第17話 美紀は隣の蓮見家へ

 ログアウトすると蓮見は大きく背伸びをしてから部屋の電気を付けた。


「もう夜か」


 そのまま寝るかご飯を食べて寝るかを悩んでいると部屋の窓がゴンゴンと音を鳴らす。

 窓が割れる前にすぐに状況を確認しにいくと、ホウキを片手に持ち窓を開けろと隣の家の住人が無言で抗議していた。

 下手に逆らうと怖いのですぐに鍵と窓を開ける。


 ガラガラ


「っよと」

 身体の小ささを巧みに利用して部屋から部屋へ飛び移ってきた美紀。

 そのままベッドの上に座る。

 蓮見と少し距離をあけて向かい合って座る。


 ニコニコしながら美紀が言う。

「それで第一回イベントどうだった?」

「どうもこうも美紀強すぎ」

「あはは。本当はレベル差もあるしスキル使うつもりなかったんだけどね」

「ちなみにレベルいくつ?」

「33だよ」


 嬉しそうに言った美紀を見て蓮見がため息をつく。

 これだけ頑張ってもレベルが10以上離れている事に蓮見は少なからずショックを受けた。


「マジか……わかってはいたけど美紀ってめっちゃ強いんだな」

「まぁね。もっと私を褒めて構わないよ。美紀様~って」


 調子にのる美紀。


「それにしても蓮見凄かったね。最後の高層マンションの一手あれは完全に焦ったわ」

「それは嫌味か? 簡単に攻略したくせに」

「ふふっ~私にかかればあれくらい朝飯前よ。ってもMPなかったら流石に死んでたけどね」

 舌をだして冗談半分で言ってくる美紀。


 そんな美紀がどこか可愛いく見えてしまう蓮見。

 何はともあれ嬉しそうな美紀を見て頑張って良かったと思う蓮見だった。


「ねぇ一つ聞いてもいい?」

「なんだ?」

「なんであんなにクリティカルヒット連発出来るの? 蓮見は簡単にしてるけどあれは私や今回一位のルフラン、三位の綾香ですら意図的に狙ってもそんなに出来ない技なんだけど……」


 驚く蓮見。


 てっきり『YOUR FANTASY MEMORY』をプレイしてすぐにスキルを手に入れてしまった蓮見からすれば、気付けば当たり前のこととなっていたからだ。


「えっ? あれ誰でもできるんじゃないの!?」

「当たり前よ。対人戦闘においてはクリティカルヒットはマジでヤバイ。VITがかなり高くないと大抵一撃で死んじゃう。だけど滅多に起こらないから普通のプレイヤーは気にしない。そもそもクリティカルヒットには2種類あるの知ってる?」

「2種類?」

「そう。蓮見がいつもしてる敵の核となっているポイントを的確に狙いそれを撃ち抜けば大抵一撃必殺となるテクニカルクリティカルヒット別名KillヒットもしくはKillクリティカルヒット。それと皆がよく言うダメージが数倍跳ね上がる核やその周囲を攻撃する事で起こるテクニカルヒット」


 話しを聞きながら頷く蓮見。

 今まで当たり前にしてきたがテクニカルヒットに2種類あることは初耳でとても興味深い話しだった。


「なるほど……」

「それでなんでいつも一撃必殺できるの? 後なんでゴーレムとか核を護る場所が硬い相手でもできるの?」

「質問2個に増えてないか?」


 小さい事を気にするなと言わんばかりに美紀が大声で言う。

「うるさい! 男なら細かい事をいちいち気にするな。早く教えて!」


「わかった、わかったから大声出すな。とりあえず答えから言えば見えてるからだよ。後破壊不能オブジェクト以外ならクリティカルヒットさえ起こせば、後はどんな物でも貫通するスキルを持っているから……って言えば納得してくれる?」


 お前は何を言ってるんだという冷たい視線で見てくる美紀。

 仕方がないのでスキル『イーグル』と『絶対貫通』について説明する。


「なるほどね。てかそんな方法でスキルを獲得した事がまず一番の驚きだけど……。なら私やルフランでも変な話し蓮見なら一撃で倒す事が可能ってわけね」

「まぁ可能性としてはな。でも多分それは無理だと今日わかった」

「なんで?」

「美紀以上に強い相手に……っても美紀を含めてだが狙っても当てるのは無理だ。飛んでくる矢を撃ち落としたり躱すとか普通有り得ないからな」

「蓮見に有り得ないとは言われたくないわよ。まぁいいわ。とりあえず明日からは私とパーティー組んで二人で行動するわよ」

「いや悪いけど遠慮しておくよ。今の俺じゃ美紀の足を引っ張ると思う。こうぉーもっと美紀ぐらいに有名になって強くなってから……」

「その必要はないわ。蓮見今超有名人だから。下手したら私より注目されてるし」


 全く持って意味がわからない蓮見は首を傾げる。


「その様子じゃ提示板また見てないわね。まぁ理由はともあれ蓮見は「強い」「有名」以上。って事で明日から私とパーティーを組む。異論はないわね?」

「……はい」


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