第二章 幼馴染との時間
第18話 エリカの提案
――――
――――翌日。
お昼ご飯を食べ終わってから美紀と約束した憩いの場に蓮見がログインする。
すると、ある光景が目に入ってきた。
「里美さん僕とフレンド登録をぜひお願いします」
「いやそれより私と一緒に狩りをお願いします。クエストでもいいです」
クエストとは蓮見が一切利用していないギルドで受けられる報酬付きの任務のことである。受けられるクエストはそのプレイヤーにあった難易度となっている。当然美紀は最高難易度のクエストまで受けれるし何度もクリアしている実績を残している。
「あっあの来週から始まるフロア階層攻略についてお話しを聞かせてください」
「ギルドについてはどう考えいますか? もし良かったら同じギルドに所属させてください。お願いします!」
「今からお時間ありますか?」
「良かったら今後の未来について私と二人きりで話しあいませんか?」
のんびりご飯を食べていた為に約束の時間を10分ばかり遅れてしまった。
それが原因なのかはわからないが沢山のプレイヤーに囲まれてイライラしている美紀。
今も適当にあしらいながらキョロキョロしているのだが、雰囲気的に話しかけにくいので近くにある椅子に座って美紀を眺めて人がいなくなるのを待つことにした。
その時。
美紀が指をさして声をあげる。
「あっ! 紅!!!」
突然名前を呼ばれた蓮見の身体がビクンと反応する。
木の椅子に座ると同時に椅子に電流が流れたように勢いよく立ち上がる。
「遅い! 10分遅刻よ」
人混みを縫うようにして姿を見せる美紀。
「すみません」
「とりあえずココ人多いし何処かに行くわよ」
「……うん」
そのまま人目を気にせず蓮見の手を取り、歩き始める美紀。
手を引かれるまま蓮見がついていくとフレンド申請のパネルが出現する。
「とりあえずフレンドになるわよ。んで来週は同じギルドに所属。それでいいわね?」
「うん」
空いているもう片方の手でパネルにある承認ボタンを押す。
フレンドリストに美紀の名前が登録された。
これで二人目である。
フレンドが増えて嬉しい蓮見は少し笑みをこぼした。
「なぁ一つ聞いてもいいか?」
「うん」
「どこに向かってるの?」
「それは着いてからのお楽しみ」
しばらくするとある鍛冶屋の扉を開けて中に入る美紀。
「エリカー?」
「はーい」
その声に反応するかのように奥の方から返事をして歩いてくるエリカ。
「あら? 里美と紅君? どうしたの?」
「ごめん。ちょっと紅とお話ししたいんだけど外だと私達を追いかけてくる連中が邪魔でね……ちょっとスペース借りてもいい?」
エリカがガラスの外を見ればさっきまで美紀に声をかけていた人達が後を追って来ていた。
「いいわよ。まぁ有名人の2人が一緒にいれば誰だって気になるわよね」
「有名人2人?」
「そう紅君と里美よ」
「あぁ紅提示板全く見ないから多分意味がわかってないと思う……」
「あら? 相変わらず不思議な子ね。まぁいいわとりあえず奥にどうぞ」
そう言って奥に蓮見と美紀を案内するエリカ。
3人では少し狭く表からは決して見えない休憩スペースで3人が身を寄せ合いながら座る。
気を利かせてくれたエリカが蓮見と美紀にミルクティーを差し出してくれた。
「うん!? 美味しい。ゲームの中なのに」
「フフッ。それは良かった。それで今日はどうしたの?」
「私がお金と素材は出すから紅に新しい矢を作って欲しいの。後ポーションを10個紅に。今から北にある精霊の泉に行こうと思うんだけど精霊相手に属性がない矢だと厳しい。そこで何か属性がある矢が欲しいわ」
「なるほどね~。つまりこういう事ね。来週実装される第二層に行くために第一層を攻略する必要がある。だけど今の紅君の力じゃ厳しいかもしれないってわけね」
話しに割り込もうにも気まずくてと言うか既に頭がパンクして半分ほどついていけてない蓮見は静かにミルクティーを飲みながら二人の会話が終わるタイミングを待つことにする。
「そう。だから至急でお願いしたいの」
「わかったわ。なら30分程待ってて」
「ありがとう」
「ところで一つ提案があるんだけどいい?」
「提案?」
「そう提案。お代はいらない。その代わり里美が第一層のボスを倒しに行くときに私も連れていってほしいの。確かパーティーなら人数関係なく一緒に攻略できたわよね?」
「わかった。ここはお互い協力しましょ」
「OK! なら二人はここで待っててね」
早速美紀から素材を受け取り蓮見の為に新しい矢の制作に取り掛かるエリカ。
その表情はとても気合いが入っていた。
攻略組と呼ばれるトッププレイヤーの力を借りるのは意外と難しい。
お互いに益がないと特に。
それを正しく理解しているエリカは目先の利益ではなく、後の利益を優先したのだ。
美紀がなぜそこまでしてくれるのか。
美紀が何を考えているのか。
を聞きながら蓮見は大人しくエリカが帰ってくるのを待つ。
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