第38話 渋沢家

「おかえり開成。小春ちゃん大丈夫?」

「多分。でも普段はもっと飲んでも平気だったんだけど・・・」


そうなんだよな。

前に飲みに行ったときとかもっと飲んでたのに平気な顔して帰ってったんだけど。


「小春ちゃんも最近仕事忙しかったんでしょ?疲れてるところで飲んだから酔いが回るのが早かったのかもしれないわね」

「確かにそうかもしれないな・・・もう少し気を付けてあげればよかったよ」

「そうよ。折角同じ会社なんだしそういうところは見ててあげなさいね。多分小春ちゃんって無理してでも頑張っちゃう子だから。

 あ、お布団敷いてあるから部屋で寝かせてあげなさい」

「うん。ありがとね母さん」

「じゃあ私もそろそろ寝るわね。おやすみなさい」

「おやすみ」


そうだよな。もっと僕がしっかりしなきゃ駄目だな。

寝室へ向かう母さんを見送り僕は以前も小春を泊めた客間へと向かった。

普段あまり使っていない部屋だけど小春が遊びに来るようになってからはいつでも泊まれるようにと母さんが掃除をしてくれている。

今日は、居酒屋から電話を入れていたので布団も用意してくれている。


部屋に入った僕は小春を出来るだけそっと布団に寝かせ布団を掛けた。


「開成く~ん もうお腹一杯だよ」


一瞬起きたのかと思ったけど寝言みたいだ・・・ってどんな夢?

まぁ明日は日曜だしゆっくり休んでね。

"おやすみ小春"



--------------------------

翌日。

僕も疲れていたのかいつもより少し遅く部屋を出てリビングに向かうと母さんと小春が楽しそうに何か本の様なものを見ながら談笑していた。

ん?あれって・・・・


「わぁ開成君可愛いですねぇ あ、もしかして、この隣に居るのって有坂君と鶴間君それに太田君ですか?」

「そうそう。あの子達って性格とかもバラバラなのに変に仲が良くてね。

 よく家に来てゲームとかしてたのよね」

「そうなんですね。あ、これは栗平さんですよね。

 鶴間君と栗平さんは今度結婚するらしいですよ」

「へぇ~あの子達がねぇ。確か幼馴染よね。

 まぁうちの子もいい歳だしおかしくはないわね」


「わぁ~やっぱり僕のアルバム見てる!!」

「あら、開成。おはよう」

「お おはようじゃなくて・・・」


「さっ朝食の準備しなくちゃ!あ、小春ちゃんは休んでていいからね」

「え、あ すすみません」


と言い残しキッチンへ向かう母さん。

全然 誤魔化せてないし。

小さい頃の写真とか恥ずかしいだろ。


「あ あの開成君・・昨日はどうもありがとう。ゴメンね飲む量は加減してたつもりだったんだけど・・・」

「あぁ気にすんなよ。それより疲れ取れたか?何ならまだ休んでても」

「うん。大丈夫。あんまり寝すぎても逆に疲れ取れないし」

「そうか?それならいいけど」


そういう小春はシャワーを浴びたのか昨日のワンピースではなく、ゆったりとした女性物のニットシャツにスカートという服装に代わっていた。


「服。母さんの借りたの?」

「え、あ、うん。変かな?」

「いや、似合ってるよ。サイズもあんまり違和感ないし」


そうなんだよな。母さんも背は高い方だからサイズ的には同じような感じかもしれないけど・・・胸は多分小春の方が・・・


「若い頃は私もナイスなボディだったのよ♪」


へぇ~そうなんだ。母さんスタイル良かったんだ~


「って母さん それ息子に言う?」

「だって開成ったら小春ちゃんの胸の辺りばっかり見てるから。ごめんねスケベな息子で」

「あ いえ、そんな」


あからさまにそういう事言うなって。。。気まずいだろ。

まぁ見てたのは間違いないけどさ。


「ちなみにその服は私が都内でOLしてた頃の服ね。お気に入りだったけどサイズが合わなくなったから捨てようかと思ってたんだけどね。まさか小春ちゃんにピッタリとは思わなかったわ」

「へぇ~都内でOLって言うと20代の頃だよね?」

「そうね。私も小春ちゃん位の頃は結構モテたのよ。お父さんと結婚が決まった時はどれだけの男が泣いたことか・・・」

「だからそういうの・・・」


全く母さんは・・・って結構話しを盛ってるだろ絶対。

でもこの服って確か・・・


「あ、そうそう。その服良かったら小春ちゃん貰ってくれない?」

「え?」

「捨てるつもりだった服で申し訳ないんだけど、当時気に入ってたから中々捨てられなくてね」

「いいのか?母さん?」


確かこの服って父さんがプレゼントしてくれた思い出の。


「うん。小春ちゃんが着てくれるなら服も喜ぶから」

「は はい。ありがとうございます。大切にします」

「よろしくね。さぁ朝ごはんで来たから食べましょ」


その後、3人で朝食を食べた後、半ば強引に僕もアルバム鑑賞に参加。

いい話のネタにされながらも楽しい時間を過ごした。


「あら、これは小春ちゃんよね」

「そうですね。小学校は別でしたけど中学は私も川野中でしたから。

 開成君とはほとんど話したこともなかったけど2年と3年の時はクラス一緒だったんだよね」

「そ そういえばそうだな」


あの頃は、友達少なかったからなぁ~

それにクラスが同じでも女子と会話なんて夢のまた夢というか・・・


ちなみにクラスが同じだったということもあり中学の卒業アルバム近辺からは大室の写真も所々で見ることが出来た。

少し幼さが残るものの今と同じ快活な明るい笑顔で写真に写る大室。

体育祭や文化祭、合唱コンクール。僕が写る写真に小春も写っている。

何だか不思議な気もするけど・・・写真の中の小春も可愛いな。


「開成君。そんなマジマジと写真見られるの恥ずかしいよ」

「いいだろ♪小春は僕のもっと小さい頃からの写真を見たんだし。あ、そうだ今度弟さんにお願いして小春のアルバムも持ってきて貰おうかなぁ~」

「ごめんなさい。昔の写真とか結構恥ずいです・・・」

「可愛いんだしいいじゃん♪」

「全然可愛くないよ。よく男っぽいとか言われてたし」

「そんな事無いと思うんだけどな~可愛いのに」

「ま また言った!」


小春は照れてるけど、お世辞抜きで可愛いと思うんだけどな僕は。

鮎川さんとかは可愛いより"綺麗"って感じだけど小春は"可愛い"って感じで。

僕は・・・可愛い方が好きだな。


「開成・・・見てる方が恥ずかしくなるからイチャつくのも程々にね」

「は はい」




--------------------------

昼近くまで母さんを交え談笑した後、僕は小春と一緒に駅へと向かった。

時間的にはまだ早いけど最近忙しくて家の掃除や洗濯が出来てないから片付けたいんだそうだ。

確かに1人暮らしはそのあたりが大変だよな。



住宅街を出て川野辺駅前商店街に入ると昼時ということもあり飲食店前などに人があふれていた。

一時期はショッピングモールに押され閉店する店も出たけど組合の人の努力などもあり今は昔の様な活気を取り戻している。

地元が活性化されるのはやっぱりいいことだよな。

そんな地元トークをしつつ2人並んで歩き川野辺駅に到着。


「本当にありがとうね開成君。凄く楽しかった」

「気分転換になったみたいで良かったよ。また・・・何処か遊びにこうな」

「うん。お母さんにもよろしく伝えといてね。お洋服まで貰っちゃったし♪」

「伝えとくよ。じゃ明日また会社でな」

「うん。また明日!」


**************

次の更新は多分また週末になる予定です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る