第30話 出張?旅行?①

8月もあと数日で終わる。

今年の夏は例年以上の暑さだった気もするけど数年ぶりにプールにも行ったし小春とも何度かデートを重ね楽しい時間を沢山過ごすことも出来た。

もしかしたらここ数年で一番楽しい夏だったかもしれないな。

なんてことを思いながら今日の業務予定を整理していると


「渋沢君、大室ちゃん ちょっといいかな?」


佐々木編集長に声を掛けられた。

僕と大室がセットで呼ばれるってことは川野辺のタウン誌の件かな?

佐々木編集長の後について会議室に入ると


「明日から3日、2人に大阪出張に行って欲しいのよ」

「え?大阪ですか?」

「そう。3月に大室ちゃんに支援で出張言ってもらったでしょ?あの時何人か指導してもらったと思うけど、インフルエンザで2人自宅待機になっちゃったらしくて。今週末が締め切りだからってヘルプ頼まれたのよ。うちだと大室ちゃん位しか対応できそうにないから。頼めないかな?」

「はい。大丈夫ですよ。ちょうど横川のタウン誌も川野辺のタウン誌も入稿して一段落したところですから。でも私だけじゃなくて渋沢君もですか?」


だよな。僕は大阪の担当と面識もないし。

指導できるほどの知見も無いしな。まぁ雑用位なら出来るかもしれないけど。


「渋沢君はちょうどいい機会だから田崎さんにも紹介しといてもらおうかと思ってね。今後出張頼むこともあるだろうし顔見せも兼ねてと思ってね」

「あぁなるほど」

「編集長。田崎さんって?」

「あぁごめん。渋沢君は知らないよね。田崎さんは大阪支局の支局長している人なの。私の前任でここの編集長だった人でもあってね。元上司で色々お世話にもなったから頼み事されると無下に断れなくて」


なるほどね。田崎支局長にヘルプを頼まれたんだなきっと。

でも、大阪か。随分行ってないな。


「わかりました。経費は後で清算ですよね?」

「そうね。それでお願い・・・ちなみに明日水曜から3日だから仕事終わりは金曜日なのよねぇ~。次の日は土曜日。お休みかぁ~」

「あっ・・・・」

「まぁ・・・・その辺は2人に任せるわ。じゃ頼んだわね」


それは・・・土日遊んできていいよってことですよね編集長♪

もしかして僕も一緒にとか気を使ってくれたのか?

・・・まさかねぇ~


明日は早い時間の新幹線で大阪に向かうということもありこの日は僕も小春も定時で上がらせてもらった。

まぁ今月分の入稿を終えて一段落着いたところだったということもあるんだけどね。


「仕事だけど・・・開成君と2人で旅行だね♪」

「だよなぁ~ 土日もあるし何だか嬉しいな。

 あ、新幹線は良いとして宿とかはどうするんだ?」

「あ、大阪支局の子に良さげな宿の予約頼んでおいたから大丈夫」

「流石仕事が出来る大室先輩は違うねぇ~」

「ふふん 見直したか後輩君♪じゃ軽く夕飯食べて早く帰ろ明日早いし」

「そうだね」 


そして、いつもの様に小春セレクションのお店で夕飯を一緒にとりこの日は帰路についた。ちなみにこの日は中華でエビチリが絶品な店でした。




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翌朝、横川の駅で待ち合わせをした僕らは新横浜から新幹線に乗り大阪へと向かった。

新幹線での移動も何だか久々だけど何より小春と一緒というのが嬉しい。

ちなみに最初の内こそ色々と話をしていたけど朝早いこともあり2人とも途中から寝てしまって気が付けば京都を過ぎたところだった。

新横浜から2時間少々。寝ているとあっという間だね。


そして、新大阪から環状線で大阪へ。

大阪支局は大阪駅近くの雑居ビルの1室を借りているとの事。

僕は小春の案内で支局へ向かった。


「大室せんぱ~い ご無沙汰してます~!!! 冬香寂しかったですぅ~」

「な 並木さん久しぶり!ってさぁ。昨日もラインしてたでしょ」

「でも会いたかったんですよぉ~」


なんだこの子?並木?妙に小春に懐いてるな。

僕と大室が編集室のドアを開け中に入ると近くのデスクに居た女性が小春に抱き着いてきた。小柄でちょっと小動物系の雰囲気がする可愛らしい感じの女性だ。

僕が2人を見ているとその視線に気が付いたのか"並木"という女性が僕に話しかけたきた。


「あ、あなたが渋沢さんですね。初めまして大阪支局でタウン誌を担当している並木冬香です。遠いところヘルプに来て頂きありがとうございます。大室先輩には部署立ち上げの時に色々指導いただきまして」


この子が小春が指導した社員の1人なのか。

見た目は僕や小春より幼い感じだけど・・・社歴は僕よりも先輩っぽいよな。


「あ、僕はまだ入社したばかりなので並木さんの方が多分先輩ですよね?敬語とか大丈夫なので気軽に話していただければと」

「ふふ 了解です。真面目な方なんですね。大室先輩に聞いてた通りだ。

 私は中途採用で今年部署の立ち上げ時に入社したんです。だから私もまだ入社1年も経ってませんし先輩とかそいうのはあんまり気にしなくてもいいですよ」

「そうなんですね。じゃあらためまして渋沢開成です。よろしく」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」


いきなり小春に抱き着いたりしてたからどんな人かと心配したけど意外としっかりした感じの人だな。

・・・ん?でも大室先輩に聞いてた通り?って小春何か僕の事話してたのか?


「あの並木さん 僕のこ「あ~挨拶はそのくらいでいいかな?

 局長にも挨拶をと思ったんだけど・・・って編集部に並木さん以外人が居ないんだけど打合せか何か?吉野君と設楽さんは休んでるのよね?鳴海君は?」

「あ、はい。2人は自宅待機で局長は鳴海君と編集会議中です。多分そろそろ終わると思いますよ。他の人も今日は取材とか外出の人が多くて・・・」

「了解。じゃとりあえず時間ももったいないし、進行状態と残タスクの話聞かせて欲しいかな。私と渋沢君で対応できるところは巻き取るから」

「はい よろしくお願いします!」


少し焦ったような感じで小春が僕の言葉を遮って話題を変えられてしまった。

視線も泳いでたし僕の事なんて言ってたんだろ?

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