第36話 後輩のお節介?

大阪出張から1週間。

僕も小春も普段の生活に戻っていた。


入社してから約半年。僕も仕事のコツが大分わかってきたこともあり、最近では担当している川野辺のタウン誌の編集も大半を一人で動けるようになった。

それに小春が担当している横川のタウン誌や隔月発売の旅行ガイドの編集も手伝えるようになってきていた。

色々な編集に参加することで仕事の知識や幅も広がってきて本当最近は仕事が面白かったりする。


ただ、その分残業も増え小春とのデートや一緒に食事に行く回数も減っていた。

もちろん小春の事は好きだし一緒に居たい思いは日に日に強まっているんだけど小春も新規に年末特集の仕事を振られ中々時間が取れず・・・

そういえば、今日も打合せで外出して直帰だったよな。

後でメールでもしてみるかな。


そんなことを思いつつ気が付けば自分も残業で遅い時間の帰宅。

終電に近い時間の電車で川野辺駅に着いた僕は、駅前のコンビニでコーヒーを買い、少し蒸し暑い夜道を飲みながらのんびりと帰路を歩いていた。

すると商店街の方から歩いてきた二人組の女性に突然声を掛けられた。


「わぁ~渋沢先輩だぁ~」

「ん?って相良さん?」

「は~い 相良の幸ちゃんですよ~」

「・・・相良さんだいぶ酔ってるだろ」


相良不動産の事務員 相良幸さん。

以前タウン誌の取材で相良不動産に行った際に知り合った川野辺高校の後輩だ。

元バスケ部で川野中時代から小春に指導を受けていたということもあり小春に凄く懐いてる。


「ほら、幸。先輩が困ってるでしょ!」

「先輩優しいから大丈夫だよ~ ねぇ先輩!」


そう言いながら僕に抱き着いてくる相良さん。


「ちょ!幸!!」


慌てて一緒に居た女性に引き離される。


「ははは・・・(酒癖悪いな・・・)」

「幸がすみません。川野辺高校の先輩?ですよね。

 渋沢先輩でよろしいですか?」

「あぁ相良さんの1つ上の学年だったんだ。

 高校時代は接点なかったんだけど今出版社で仕事しててね。この間相良不動産の取材で知り合ったんだよ」

「そうなんですね。あ、初めまして。私は小早川紅葉って言います。

 私も川野辺高校の卒業生で幸とクラスメイトだったんです。だから私から見ても渋沢先輩ってことですね」


そう言いながらにこやかに微笑みかけてくる小早川さん。

快活な相良さんとは違って少し落ち着いた感じの中々可愛い子だな。


「はは そうなりそうだね。よろしく小早川さん。

 でも・・・大丈夫?相良さん。飲みすぎた感じ?」


この間のOG会でも飲んでるところは見たけど、無茶な飲み方する感じの子には見えなかったんだよな。何かあったのかな?


「あ、大丈夫です(多分)。彼氏と喧嘩したとかで少し荒れてて・・

 私の家すぐ近くなので今日は泊めるつもりです」


彼氏と喧嘩か・・・それで飲みすぎたのか。

でもまぁそれなら友達と飲んで少しは気持ちも楽になったのかな。


「そっか。それなら大丈夫か。手伝わなくて大丈夫?近いなら送ってくけど」

「あ、大丈夫です。さっき兄が迎えに来てくれるって連絡くれたので」

「そっか。じゃあ安心だね」

「気を使っていただきありがとうございます」

「いえいえ。じゃ僕もそろそろ帰るね」


と帰ろうかなと2人に背を向けたところで、少し大人しくしていた相良さんが再び話しかけてきた。


「渋沢先ぱ~い。これ事務所で貰った優待券なんですけど良かったら小春先輩と一緒にどうぞ♪」


そう言いながら相良さんは、鞄の中から2枚のチケットを取り出して僕に渡してくれた。


「優待券?って映画?」

「はい。うちの会社もスポンサーになってるんで貰ったんです。

 最近お2人共忙しいみたいですし、たまには息抜きも必要ですよ~」

「そか。ありがとう」

「ふふ~気にしないでくださ~い。小春先輩ってしっかりしてそうで意外と寂しがり屋ですから優しくしてあげてくださいね~」


そうだよな・・・小春ってしっかりしてるように振る舞ってるけど。

わかってたはずなのにな・・・・


「あぁ早速明日にでも誘ってみるよ。ありがとう」

「小春先輩とお幸せに~」


にこやかに笑いながらサムズアップする相良さん。

これは明日になったら何も覚えてないパターンか、大反省パターンだな・・・


「あ あの・・・何だかすみません。

 酔っ払いで・・・普段は良い子なんですけど」

「あ~。。。うん。大丈夫。じゃ今度こそ帰るから気を付けて」

「あ、はい。先輩もお気をつけて。おやすみなさい」

「おやすみ」


相良さん達と別れ家に向かって再び歩き出すと長身の男性とすれ違った。

顔は良く見えなかったけど、もしかしてあの人が小早川さんのお兄さんかな?






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翌日。

眠い目をこすりながら出社すると小春も既に出社し菓子パンを食べながらパソコンを操作していた。

菓子パン食べてるのとか珍しいな。


「おはよ。今日は朝食菓子パンなの?」

「あ、おはよ。うん昨日帰り遅くて久々に寝坊しちゃって。

 おかげで日課のランニングも出来なくてちょっとストレスかも」


小春も疲れてるんだな・・・

でも、そっか。ランニングとか体動かすことでストレス解消にもなるのか。


「最近忙しそうだもんな。体とか大丈夫か?」

「うん。心配ありがとう。体力は自信あるからね♪ 開成君こそ大丈夫?」

「あぁ。まぁ何とかね。でも・・・」

「でも?」


「小春と会える時間が少なくなってるのは少し寂しいかな」

「・・・も もう開成君って寂しがり屋さんだから♪」


そう言いながら嬉しそうに微笑む小春。

この笑顔を見ると何だか落ち着くし疲れも取れる気がする。


「はは。で・・・今週末の土曜だけど・・・久々にデートしないか?

 僕も時間作るからさ。小春の仕事もそろそろ一段落するだろ?」

「うん!土曜なら大丈夫だよ。天気も良さそうだし楽しみにしてるね♪」


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先週更新出来なかったので、もう1話書きました。

今週中でもう1話位・・・書けたらいいな。

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