第29話 プールデート③

ウォータースライダーを楽しんだ僕らは、昼食を食べるため一旦温浴施設や飲食店が並ぶ建物へと向かった。


「随分ここは変わったんだな」

「そうだな確かに前は売店しかなかったもんな」


以前は軽食を販売する売店が数件あっただけだったんだけどリニューアル後はフードコート形式になった。

元々あった売店も出店してはいるけど、有名なファーストフードのチェーン店などが軒を連ねる形になった。


「あ、以前あった売店も残ってるんだね。私ここの焼きそばにしようかな。昔食べたとき美味しかったんだよね」

「そうなんだ。う~ん僕はどうしようかな」


確かにチェーン店の料理は外で普通に食べられるからな。

リニューアル後も出店出来たってことは美味しいって事だろうし・・・


「確かにここのお店は焼きそば美味しいよね。僕も春姫と来ると大体うどんか焼きそば食べるんだ。今日はうどんにしようかな」

「あ、大和がうどんなら私は焼きそばにするからシェアしようよ♪」

「そうだね」


そういえば鶴間達は毎年来てるとか言ってたもんな。

その2人が言うなら美味しいのは間違いないか。


「小春。大和達はうどんと焼きそばシェアするみたいだし僕らも違うの頼んでシェアする?」

「そうだね。私もうどんは食べたこと無いし美味しいなら食べてみたいかも」


料理を注文し場所取りをしてくれていた有坂と山下さんと合流。

少し遅めのランチタイムが始まった。

ちなみに有坂達もうどんと焼きそばを頼んだ。

有名なチェーン店が幾つもあるのに僕達の注文全部売店って・・・

だがしかし、


「うん。小春や大和が言うだけあって美味しいね」

「でしょでしょ♪ よかった味が変わってなくて」


見た目は普通の焼きそばだけど肉や野菜もしっかり味がついてるしボリュームもある。ソースもほんのり甘くてちょっと癖になる味だ。

満足しながらもう一口食べようとしていると隣のテーブルから栗平さんの声が。


「大和。焼きそばも食べるでしょ? はい あ~ん」


と箸で焼きそばを取って大和の口元に持っていく栗平さん。


「は 春姫。嬉しいけど・・・その今日はみんなも居るんだぞ」

「あ・・・・」


2人の時はいつもこんな感じで食べさせあってるんだろうか・・・

僕らの視線に気が付いたのか慌てて箸を戻し頬を染める栗平さん。

何というか・・・・メチャクチャ仲いいな。

でもちょっと羨ましいぞ大和!

なんて思いながら小春を見ると目が合ってしまった。

ただ、何となくお互い気まずく視線が泳いでしまう。

い いやその・・・僕もしてみたいとかじゃないんだよ。なんて思っていると。


「私あんまりこういうキャラじゃないかもだけど・・・はい あ~ん」

「こ 小春」


照れて僕と視線を外しながらも僕の口元に箸を出しくれた小春。

僕は迷わずその箸から焼きそばを食べた。


そんな僕たちを有坂や大和達がニヤニヤしながら見てる。

うん。嬉しいけど凄く恥ずかしいぞこれ。


それぞれのカップルで楽しくイチャイチャしたランチタイムを過ごした後は、新設された芝生広場に移動した。

小春と2人パラソルの下に置かれたビーチベッドに寝ころびしばしの休憩。

照りつける日差しは暑いけど建物に設置された送風機から送られてくる冷風が心地よい。何だか寝てしまいそうだ・・・


そしてゆっくり休んだ後は温浴施設で皆で温まったりゲームコーナーでゲームを楽しんだりとリニューアルされた施設を楽しんだ。



--------------------------------------

その後、プールを出た僕たちは川野辺駅前に戻り大室が昔よく通ってたという"呑兵衛横丁"という居酒屋に入り遅くまで盛り上がった。

お店はお世辞にも綺麗とは言えない小さな居酒屋で小春はともかく栗平さんや山下さんが入るにはちょっと・・・という感じはしたんだけど2人ともあまり気にせず入っていった。

後で聞いたけど相良先生が旦那さんと知り合った居酒屋らしく、玉の輿に乗った相良先生のご利益をと一時期川野辺高校卒業の女子が多く通ったんだそうな。

確かに先生の旦那さんってIT企業の次長さんで実家は川野辺の資産家だもんな。


まぁそういった話は置いておくとしてもお酒も料理も中々に美味しく価格も激安。僕も地元だし常連になっちゃうかも。


そして、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので一番遠くに住む大和と栗平さんは先に帰ることとなった。


「名残惜しいけど今日は楽しかったよ。また声掛けてくれな。開成も大室さんと仲良くな」

「楽しかったわ。また今度お食事でも行きましょうね」

「じゃまたな!」


駅の方に仲良さげに手を繋いで歩いていく2人・・・もう鶴間夫妻でいいだろ。


「ねぇねぇ開成君 鶴間君ってやっぱり栗平さんと結婚するのかな?」

「あぁ大和に聞いたけど生活も安定してきたから近々プロポーズするって」

「わぁやっぱりそうなんだ。栗平さん照れちゃって教えてくれないんだもん」


小春もやっぱりこういう話は興味あるんだな。

それに知り合いの事だけにやっぱり気になるよな。


「良かったですね春姫ちゃん。本当鶴間君の事大好きだったもんね」

「あぁそうだな。好きすぎて昔は色々拗らせてたけどな。

 ちなみに俺の予想では大和は明後日プロポーズすると思うよ」


明後日?直ぐじゃないか。何かの日だっけ?普通に平日だよな。


「有坂は何か知ってるのか?明後日って普通の平日だろ?」

「ん?明後日はな"大和と栗平の記念日"だ」


ん?ますますわからないぞ?なんだその大和と栗平さんの記念日?


「あっ思い出した。そういえば8月でしたもんね」

「え?山下さんも知ってるの?小春は知ってる?」

「う~ん私は・・・もしかしたら聞いたのかもしれないけど覚えてないなぁ」


「明後日。正確に言うと高校1年の頃だけど2人が初めて泊りの旅行に行った日らしい。それ以来毎年この日は2人で一緒に過ごすことにしてるらしいんだ。まぁ話を聞いた当初は"何惚気てるんだよ"って突っ込んでやったけど、あの2人にとっては特別な日なんだよ」

「なるほどな。そういう記念日か」


って僕はその話を大和から聞いてないんだけど。。。

有坂と大和とは高校時代よく遊んでたけど、プールでのダブルデートの事含め彼女無しのおひとり様ってことで気を使わせてたんだろうか・・・・

でもそういう記念日もちょっと素敵かな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る