アフターストーリー4 -結婚の日-
「は~い。新婦さんもう少し新郎さんの方に寄って~
はい そう そう いい感じ いい感じ!」
4月某日。
早いもので今日は僕と小春の結婚式の日だ。
場所は、川北地区にある結婚式場。
小春の部活の後輩でもある相良さんの叔母さんが経営している式場だ。
僕らが高校生の頃に出来た式場で中々評判も良く何気に予約も取りにくい式場だったりもするんだけど、ここは相良さんのおかげでいい感じの日取りで予約が取れたんだ。しかも格安で。
本当、持つべきものは良き後輩って感じだね。
今は式場の2階にあるスタジオで写真撮影を行っている。
小春のウエディングドレス姿は、ドレスを選びに来た時にも見ていたけど凄く綺麗で何度見ても見惚れてしまう。
「開成君・・・そんなに見つめられたら恥ずかしいよ」
「あ ご ごめん。小春が・・・その綺麗過ぎて つい・・・」
「あ ありがとう。その・・・開成君もタキシード姿カッコいいよ・・・」
お互いを褒め合い、つい見つめ合ってしまう。
さっきから何回目だろこれ・・・
「はい はい。イチャイチャするのはいいですけど、そろそろ式の時間ですので、最終打合せしますよ~」
「あ、 はい すみません永田さん」
僕らの式のプランナーをしてくれている永田さん。
昨年末、ここで式をすることを決めてからずっとお世話になってきた方で式場のサブマネージャも務めている凄く頼りになるお姉さん的な人だ。
ちなみにこの永田さんが、式場に就職して初の大きな仕事が美香先生の結婚式だったそうだ。
確か美香先生が結婚したのって僕らが高校1年の頃だから・・・何歳とは言わないけど永田さんも結構ベテランだよな。
今日は美香先生も披露宴には来て頂く予定なので久々に会うのが楽しみとか言ってたな。地元の式場ってこともあるけどこれも何かの縁だね。
----------------------
打合せを終えた僕たちは永田さんの案内で5階にある控室へと移動した。
屋上庭園に設けられたチャペルに隣接する控室で、チャペル側に列席いただく方々が集まるまで待つ形だ。
"静かだなぁ~"
多分時間にしてみればそんなに経ってないはずだけど凄く長く感じる。
と、小春が僕の手を握ってきた。
少し震えてる。
小春も緊張してるんだな・・・
「緊張する?」
「うん・・・開成君は?」
「僕もだよ。でも・・・僕がついてるから」
「うん」
「渋沢さん、会場の方の準備だ出来たようなので今から入場します」
「「はい!!」」
永田さんの携帯に連絡が入った。
いよいよ入場だ。
僕達は腕を組んで控室を出て石畳の道を歩きチャペルへと向かった。
そして、チャペル前に着いて少し待つと中から司会のお女性の声が聞こえた。
"新郎新婦の入場です"
その声に合わせて永田さんがチャペルの扉を開くと中には見知った沢山の顔。
拍手の中、僕たちは祭壇へと進んだ。
最初の内こそ緊張していた僕たちも周りの優しい雰囲気のおかげで次第にいつもの調子で振る舞えるようになっていた。
そして、式も終盤、何度も練習した誓いの言葉を2人で宣誓した。
「「私たちは本日ご列席いただきました皆さまの見守る中結婚の宣誓をいたします。生涯変わらぬ愛を約束し、夫婦として生きていくことを誓います。そしてお互いを思いやる温かい家庭をつくっていきたいと思います」」
「新郎 開成」
「新婦 小春」
定型文丸々コピーした様な宣誓だけど何度も練習したんだよなこれ。
噛まずに言えて本当良かった。
そして、指輪の交換。
カメラのシャッターや"おめでとー"という声の中、緊張しながらも結婚指輪の交換を行った。
ちなみにこの結婚指輪は吉岡さんのお店で作って貰ったものだ。
僕と小春の要望を聞いて素敵な指輪を作ってくれた。
これから先も大切にしないとな。
「ご参列の皆さまのご承認を得て、ここに渋沢開成さん、大室小春さんの結婚が成立いたしました。ご結婚おめでとうございます!」
司会の女性の声でチャペルにあふれる拍手の音。
母さん、小春の両親、有坂に鶴間、佐々木編集長、それに堀内さん。
僕も小春も何だか感無量というか・・・色々と思い出して少し泣いてしまった。
そして、閉式の言葉を経て結婚式は無事に終了した。
この後は、女性にとってはお楽しみのブーケトスだ。
でも・・・僕と小春はある人にブーケを送りたいと考えていた。
未婚の女性陣が前に出る中、小春は後ろを向いてあらかじめチェックしていた方向へとブーケを投げた。
「「あっ」」
高く投げられたブーケは少し下がったところに居た山下さんの腕の中へと落ちた。流石は元バスケ部。ナイスパス(コントロール)!
「えっ私に?」
うしろの方に居たし遠慮して取るつもりなかったんだろうな。
驚いている山下さんに小春が話しかけた。
「そうだよ。次は山下さんの番だよ。幸せになってね」
そして僕も続ける。
「もちろん有坂とな」
「小春ちゃん、渋沢君・・・」
有坂の方を見ると黙って僕と小春に礼を言うかのようにお辞儀をしていた。
"頑張れよ有坂、それに山下さん"
*************
結婚式はもう1話続きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます