジャンプして走りだす。小百合は今までのNPCと違いそのまま森の奥深くに入っていき、木の影を利用しながら攻撃を始める。美紀は小百合のジャンプと同時に走り出して距離を詰め始めていた。


「紅! コイツこの森を使うつもりよ。それにAGIが高い、気を付けて! それと援護急いで!」


「わかった!」

 慌てて美紀を追いかける蓮見。どうやら小百合はここから美紀の攻撃を木を利用し躱しながら反撃していくらしい。美紀の攻撃が空を切り、木の幹を削るように斬るが、小百合には当たらなかった。

 そして美紀と蓮見が森の奥深くまで来た時、小百合が二人の上空に姿を見せる。

 小百合の持っている弓が炎で燃え、魔法陣が出現する。


「あれは……魔法!? マズイ!」


「いけるか……スキル『破滅のボルグ』!」

 美紀の槍が黒味のかかった暗くも白いエフェクトを放ち始めた瞬間小百合の放った矢が魔法陣を通り抜け赤いの炎を纏い放たれた。矢が放たれた同時に聞こえた風を切る音が二人の耳に聞こえて来る。これは蓮見のレクイエムと違った一撃の矢だと二人の直感が感じ取る。すかさず美紀も槍を投げる。


 槍と矢が空中で衝突し、小百合のスキルを強引に相殺する。


 爆風が収まるタイミングで二人の十メートル前に着地する小百合。


「……嘘でしょ。ボルグでも互角なんて」


「我が命ずる。秩序を乱す者達に裁きを与えよ。弓は心、弦は心を矢に伝えるバイパス。矢は裁き。裁きの象徴として悪を貫く今こそその真価を発揮しろ『レクイエム』!!!」

 美紀の槍が手元に戻ってくるタイミング、そして小百合が地面に着地したタイミングで蓮見のスキルが発動する。


「ナイス!」


「任せろ! このタイミングなら躱せないはず……!?」


 小百合が蓮見と同じ『レクイエム』をすかさず放つ。

 そして無力化してきた。

 そんな事にビビる暇なしと、美紀が突撃する。


「紅援護よろしく!」


「おう!」

 美紀の攻撃範囲に小百合が入る。

 が、AGIがかなり高いのか美紀の攻撃を落ち着いて躱す小百合。

 これでも余裕なのか蓮見の援護射撃も小百合には見えているらしく当たらない。


「スキル『加速』『雷撃』!」

 美紀の攻撃速度と移動速度が1.5倍になり、小百合の反応が一瞬遅れる。

 遂に美紀の鋭い突きと一緒に雷撃が小百合にダメージを与える。相手がこちらの攻撃を見切って油断した隙を美紀は見逃さなかった。

 小百合の弓が再び燃え、美紀に狙いが定められる。

 攻撃に意識を集中させた事で、視野が狭まる。それは更なる致命傷となった。


「スキル『レクイエム』!」

 MP消費一割のレクイエムが小百合の左肩を貫く。

 蓮見の放った毒の矢の効果で、小百合を毒状態とする。


 小百合が大きく深呼吸をする。

 炎が全身を燃やし始めたかと思いきや毒状態を解除し消えた。


「状態異常耐性まであるのか……?」


「チッ……HPも馬鹿みたいにある」

 小百合のHPはまだ一割程度しか減っていない。

 苦戦を強(し)いられる二人に追い打ちをかけるように小百合が今度は二人の上空を狙い矢を放つ。矢は空中に出現した魔法陣を通り、矢の雨となって二人に襲い掛かる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 蓮見の身体に次々と刺さっていく矢がHPを奪っていく。一撃一撃に破壊力はないがそれでもこのまま受け続ければ蓮見のHPゲージはいずれゼロになる。


「スキル『回復魔法(ヒール)Ⅱ!』

 美紀が右手に持った槍で矢を撃ち落としながら左手を使い蓮見にヒールをかける。が、そのせいで美紀は余裕がなくなり矢を撃ち落とせなくなっていきダメージを喰らい始めた。しばらくして二人の感覚で矢の数が百を過ぎた頃に攻撃は止んだ。

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