最終話 あなたの事が・・・
2020/12/12に46話、47話のプレゼントをあなたに③、④を少し加筆しました。
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「渋沢先輩、紙面の構成をチェック頂きたいんですが」
「おぅ見ておくよ」
僕が横川出版に入社して約2年半の月日が流れた。
嬉しいことに地元の方々に支えられタウン誌の発行部数も順調に伸び横川版に次いだ人気となっている。
開発中の地区ということで紹介するところが多いのもあるけど、やっぱり地元の人たちの協力が大きいよな。
そして、僕と小春の2人でスタートした編集チームも今は僕と若手2名の3名体制になった。僕にも部下というか後輩が出来たわけだ。
「うん。いいんじゃないかな。後で編集長の承認とっとくから今日は上がっていいよ」
「ありがとうございます!じゃあ先に上がらせていただきますね」
「おぅお疲れ。それにしても小坂。何だかご機嫌だけどいいことでもあったのか?」
「ふふん♪ 雪絵は彼氏と久々にデートなんだよねぇ~」
「ちょ!恵子!!」
「デートか。そりゃ楽しみだな」
「は はい!それじゃお先に失礼します!!」
僕の部下は、バイトから社員採用となった小坂 雪絵と下条 恵子。
2人共川野辺高校の卒業生でバスケ部の出身だ。
去年の夏にバイトに来たんだけど編集や出版の仕事に興味を持ったらしく今年高校を卒業した後、再度バイトとして現場に入り半年の試験期間を経て社員となった。
体育会系らしく元気も良いしやる気もあるので非常に助かってる。
というか多分僕より体力とかあるかも・・・
気になる点としては・・・ジェネレーションギャップかな。。。
高校卒業したばかりの女子に対して僕はアラサーのおっさんだからな。
コミュニケーションが難しいよ・・・
「というか渋沢先輩。いいんですか?」
「ん?なにがだ?」
「さっきからチーフが怖い顔して渋沢先輩の事見てますけど」
「え?」
言われてそっと後ろを見るとチーフが僕を睨んでいる。
「最近、毎日残業してるみたいだしチーフとデートとかもしてないんじゃないですか?」
「あぁ~その・・・確かに・・・」
「仕事一生懸命なのもいいですすけど、チーフは私や雪絵の尊敬する大先輩なんですからもっと大切にしてあげてくださいよね!!」
「そ そりゃ」
「それならちゃんと態度で示してあげてくださいよ!チーフならわかってくれるとかは無しですからね!じゃ私も上がります。お先に失礼しま~す」
「あぁ・・・お疲れ・・・」
7つも8つも年下の子に恋愛指南を受けるとは・・・
でも・・・下条の言う通りだよな。
そう思いながら僕はデスクを離れチーフのもとへと向かった。
「"大室"チーフ。こちらの原稿の最終チェックと承認をお願いします」
「わかりました。確認しておきます」
タウン誌の発行部数が伸び、編集者の人数も増えたため小春はその経験からタウン誌の統括チーフに就任することになった。
まぁ何というか僕の先輩から上司になっちゃったわけなんだよね。
一人前の編集者になったら・・・とか言ったものの中々追いつけないんだよな。
それにお互い仕事も忙しくなり中々会える時間も減ってしまったし・・・
本当・・・情けないよな僕も。
でも・・・今日は。
「ん?まだ何かあるの?」
原稿を眺めながら、立ち去らない僕に小春が不思議そうに視線を動かす。
「あのさ・・・この後お時間あるかな?
ちょっと一緒に"取材"してもらいところがあるんだけど」
「え?私と?この後? う うん大丈夫だけど・・・」
「じゃあ この後18時に横川の駅前で待ってるから」
「うん。わかった♪」
少し砕けた感じで話しかけると小春も何だか少し嬉しそうな顔で親し気に返事をしてくれた。
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仕事を片付けた僕は足早に横川の駅前と向かった。
小春は確か18:00まで会議だったはずだから少し遅れて・・・ってあれ?
僕を追いかける様に小春が事務所ビルの方から走ってきた。
「小春?会議だったんじゃ?」
「う うん。早めに終わったんで慌てて出てきたんだよ。
だって・・・開成君って仕事ばっかりで誘ってくれたの凄く久しぶりじゃない!」
「うっ・・・そ そうだよな。寂しい思いさせてゴメンな」
「ふふ 冗談だよ♪
だって仕事一杯振ってるの私だし・・・私こそ無理させちゃってごめんね」
そう言いながら照れくさそうに笑い返してくる小春。
まぁ確かに人数は増えたけど若手が中心だから僕や小春が手を動かさなきゃならないところがまだまだ多いんだよね。
「まぁ仕方ないさ。小春こそ最近毎日遅かっただろ?体調とか大丈夫なのか?」
「うん。まぁ何とか・・・それより"取材"って?」
「あぁ・・・そのなんだ。着いてからのお楽しみってことで」
「うん?」
そう言いながら僕は小春を連れてバスに乗り取材現場へと向かった。
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「ここって・・・・」
「そ リバーランド」
「今日って何の日か覚えてる?」
「ふぇ?きょ 今日?な 何か特別な日だったっけ?」
一般的には7月のなんでもない平日なんだけど・・・
僕にとっては思い入れのある大切な日だ。
「僕が小春に告白した日だよ♪」
「あ!」
そう言いながら小春の頬が少し赤くなった。
当時の事を思い出したのかな?
「ご ごめん日付まで覚えてなかった・・・」
「いいさ♪それより早く行こうぜ。閉園まであんまり時間がないから」
そう言いながら僕は小春の手を引いて走り出した。
「ちょ ちょっと開成君!行くって何処に!それに取材じゃ?」
「取材だよ♪前もそうだっただろ?」
「そ そうだけど」
日も落ちて暗くなったてきた園内のアトラクションには煌びやかなイルミネーションが灯り幻想的な空間を創り出していた。
そんな中で僕は小春の手を引いてとあるアトラクションを目指していた。
「あ、この先ってもしかして・・・」
「そう。今日はこれに乗りたくてね」
僕らが向かったのはリバーランドのシンボルでもある大観覧車。
2年前に小春に告白した場所だ。
チケットを買った僕たちはキャストの人に案内されゴンドラに乗り込んだ。
休日になると行列が出来ている観覧車も今日は平日の夜ということもあり並ばずにすぐ乗ることが出来た。
小春と向かい合わせで座る。
少しずつ高度を上げていくゴンドラからは川野辺や横川の町の灯りが見える。
僕や小春が育った川野辺の町も開発が進み家やビルの灯りも多くなってきた。
「わぁ~この観覧車乗るの久しぶりだけど川野辺の夜景も綺麗だよね」
「・・・」
「開成君?どうしたの?」
多分この時の僕は凄く緊張した顔でもしてたんだろうな。
小春が心配そうな顔をして僕の顔を覗き込んできた。
よ よし!
「小春。いや大室小春さん」
「え?あ、はい」
「一人前になったらとか偉そうなこと言いつつ・・・僕はまだまだ未熟で頼りないかもしれないけど、僕自身、自分の仕事に自信をもてるようになってきたんだ。
だから・・・その」
あぁ~もう・・・昨日色々とカッコいいセリフ考えてきてたのに・・・何が言いたいんだよ僕。グダグダ過ぎるだろ。
「開成君・・・そ それって・・・・」
「・・・小春。僕と結婚して欲しい」
そう言いながら僕はポケットから取り出した指輪ケースを小春に差し出した。
「・・・開成君」
「・・・小春」
「はい。私を開成君のお嫁さんにしてください・・・嬉しい・・・」
そう言いながら小春は僕の手にそっと自分の手を被せてきた。
温かくて小さな手だ。
小春と2人・・・見つめ合い・・・そして今までで一番長いキスをした。
僕はあなたの事が・・・
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
このお話にて本編終了となります。
7年目の約束に登場した後輩二人を主人公としたサイドストーリーでしたが、7年目の約束や関連ストーリーの"その後"的な意味合いの作品でもあり健吾や楓、有坂や若菜、大和に春姫のその後も交え私自身楽しく書くことが出来ました。
本編はこれで終了ですが、ここまでの登場人物を整理記載した資料集とその後の2人を描いたアフターストーリーはもう少し書く予定です。
その際はまたお付き合いいただければと思います。
2020/12/13
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