アフターストーリー5 -宴の中で-

「それでは、新郎新婦の入場です!」

「「おぉ!!」」


小春と選曲した軽快な音楽が会場に流れる中で、僕と小春は会場内を席に向かって歩いた。

会場には、両親はもちろんだけど式にも列席してくれた有坂や山下さん、鶴間夫妻。そして、披露宴から参加のバスケ部の面々や美香先生、指輪の事で色々と世話にもなった星野に吉岡さん、それに親交のある商店街や会社の人達。

皆が温かい拍手で僕たちを迎えてくれている。

本当幸せな気分だ。


「何だか嬉しいね。みんなが祝福してくれてる」

「そうだね」


小春が笑顔で微笑みかけながら話してきた。

僕と同じことを考えてたんだな。


席に座った後は、式次第に従い終始和やかな雰囲気で式は進んだ。


メチャクチャ緊張しながらのウェルカムスピーチ。

あんまりにも緊張しすぎで小春に笑われてしまった。。。


ちょっと泣きそうになった佐々木編集長と堀内商店街理事からの祝辞。

凄く僕たちの事を見てくれてて・・・嬉しかった。


自分たちで編集したものの中々の完成度で盛り上がった映像集。

川野辺の町や旧友との写真などが写るたびに歓声があがった。


それから盛り上がったと言えば、同級生の吉岡さんが編集部の吉岡副編集長の娘さんだったのには僕も小春も驚いた。

吉岡さん達も会場で顔をあわせてビックリだったそうだ。

披露宴の招待状はそれぞれに送ってたけど住所も違ってたから全く気が付かなかったよ(吉岡さんは実家を出て1人暮らしをしているんだって)

今思うと副編集長に勧められて見に行ったブランドの宝飾店で星野と再会し、吉岡さんの店を紹介してもらったんだよな。

不思議な縁だ・・・そして世間は狭い。



そして、お色直しの為に小春が控室に向かったところでイベントも小休止。

僕もようやく料理を落ち着いて食べることが出来た。

ここの式場のレストランは、以前小春と食べに来たことがあったけど凄く美味しかったんだよね。それでいて価格もリーズナブルで。

披露宴での食事も試食はしていたけど本当大満足だ。


と僕が料理に舌鼓をうっている間にお色直しが終わったということで係りの人が僕を呼びに来た。

慌てて控室に移動すると淡い桜色のドレスに身を包んだ小春が居た。

衣装合わせでも見ているんだけど・・・素敵だ。


「・・・開成君?」

「綺麗だよ小春」

「あ ありがとう・・・ってこの間も試着したから見たでしょ!恥ずいよ!」

「綺麗なものは何度見ても綺麗なの♪

 行こ!みんなにも見せてあげようよ」

「あ!」


僕は少し照れている小春の手を取り会場へと向かった。

スポットライトが僕たちを照らすと会場には大きな拍手が鳴り響いた。


"綺麗" "可愛い"という声の中、キャンドルサービスということで僕たちは各テーブルを周った。

久しぶりに会う友人や親類。各テーブルの接点はここくらいなので昔話をしたり写真を撮ったりと凄く盛り上がる。

永田さんからは1テーブル2~3分くらいでと言われてたけど絶対時間オーバーしただろうな・・・


その後はバスケ部OG有志による歌のプレゼントといった余興などが行われて式も終盤。

披露宴のメインイベント?とも言える新婦から両親への手紙だ。


スポットライトに小春とご両親が照らされる中、さっきまでの笑顔が嘘の様に小春も緊張した面持ちになっている。


「お父さんお母さん。今日まで本当にありがとうございました。感謝の想いを手紙にしましたので聞いて下さい」

「うぅ・・・」」


お義父さん・・・まだ手紙の冒頭なのに既に号泣。。。

お義母さんが慌ててハンカチを渡す中、小春の手紙では小さい頃の思い出として一緒に出掛けたキャンプや遊園地の話、弟や妹が出来たときの話、それから学生時代の話等などが綴られた。

僕も自分自身の事と重ね合わせて母さんを見ると父さんの写真を持ちながら母さんも少し涙ぐんでいた。

父さんにも今日の日を見せてあげたかったな・・・


「お父さんお母さん、まだまだ未熟なところもありますが、夫婦ふたりで協力しがんばっていきますので、あたたかく見守っていてください。お父さんお母さん・・・本当に今までありがとう・・・」


大きな拍手の中、小春と抱き合うお義父さんとお義母さん。

・・・娘さんは大切にさせていただきます。


そして、最後に僕からの謝辞を行い結婚式、披露宴という僕らの一大イベントも幕を閉じた。






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披露宴を終えた僕らは、2次会の会場となった栗田夫妻のお店"フルール"へと向かった。

2次会参加者は僕と小春の学生時代含めた友人がメインということで小春にとって馴染みのあるフルールで出来ないかと栗田達に相談していたんだ。

もちろん返事はOK。

そして、その事を永田さんに話をするとご厚意でフルールまでマイクロバスも出してくれた。

本当至れり尽くせりで助かったよ。


フルールに着くとお店のオーナーでもある栗田達のご両親が出迎えてくれた。

栗田達と幼馴染でもある小春はもちろん顔見知りだ。

今日は披露宴に参加していた栗田達の代わりに食事の準備をしてくれていたんだ。


「いらっしゃい小春ちゃん!結婚おめでとう!

 今日は美味しい料理沢山作らせてもらったから楽しんでってくれ」

「ありがとうございますおじさん、おばさん!」


臨時休業として貸切営業のフルールに入ると今日の受付を頼んでいた職場の後輩でもある下条さんと小坂さんに出迎えられた。


「あ、渋沢先輩、小春先輩ご結婚おめでとうございます!」

「バスケ部の先輩方とか結構来られてますよ♪」

「あぁありがとうな」


2人共高校を出てすぐ就職した感じだからこういったイベントごとも初めてらしく結構最初は緊張してたみたいだけど上手くこなしてくれた。

中々頼りになる後輩たちだ。


会場を覗くとタウン誌でもお世話になった小春のバスケ部の仲間たち、仲良くしていた同級生たち(大半は小春のだけど・・・い いや僕にも友達は・・・)、それに披露宴から引き続き参加の有坂達が歓談していた。


司会進行は栗田夫婦が取り仕切ってくれた。

自分達のお店ってこともあるけど小春とは幼馴染だからね。

そんな司会進行の"新郎新婦の入場です!!"の声にあわせて僕たちは大きな拍手の中、会場となっている店内へと入っていった。


「それでは!まず本日の主役!新郎新婦からのお言葉から!

 それでは渋沢開成君 ア~ンド小春ちゃんよろしく!」


って軽いな栗田。

いや、今日は昔馴染みばかりだし堅いのは抜きの方がいいのか。


「どうも渋沢です。今日はお忙しい中、僕と小春の為にお集まりいただきありがとうございます。

 懐かしい面々が集まっていますので積もる話もあるかと思います。堅苦しい挨拶はこれ位として最後まで楽しんで言っていただければと思います!」

「え~と。今日大室から渋沢になりました♪

 披露宴ではあんまり食事できなかったので久々にフルールの美味しい料理を楽しみたいと思います!」


「開成いいぞ~!」

「小春可愛い~!!」

「よっ食いしん坊!」(ん?)


「それでは新郎新婦の挨拶も終わりましたので当店自慢の料理を堪能下さい!」


栗田の言葉を受けて、僕らは久々に会う懐かしい仲間たちとの談笑、そして美味しい料理を楽しんだ。


「渋沢君!小春結婚おめでとう!幸せにね!

 何だか私も健吾との結婚式を思い出しちゃったなぁ~」

「渋沢君。小春の事を泣かしたらバスケ部OG一同ただじゃすまさないからね!」

「まぁまぁ綾子先輩。そんなの言わなくてもわかってまるね?渋沢君」


いろんな意味で圧が怖いですよバスケ部の皆様方・・・


「小春先輩!ドレス姿凄く綺麗でした♪」

「ありがとう幸」

「本当素敵だったよねぇ~」

「何言ってるのよ。美里は平野君が居るんだから早く着させてもらいなさいよ!」

「そうそう♪」

「え、あ、その・・・・」


小春の方は小春の方で後輩たちに囲まれて大変そうだな。

でも、こんなにも沢山の人たちに祝福されて本当幸せだな。


その後も有坂や鶴間、それに懐かしい学生時代の面々と話ながら、ふと女性陣の方を見ると小春がいつの間にか居なくなっていた。

辺りを見渡してみると小春は奥のテラス席に座っていた。

少し疲れたのかな?

僕は有坂達の輪を抜けてテラス席で休んでいた小春のところに赴いた。


「どうした?少し疲れた?」

「うん。ちょっと」


興奮気味なのか少し上気した感じの顔ではあったけど疲れも見えた。

まぁ仕事は編集長が少しセーブしてくれてたけど、ここ数日は準備とかで忙しかったからな・・・


「そうだな。最近準備とかで忙しかったし」

「うん。でもそれ以上に嬉しくて疲れたと思いつつも張り切っちゃうんだよね。

 まだ夢を見てる見たいな感じというか・・・私開成君と結婚したんだなって」

「ふふ 夢じゃないよ小春は僕のお嫁さんになったんだよ」

「・・・そうだね。でも、あらためて言われるとまだ照れるね」


そう言いながら頬を染める小春。

う~ん。可愛いな僕の奥さんは。


「お~い 今日の主役がどうした?そろそろみんなで記念写真撮ろうぜ!」

「そうだな。行こ!小春!」

「うん開成君!」


今夜の事は一生の思い出だな。



******************

本当は昨日アップ予定だったのですが、体調が悪く今日になりました。

アフターストーリーは後1話位で1区切り予定です。

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