第46話 三本の道

 …………。


 …………――――。


「……いい? 恥ずかしいから二度と人前でしないでよ!?」

「……わかりました」

 テンションが上がっていた為に、いつも以上に落ち込んでしまう蓮見。

 そんな蓮見を見てつい言い過ぎたと思う美紀。

 好きだからこそ、好きな人にはしっかりとしていてもらいたい気持ちとは裏腹に心の中で言い過ぎたと反省した。



 その後二人はイフリートが座っていた玉座の後ろに出現した魔法陣に乗ってダンジョンを脱出した。


 次に二人が目を開けると、ダンジョンに入る前にいた場所だった。


「ほら、もう怒ってないから一緒に行こう?」

 落ち込む蓮見の目を見て美紀が微笑みながら言った。


「ゴメンってば。ならイベント終わってログアウトしたら今夜は一緒にいてあげる。それで一緒に寝て、明日は一緒に紅の宿題をしてあげる。だから元気出して? それとも私じゃ不満?」


「うん。だって里美がそうしたいって顔してる」

 最近近くで美紀を見ていたせいか何となくそう思った蓮見。

 どうやら図星だったらしく、美紀の顔が赤くなる。


「うっうるさい! あぁ~もぉわかったわよ! 私も好きにするから紅は紅でゲームを楽しんだらいいじゃない!」


「流石、里美! よく俺の事を分かってることで! ならサッサと次に行こうぜ!!」

 さっきとは打って変わって一瞬で元気になる蓮見。

 そう。蓮見には蓮見なりのゲームの楽しみ方があるのだ。

 だからそれをようやく美紀に認めて貰えたと思った蓮見は嬉しくてしょうがなかった。


「もぉ、ホント単純バカね。まぁ、でもいいっか。なんだかんだ私も楽しいしね」

 と小さく呟いてから、

「ってちょっと待ちなさい! 私を置いていくなぁ~!!!」

 と今度は歩き出した蓮見の背中を追いかけながらハッキリと聞こえる声で美紀が言った。


 二人の表情には笑顔が戻りそのまま横並びで歩いて楽しくお話しをしながらモンスターを探す。


 ――イベント開始から二時間が経過。


 二人のポイントは蓮見が10470ポイントで美紀が11230ポイントだった。

 誤差があるのは二人がそれぞれ倒したモンスターの数や種類それとボス戦で与えたダメージ量の差である。ペースとしては一時間あたりで約5000ポイントと悪くなかった。この調子で行けば二人は順当に当初の目標である15000ポイントをゲットできる計算だ。


 二人が歩いて道が幾つかに分かれている。

 案内看板には『左は海蛇の海、真ん中は炎岩の山、右は機械少女の森』と書かれていた。


「海と山と森だって。どれにする?」


「なら……森で! 」


「OK! なら森ね」

 二人は森の方に向かって歩き始めた。


 途中出てくるモンスターはウサギやスライムと言った可愛らしいモンスターばかりではあったが二人はポイントの為に倒しながら森の奥の方へと進んでいた。

 十分ほどすると、美紀が蓮見の隣に来て小さくため息をつく。


「周囲の木々の上。気配を上手く隠して私達を狙ってる。っても殺気が駄々洩れだけど倒す? 無視する?」

 美紀が小声で蓮見に相談する。

 数々のVRMMOゲームで活躍してきた美紀は敵プレイヤーの視線や殺気と言った敵意にはとても敏感である。それに加えてスキル『感知』を持っているのだ。第一回イベントで蓮見に高層マンションでしてやれれた美紀は同じ轍(てつ)は踏まないようにと自分のPS(プレイヤースキル)とは別に第二回イベントに合わせてスキルで自身の能力を強化していた。


 スキル『気配』 常時発動

 効果:敵意に対して敏感になる。

 獲得条件:スキルショップで購入。


「えっ? マジ? ちょっと待ってスキル『イーグルアイ』」

 蓮見は早速歩きながらスキルを使い、地上からではなく上空から周囲を見渡す。


「確かに。数は十二人……倒すか」


「OK! ならサクッと倒すわよ!!」


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