第43話 プレゼントをあなたに①
[よぉ開成 今電話大丈夫か?]
[ん。大丈夫だよ。仕事終わって外に出たところだし]
仕事だと思いつつも学生時代を思い出しながら小春と楽しんだ川野辺高校の文化祭も終わり早いもので11月も半ば。外もだいぶ寒くなってきた。
小春は明日まで大阪支局に出張ということで今日は1人で帰宅している。
お腹も空いてきたし横川の駅前でラーメンでも食べて帰るかなと思っていたところで有坂から電話が掛かってきた。
[声聞くのは久々だよな。元気にしてたか?]
[あぁ毎日忙しいけどお陰様で元気にしてるよ。そっちも元気そうだな。
後、山下とは上手くいってるのか?]
[当ったり前だろ。毎日ラブラブだよ]
[悪い聞いた僕が悪かった]
まぁそうだな有坂と山下だもんな。
昔の関係に戻れてるなら・・・心配いらないか。
[で、本題だけど開成。来週末11月22日って何の日か知ってるか?]
[22日?(何か特別な日だっけ?)・・・いい夫婦の日?]
[・・・やっぱりな。電話して良かったよ若菜の言った通りだ]
山下の言った通り?
何のことだ?22日って何か特別な日なのか?
[22日は大室の誕生日だよ]
[・・・マジか]
小春の誕生日?え?そうなの?
[若菜がな、大室は自分から言うタイプじゃないし、開成は知らないんじゃないかってな。開成も自分から誕生日とか聞かないだろ?]
[・・・2人ともよくわかってらっしゃる]
有坂の思ってる通りだ。そういうところ気が回ってなかったよ・・・
山下のおかげだな。
[若菜も大室には色々世話になったからプレゼント贈るって言ってたけど、2人の邪魔しちゃ悪いからって誕生日とは別の日に栗平達も呼んで女子会するらしい]
[そっか・・・何だか色々気を使ってもらってるんだな]
[そういうことだ。ちゃんとお祝いしてやれよ]
[あぁ もちろんだよ。ありがとうな]
・・・とは言ったものの。
誕生日か。どうしたもんかな。
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翌朝。
「あ、渋沢君おはよう・・・ってどうしたの難しい顔して。
大室ちゃんが出張で寂しくなっちゃったのかな?」
「あ、編集長。おはようございます。それもありますが、ちょっと考え事してて」
「それもあるんだ・・・って悩み事?何ならお姉さんが相談にのるよ」
お姉さんって・・・まぁ僕や大室とそれ程歳は変わらないと思うけど。
でも、そっか女性へのプレゼントだもんな。編集長に聞くのもありか。
「ありがとうございます。それじゃお言葉に甘えて少し相談させていただいてもよろしいですか?」
「遠慮なく♪ 今日は・・・予定していた会議が流れちゃったんで暇なのよね」
それって・・・暇つぶし?
い いやそんなはずない。編集長は好意で僕の相談にのってくれるって言ってくれているんだ・・・そのはず。
「実は・・・来週の22日。大室の誕生日で・・・プレゼントどうしようかと」
「22日。そっか大室ちゃんの誕生日か。
・・・まぁ渋沢君がプレゼントするなら何でも喜ぶと思うけど、そうだよね。確かに付き合い始めて最初の誕生日だし考えちゃうか」
「あ、編集長は大室の誕生日の事知ってたんですか?」
「知ってるよ。面接したの私だし履歴書に書いてあるでしょ?去年とか一昨年は私のお気に入りのバーに連れて行って2人でお祝いしたんだよね」
「へぇ~そうなんですね」
「でも、そうだよね。今年は大好きな彼氏にお祝いしてもらうんだもんね~♪」
「は はぁ・・・」
なんだろう・・・ハードルが凄く上がってる気がするんだけど・・・・
とは思ったけど、僕より小春と付き合いも長い佐々木編集長は、僕の知らない小春を色々と教えてくれた。
一緒に食事に行ってるときは気が付かなかったけど実は貝類はあまり得意じゃないとか(ボンゴレはギリギリOKなのか?)、音楽好きなのは知っていたけど毎年夏は音楽フェスを見に行ってるとか(今年は僕と一緒に居ることが多かったから行かなかったのかな)、海は好きだけど実は泳ぎは苦手とか(そういえばプールでも泳いではいなかったよな)・・・
再会してまだ半年ちょっと。
僕はまだまだ小春の事を知らなかったんだなとあらためて思わされた。
「まぁ色々と話はしたけど、正直渋沢君が一緒に居てあげるだけでも大室ちゃんは喜ぶと思うよ」
「そうだといい・・・いや、そうかもしれないですね」
「ふふ お熱いことで」
「今日は本当に貴重な時間ありがとうございました。勉強になりました」
「役に立てたなら良かったわ。さ、仕事に戻るわよ。
大室ちゃんも今日は帰ってくるんだし残業にならないようにね」
「はい!」
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編集長に貴重な話を聞いた後、僕は予定していた仕事を片付け昼休みを利用してネットで調べながら小春の誕生日プランを考えた。
佐々木編集長からオススメのお店は何軒か教えてもらったのでそれも含めての検討だ。
「定番だとホテルのディナーとかだろうけど・・・ベタだよなぁ・・・・
それにプレゼントも何がいいのか・・・」
そう思いながら女性に流行りのショップのサイトを開く。
香苗は○○が欲しいとか自分から言ってくるタイプだったし、好みがうるさかったからあんまり自分で考えたプレゼントとかはしたことが無かったんだよな。
アクセサリを選ぶにしても・・・正直センスがあるかと言われると・・・
でも、どうせなら小春が喜んでくれるものをプレゼントしたいよな。
「う~ん」
「どうした渋沢君。珍しく悩んじゃって。それに昼休みに外出しないで菓子パン食べてるってのも珍しいな」
「酷いなぁ僕でもたまには悩みますよ」
「はは 悪い悪い。でも何だよ女物のアクセサリのサイトなんか見て」
副編集長の吉岡さんだ。
大手出版社から転職してきたベテランの編集者さんで佐々木編集長の頼りになる右腕。年齢的には多分うちの母さんよりも年上で50代半ばくらいかな?
ちょい悪な感じのカッコイイおじ様って感じの人だ。
「・・・大室の誕生日が近いんで何プレゼントしようかと」
「ほぅ~ 大室さんにというか彼女へのプレゼントか。確かに悩むなそれは」
「僕・・・こういう流行りものとかに疎くて・・・」
「あ、このネックレス若い子の間で流行ってるぞ」
え?吉岡さんもしかして詳しいのか?こういうの。
「・・・吉岡さんもしかしてこういうの詳しかったりするんですか?」
「ん?あぁ、まぁ、そんなに詳しいわけじゃないんだが・・・君たちと同年代の娘が居てな」
「娘さん?」
「あぁ、まぁ娘と言ってももう社会人だけどな。
中々親離れしなくて時々こういうのおねだりされるんだよ」
「おねだりされるとプレゼントしちゃうとは娘さんに甘いんですね。
でも良いお父さんしてるじゃないですか~」
「い、いいだろうちの事は・・・それよりそのメーカーのシリーズなら今人気だしデザインも豊富だし大室さんも喜ぶんじゃないか?」
「はい。アドバイスありがとうございます!」
「じゃあ頑張れよ!」
娘さんの話題を出されて恥ずかしくなったのか逃げる様に吉岡さんは部屋を出て行ってしまった。
確かにデザイン性もシンプルで小春に似合いそうだとは思ったんだよな。
・・・ショッピングモールに店舗があるな。帰りに寄ってみるか。
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