第46話 プレゼントをあなたに④

「や やぁ相変わらず早いな・・・小春」

「う うん。会社ではいつも顔合わせてるけどデートは久しぶりだったから何だか楽しみで!」


11月22日。

今日は小春の誕生日だ。

最寄り駅で待ち合わせをした僕らは、みなと地区にある映画館に向かって歩いていた。


一応今日は"映画を見よう"ってことで小春をデートに誘ったけど、星野と吉岡さんの協力でプレゼントも用意したし僕なりにデートプランも考えてみた。

折角の誕生日なんだし、いつもみたいにで映画見て食事するだけとかじゃね。


ちなみに誕生日祝いということは敢えて言わずサプライズ的な感じにする予定なんだけど・・・・今日の小春って何だかソワソワしてるって言うか、いつもと雰囲気が少し違うんだよな。

もしかして誕生日の事意識してるのかな?

それとももうバレた?

・・・僕って顔に出ちゃう方だからこういうの下手なんだよな。


「でもさ、今日見る映画ならショッピングモールのシネコンでも上映してるのになんでこっちなの?」

「え?あぁ そ その・・・たまには気分変えてと思ってな。それに・・・ほら、ここの映画館って設備も最新だろ?」

「そ そうだね。それにたまにはこういうところ来るのもいいよね♪」


何とか誤魔化せたか?

変な事は言ってないよな僕。

確かに今日見る映画(最近話題にってるアニメ作品)ならお互いの家からも近いショッピングモールのシネコンで上映している。


ただ、いつも行く場所じゃ特別感が無いし・・・ベタかもしれないけど、今向かっているみなと地区ってデート感あるよね?

それに映画館の近くにいい感じのスポットも多いし夜景も綺麗だし・・・




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「・・・良い映画だったね。原作は読んでたけどやっぱり感動したよ」

「・・・あぁ。僕も最後の方で泣きそうになっちゃったよ」

「泣きそうじゃなくて"泣いちゃった"でしょ♪」

「うっ・・・・そういう小春だって泣いてたじゃん」


映画を見終わった僕達はシネコンの階下にあるショッピングモールを歩きながら映画の感想を言い合っていた。

今日見た映画は、僕らが高校生の頃に流行ったラノベの恋愛作品で当時僕が小春に進めた作品だ。

だから思い入れもあったし今日見に行くならこの映画って決めてたんだよな。

小春も僕が勧めてから気に入って全巻買ったみたいだし♪


お互いの趣味が会うというか、共通の話題が持てるっていいよなとか考えていると小春が僕の服を引っ張りながら話しかけてきた。


「ねぇ、この服開成君に似合うんじゃないかな?」

「ほんと?どれ?」

「これこれ。開成君って普段こういうコーディネートしないでしょ?似合うと思うんだけどなぁ~」

「そうかな?ちょっと来てみようかな?」

「うんうん。着てみてよ!」


小春がファストファッション系の店のマネキンを見て僕に服を勧めてくれた。

うん・・・何だかデートしてるよな。


でも・・・少し派手じゃないか?そう思いながら試着室で服を着ていると


「いいよ。やっぱり似合う!」

「そ そうか?派手じゃないかな?」

「そんな事無いよ。普段着ない様な服かもだけど私は似合うと思うよ♪」


結局小春に"似合うよ"と絶賛されマネキン買いしてしまった。。。

ファッション系は疎いんだけど小春が勧めてくれた服だしな。


その後も僕や小春の服など色々なお店を見て回った僕らは、カフェに入りコーヒーを飲みながらの再び映画談議を楽しんだ。


いつの間にかもう夕方。辺りは暗くなってきていた。

そして・・・


「この後はどうするの?」

「あのさ、観覧車に乗らないか?そろそろ夜景がきれいに見える時間だと思うし」

「いいね♪ みなと地区は何度も来てるんだけど観覧車って実は乗ったことなかったんだよね」

「はは。僕もだよ」


そんな話をしながら僕らは、駅近くのビルから遊歩道を歩きみなと地区のシンボルともいえる大観覧車へと向かった。

この時期の遊歩道を歩くのは少し肌寒い感じもしたけど、寒さを紛らわす様にどちらかともなく手を繋ぎ歩いた。


イルミネーションが点灯した遊歩道にはカップルも多く僕らもそのカップルの1組なんだなと思うと嬉しいよな照れくさいような・・・


「開成君・・・」

「ん?」

「な 何でもないよ♪」


嬉しそうな顔して・・・照れるじゃないかよ♪




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「わぁ夜景綺麗だね」

「そうだね。あ、あれってリバーランドの観覧車じゃないか?」

「わぁ本当だ!」


少し待ったけど無事に観覧車に乗ることが出来た僕たちは、向かい合って座り眼下に広がる夜景を見て盛り上がっていた。

2人で観覧車乗るのはリバーランド以来だけど、やっぱりこういう景色見るとテンション上がるよな。


そしてゴンドラが最高地点地点に到達したタイミングで僕は小春に話しかけた。

言うならこのタイミングだよな。


「小春」

「ん?何?」


夜景から視線を僕に移す小春。

何だか緊張するな・・・・

小春も僕の緊張を感じ取ったのか少し緊張感のある面持ちだ。


「もしかしたら気がついちゃってたかもしれないけど、

 これ・・・誕生日プレゼント」

「え!?私に?」

「あぁ・・・その気に入ってくれるといいんだけど」


そう言いながら僕は用意していたプレゼントを小春に渡した。

嬉しそうにプレゼントを受け取る小春。


「開けて・・・いいかな?」

「あぁ」


小春はラッピングを慎重に取り箱を取り出す。

そして・・・箱の中には2つの指輪。


「え?これって・・・・」

「あぁ・・・その・・・婚約指輪とか結婚指輪とかはもう少し先になるかもだけどペアリング・・・だな。嫌じゃなければつけてくれないかな」

「い 嫌なわけ・・・凄く嬉しいよ!こういうの私初めてだよ!!」


そう言いながら小春は早速指輪を着けて嬉しそうに見ている。

サイズ大丈夫だったみたいだな。

合わなかったらどうしようかと思ったよ。


喜んでいる小春の目を見て、僕は今の素直な気持ちを伝えた。


「小春・・・僕は有坂や鶴間みたいなカッコよくもないし勇気も行動力も無い不器用な男だ。それに社会人としてもまだ1年目で経済力もない」

「・・・・」

「だから・・・"結婚を前提に付き合って"とは言ったけど小春を支えられる位。せめて編集者としても自立して自分に納得が出来る男になるまで・・・いつまでとは言えないけど・・結婚指輪は待ってくれないかな」


「・・・大丈夫だよ。私は何処へも行かないし開成君を待ってるよ」


そう言いながら小春は優しく微笑み僕に抱き着きながらキスをしてきた。


「・・・ありがとう小春。愛してるよ」



**************

2020/12/12少し加筆しました。

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