第45話 プレゼントをあなたに③

先週、吉岡さんにアドバイスを貰い、僕は仕事帰りにショッピングモールにあるアクセサリーショップに立ち寄った。

そこで・・・僕は思わぬ懐かしい友人と再会した。


川野辺高校文芸部時代の友人 星野だ。

最初は気が付かなかったんだけど店内でアクセサリを見ていた時に声を掛けてきた店員が星野だった。

高校の頃は僕と同様に地味なタイプの男だったけど・・・まさかアクセサリーショップの店員になっているとは想像もしていなかった。

まぁ地味と言いつつも高校1年の頃から彼女も出来てたし僕と比べて充実した高校生活はしてけどな。


で、その星野に昔話がてらプレゼントの話を相談したところ"そういうことなら"と色々とアドバイスをしてくれた。

星野の仕事終わりを待って、駅近くの居酒屋で飲みながらの会話だったけど流石はアクセサリーショップの店員ということだけあり知識も豊富で非常に参考になった。


「っうことで誕生日が来週末ならギリギリ注文間に合うと思うけどどうだ?」

「あぁ頼むよ。前日に取りに行けばいいんだろ?」

「それで大丈夫だ。僕も当日は付き合うよ」

「ありがとな助かるよ!」


ということで星野の会社とも取引があるという"知り合いのデザイナー"にプレゼントを発注することとなった。

1点物のオリジナルということで今から頼めばギリギリ間に合うとの事。

後で電話しておいてくれるそうだ。

でも・・・贔屓にしている取引先とはいえこんな遅い時間に電話して大丈夫なんだろうか。


「しっかし渋沢が大室さんと付き合ってるとはなぁ~」

「そんな意外か?」

「あぁ 高校時代はあんまり接点無かっただろ?」

「まぁ確かにあの頃はな・・・でも一応は有坂や栗田経由で顔見知りではあったぜ」

「そうかもしれないけど大室さんってバスケ部で活動的なイメージ強かったからな。インドアな渋沢とってのはやっぱり意外だよ」

「確かに・・・そうかもな」


久しぶりに会った旧友。

調子の乗って終電ギリギリまで飲んでしまった・・・




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そして・・・小春の誕生日を翌日に控え、今僕は都内某所にあるアクセサリーショップに来ていた。

発注していたプレゼントを受け取るためだ。


最寄り駅で星野と待ち合わせをして、星野の案内で向かった目的の店は、思っていたよりも小さかったけど星野曰く腕は確かだとの事。

そして、入り口のドアを開けると可愛らしい女性が出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ」

「あの・・・ペアリングをお願いした渋沢という者ですが・・・」

「やぁ南!」


僕の後ろに居た星野が店員さんに親し気に声を掛けた。

ん?南?

・・・もしかして


「久しぶりだね渋沢君。って私の事覚えてる?」

「・・・もしかしなくても吉岡さん?」

「正解♪まさか渋沢君がお客様になってくれるとは思わなかったよ」


高校時代に星野と付き合っていた女性だ。

何となく面影もある。

じゃぁもしかして星野が懇意にしている知り合いのデザイナーって・・・・


「あ、色眼鏡じゃなくて腕は確かだから心配するなよ!」


と慌てて星野がフォローを入れてきた。

そんなに僕心配そうな顔をしてたか?


「そ。安心して大丈夫よ。これでも結構人気あるんだからね私の作品」

「そうなんだ。凄いな。この店も吉岡さんが経営してるのか?」


小さくても都内で店出すって凄いよな。

店舗の家賃だけでも結構な額行くと思う。


「そう・・・って言いたいところだけどお母さんのお店なのよね~」

「お母さん?」

「うん。私の師匠でもあるかな。高校卒業した後に弟子入りして、お店を手伝いながらデザインの勉強させてもらったんだ。北斗君と一緒に大学行くか迷ったんだけど前々から興味もあったしね」

「僕も南の影響受けてアクセサリーとかデザインに興味持ってな。今の会社に就職したってわけ」

「へぇ~ってことは・・・やっぱりまだ2人は付き合ってるんだな」

「「もちろん♪」」


息ピッタリだな。

でも当時からの付き合いだとするともう7年?長く続いてるんだな。

僕も・・・見習わないとな。


「あ、渋沢君。これ頼まれていたペアリングね♪

 期間が短かったけど大室ちゃんへのプレゼントみたいだし気合入れて作ったんだから!」


そう言いながらカウンターの下から指輪ケースを取り出し指輪を見せてくれた。

本人が"気合入れて"と言うだけあり短納期にも関わらずデザイン性もある指輪に仕上がっていた。


「2人とも会社勤めだし飽きがこないシンプルなデザインにしたんだよ」

「流石だな。確かにこれなら付けてても大丈夫そうだ。ありがとうな」

「どういたしまして♪ 正式な結婚指輪も承ってますのでその際も是非♪」


ちゃんと商売というか宣伝も忘れないのも流石だな。

でも結婚指輪か・・・・・僕も早く一人前の編集者にならないとな。


「じゃ頑張ってこいよな」

「あぁ!」


吉岡さんのお母さんに挨拶してから帰るという星野と別れ僕は帰路についた。


明日は・・・上手くいくといいなぁ~






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<その頃の小春>

若菜ちゃん・・・・・誕生日の事を開成君に教えてくれたのは嬉しいけど・・・何だか緊張しちゃうよ。

変に気を使ってもらわないようにって誕生日の話とかもしなかったのに・・・・


でも・・・開成君どんなサプライズしてくれるのかな?

"映画"としか言われてないけど・・・いつもの映画館じゃないしやっぱり何か考えてくれてるんだよね?

最近忙しかったからちゃんとしたデートも久しぶりだし・・・


あぁ~考えたしたら緊張して来ちゃって眠れないよ~




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<開成が退店した後の星野&吉岡>

「なぁ、渋沢のやつ上手くいくかな?」

「大丈夫じゃないかな。渋沢君も大室ちゃんの事を大切にしているみたいだし、大室ちゃんも高校時代から渋沢君の事好きだったでしょ?」

「え!そうなのか?」

「・・・渋沢君もだけど北斗も鈍いんだから。結構大室ちゃんってわかりやすいよ」

「そ そうか・・・な」

「あぁ~あ 私も指輪欲しいなぁ~」

「うっ・・・」





**************

2020/12/12後半少し加筆しました。




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