第42話 2人で文化祭

少し肌寒さも感じるようになってきた11月。

季節は秋だ。


「タウン誌の担当になってから取材とかで何度か来てるけど・・・何度来ても"ここ"は落ち着くな」

「うん。ここにはいろんな思い出が詰まってるからね♪」


僕と小春は川野辺高校の校門の前に立っている。

今日は川野辺高校の文化祭初日。

例年通り初日は平日ということで在校生や近隣の中学校の生徒など制服姿のお客さんが多数いる。

僕達の頃もだったけど警備などの都合上で基本は招待券を持っている人のみが来れる形だ。

ということで、僕と小春も事前に取材ということで学校側から渡されていた"関係者"と書かれた腕章を付け校内へと向かった。


校舎内に入ると生徒たちが慌ただしく教室の飾りつけをしたり客引きをしたりと忙しそうに走り回っている。


この時期ってイベントも多いし確か僕たちも結構ギリギリまで準備したよな。

1年の時はスポーツ系のゲームセンターで2年生の時はメイドカフェ。

どちらも僕は裏方で内装作ったり案内冊子作ったりしてたけど小春は案内やメイドさんとか有坂や恩田達とフロントに立って頑張ってた。


「小春とは3年間クラスが一緒だったけど・・・文化祭とかであんまり絡みなかったよな。僕裏方ばっかりだったし」

「・・・そうだね。私は案内係りとかメイドさんとか表に立つ役割が多かったしね。それに・・・」

「それに?」

「・・・若菜ちゃんも瑞樹も彼氏と一緒に文化祭見てまわったりして・・・ちょっとああいうのも憧れたなぁ~」


「何か・・・その・・・鈍感でゴメンな」

「ふふ 気にしてないよ。あの頃は私も開成君に対する自分の気持ちがはっきりしてなかったし。そもそも当時は付き合ってたわけでもないしね。

 でも今日は何年か越しだけど一緒に文化祭見てるんだしいいんじゃない♪」


そう言いながら僕の腕に抱き付いてくる小春。

ちょ!え~~


「ちょ 生徒さんたち見てるよ」

「いいじゃない。今日は当時に戻った気持ちでね♪」

「一応仕事で来てるんだけど。。。。」

「気にしない♪気にしない♪ あ、ほら私達の居た教室行ってみよ!」

「あ あぁ」


生徒達にチラチラ見られながら階段を上り2年生の教室のある3階へ。

でも・・・彼女との文化祭か・・・僕も何処かこういうの憧れがあったのかもな高校時代とか本当に女っ気なかったし。


3階に上がり僕たちが過ごしたB組の前に移動するとメイド服を着た可愛らしい女の子がチラシを配っていた。


「よろしければどうぞ!」

「ありがとう。2年B組はメイドカフェやってるんだね」

「はい♪ よろしければお立ち寄りください!」


メイドカフェや執事喫茶は僕らの1つ前の先輩達が服や食器類などの資材を安く大量購入してくれたおかげで僕たちの代からはあまり予算を掛けずに行えるようになったんだよね。

さっきの案内の子が来ていたメイド服も確か小春が来ていたので同じデザインだったから使い続けてるんだろう。


「あのメイド服って確か」

「そうだね。私が来てたのと同じだね。何だか懐かしいな~」


・・・当時僕も小春のメイド服姿とか見てるはずなんだけど。

あんまり記憶にないのが何だか悔しいな。

有坂とか恩田に写真持ってないか聞いてみようかな?

と、


「小春、渋沢君」

「あ、楓先輩!」


「今日は取材だったよね・・・って腕組んじゃって2人とも普通にデートしてるみたいじゃん」

「へへぇ~♪」

「へへじゃないの。ちゃんと仕事しなさいよ」

「ちゃんと仕事はしてますから大丈夫です♪

 あ、電話でお願いした通り取材については後で職員室に伺いますのでよろしくお願いしますね」

「了解。美香先生とか何人か集めておくね」

「「よろしくお願いします!」」


やっぱり取材先に知り合いがいると話も進めやすいな。

川野辺高校の場合は楓先輩や僕たちの担任だった相良先生が居るお陰で内部調整してくれるから話の進みも早いし凄く助かってる。


「でもこのメイド服懐かしいな」

「あ、楓先輩も着てましたもんね」

「だね。それに私はメイド服だけじゃなくて執事服も着たよ」


先輩の執事服か。確かに先輩スレンダーだし背も高いしカッコいいかもな。

でもまったくもって記憶にないんだよな。僕って当時何してたんだっけ?


「はい。凄くカッコ良かったです!当時1年の女子で話題だったんですよ」

「はは 昔から女子にはモテたから・・・」

「いえ!1年生の男子にも小早川先輩のファンって結構多かったですよ」

「え!?そうなの渋沢君?後輩から告白された事とか無かったけど」

「楓先輩・・・田辺先輩見ちゃうと皆遠慮しちゃいますって」


そうですよ。当時の田辺先輩って成績は学年トップクラスでバスケ部でも活躍してて・・・実際小早川先輩とも凄くお似合いだったし間に割り込むような勇者は中々。

それに小早川先輩のファンも多かったけど田辺先輩のファンも確か多かったよな。


「そうなんだ。確かに"ケンちゃん"を越える男はそう居ないからね♪」

 あ、何だか話し込んじゃったけどそろそろ職員室戻らなきゃ。

 じゃ2人も楽しんでってね」

「はい。また後でよろしくお願いします!」


そう言いながら階段を降りて行く楓先輩。


「・・・何だか最後軽く惚気てったね」

「うん。先輩の中で田辺先輩以上の人は居ないみたいだからね」

「仲いいな本当に」

「だね。高校時代から同じくお互いを好きでいられるんだからね」

「僕たちも・・・そんな関係になりたいね」

「・・・恥ずいよ開成君」


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その後、2人で文化祭を楽しみつつも仕事として本来の目的である生徒や先生方の取材や写真撮影を行いこの日の仕事は終了となった。

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