第47話 天才と天災は違う
「俺が右側、里美は左側を頼む!」
美紀がコクりと頷く。
蓮見が深呼吸をして詠唱を始める。
「我が命ずる。秩序を乱す者達に裁きを与えよ。弓は心、弦は心を矢に伝えるバイパス。矢は裁き。裁きの象徴として悪を貫く今こそその真価を発揮しろ『レクイエム』!」
右手に毒の矢を持ち射撃の構えを取り狙うはプレイヤー本人ではなくプレイヤーが隠れている木々である。装備を見た感じからトッププレイヤー達ではないと判断しこの手は有効だと考えたのだ。
「スキル『連続射撃3」!!!」
そして五本の発火と毒の状態異常の効果を持った矢が『絶対貫通』の効果で木々を次々と炎と毒で浸食しながら突き進む。慌てて燃える木々から飛び降りて蓮見に飛び掛かってくる六人のプレイヤー。
全員が剣もしくは双剣で蓮見が苦手とする近距離攻撃を得意とするプレイヤー達だった。
「しまった……紅! スキル『ライトニング』!」
美紀の心配とは裏腹に蓮見が弓をしまう。
そして【鏡面の短剣】をスキルで複製して右手に持つ。
「ダメェーーー! 剣使いにそれは無茶よ!」
美紀が慌ててプレイヤーを倒し蓮見の元に向かおうとするが、美紀は足止めらしく敵プレイヤー達は蓮見から倒していくつもりのようだ。
だがこの時、蓮見の目はしっかりと走ってこちらに向かってくるプレイヤー達だけを見ていた。六人によるスキルの同時使用攻撃。逃げる場所などどこにもない、美紀だけでなく蓮見に襲い掛かっているプレイヤー達すらそう思っていただろう。
そして目を閉じる。
「使い道ないだろうと思っていたが……エリカさんの発明は素晴らしいな」
「まさか……って私の存在を忘れてない!?」
気付けば蓮見が左手に持っている物を見た美紀は慌ててプレイヤー達の間隙をついて急いで燃えていない木々の方へと逃げていく。
「おい。深追いはするな、罠かもしれん! 作戦通り弱い方から狙うぞ」
「「「「「「おぉ!」」」」」
そして美紀が相手にしていたプレイヤー達も蓮見に向かって突撃を始める。
左手で持っていた物をポイっと空中に投げる蓮見。
そして閉じていた目を開け、口角を上げて笑みを溢す。
「悪いな……全力で行かせてもらうぜ! これが天才紅様による全力大爆発だぁ!!!」
【鏡面の短剣】が危険と書かれた手榴弾を切り裂く。
そして、地面に伏せて頭を護る美紀が予想した未来が現実となる。
ドン!! という衝撃波が地震のように足元を震わせて、爆弾が爆発したように紅蓮の炎が周囲を燃やし尽くす。爆風で蓮見の身体が宙に浮き、そのまま空中でHPポーションを飲む。そしてもう何度目かわからない地面落下をする。
「もう慣れたけど……やっぱりこぇぇぇぇよ!!!」
瞬間、蓮見は頭から地面に落下した。
蓮見が頭を抑えながら立ち上がると『不屈者』を持っていなかったらしく、襲ってきたプレイヤー達が光の粒子となりながら倒れていた。
「提示板で噂になっていた【歩く天災】ってお前だったのか……」
「天才じゃなくて天災じゃねぇか……」
そう言い残して消えていくプレイヤー達。
「うーん。紅を倒すなら……ありとあらゆる準備をしないと無理よ。何をするかわからないから貴方達程度ではオススメできないわ……」
第二回イベントが始まっての初めての襲撃にも関わらず、蓮見はほとんど一人で十二人のプレイヤーを倒す事に成功した。美紀は頬を引きずって蓮見の隣まで来てそう呟いた。今まではたまたま運が良かったのか、前回イベント第二位の美紀を恐れてか狙われることはなかったが一発逆転を狙って時間的にも狙われるようになったのかもしれない。
今回のように襲撃をしてくるプレイヤーの中にはきっと美紀と同じくトッププレイヤー達がいるかもしれない。そうなれば二人だけで勝つのも難しいかもしれない。ルフランや綾香達は美紀と小細工なしでも正面から戦えるだけの力を持っている。そうなれば蓮見の機転もどこまで通じるかわからないのだ。
それから二人は警戒しながら森の奥の方へと歩き、残り三十分弱となった時。
正面から一人の少女が二人の行くてを阻むようにして歩いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます