第28話 プールデート②
カフェで鶴間と栗平さんの仲の良さを見せつけられた後、僕らはチケットを買ってプールに入った。
何だかカフェに居た他のお客さんも驚いてたよな。
「じゃあ流れるプールのところにある売店に集合な」
「うん!」
一旦男女別れ更衣室へ。
女性陣の方もだろうけど話題はもちろん鶴間の発言。
「なぁ大和。お前さっきの・・・ついに栗平と結婚するのか?」
「そうだよ。僕もまさかあんな返しが来るとは思ってなかったから驚いたけど、あれって今度プロポーズするって事だろ?」
「あぁ。ちょうど近々プロポーズするつもりだったんだ。付き合いも長いしね。
2人も知っての通り僕は学生の頃からソフトウェアの会社を立ち上げてただろ?まぁ社員は僕と春姫の2人だけの個人経営みたいな感じだけど去年あたりから高校の時の先輩の伝手とかで取引先もいくつかできたんだ。
まだまだ売り上げは寂しいけど一応は黒字経営出来る様になってきたからね。結婚は前々から考えてたけどある程度生活が安定してからじゃないとね・・・」
そうだよな。勢いで結婚しても生活出来ないんじゃな。
鶴間って昔から堅実というか・・・こういうところしっかりしてるよな。
まぁ栗平さんが惚れるのもわかる気がする。
僕も小春と付き合い始めて浮かれてたけど社会人としてはまだ1年目だから・・・むしろ小春の方が先輩だし給料も多いだろうからな。
もっとしっかりしないと駄目だよな。
「それより、2人はどうなんだ?開成はまだ付き合い始めたばかりだと思うけど有坂は・・・」
「僕も・・・考えてはいるけど若菜がまだな。色々あったし」
「そっか」
「まぁ慌てないさ。僕たちは僕たちのペースでな」
「そうだな。うん。それが良いな」
有坂も山下さんとの事を真剣に考えてるんだな。
確かに有坂自身はもちろんだけど山下さんもまだ気持ちの整理がつかないだろうし・・・慌てる必要は無いよな。
「って結構時間経ってるぞ。早く行かないと春姫たちに叱られちまう」
「はは 栗平の尻に敷かれてるのは相変わらずなんだな」
「い いいんだよ決める時に決めれば!」
栗平さんに叱られるかどうかは別として、僕らは慌てて着替えを済ませプールへと向かった。
「も~う遅いよ大和!」
「ご ゴメン春姫!」
待ち合わせの売店に到着すると両手を腰に当てながら仁王立ちの栗平さんが鶴間に"遅い!"の一言。
そして、そんな栗平さんに両手を合わせて平謝りの鶴間。
さっきカフェで抱き合っていた男女とは思えないやり取りだが・・・これがこの2人にとっての日常なんだろうな・・昔からこんな感じだし・・不思議な関係だ。
「相変わらずだねあの2人」
「え?」
うしろから声掛けられた僕が振り向くと一緒に買いに行った黒ビキニに花柄のパレオを巻いた小春が居た。
鶴間と栗平さんのやり取りに気を取られていたけど、栗平さんが居るんだから小春だっているよな当然。
「・・・・・」
「開成君?・・・どうしたの?
あ、一応試着室では見てもらったけど・・・水着似合うかな?変じゃない?」
「・・・うん。やっぱりお店の中で見るのとは全然違うね。
凄く似合ってるし・・・・それに綺麗だよ」
「あらためて言われると何だか照れるね。本当に似合ってるのかな?」
「本当だって。こんな可愛い子が僕の彼女だと思うと嬉しいよ」
「・・・あ ありがとう。でもさ、そういうのは2人きりの時に言って欲しいかな」
「え?」
と横を見ると有坂や鶴間が僕らを囲んでニヤニヤと笑っていた。
「開成も中々言うねぇ~」
「小春ちゃん大切にしてもらってるんだね」
「あの開成がねぇ~」
「人の事言えないじゃん惚気ちゃってさ」
その後も散々からかわれました・・・
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「ねぇ大和!いつもののあれ行こうよ!」
「ん?ウォータースライダーか?春姫好きだよな~」
「いいでしょ!楽しいんだから」
なんでも栗平さんはダブルデートでウォータースライダーを滑って以来すっかりお気に入りで毎年2人で滑りに来ているんだそうだ。
「僕と春姫はウォータースライダーに行こうかと思うけどみんなはどうする?」
「開成君。私達も行ってみない?ここのスライダーって私もリニューアルしてから滑ったこと無いし」
「そうだね。行ってみようか。ちなみに僕なんか滑ったことすらないよ」
「そうなんだ。名物になってるだけあって中々楽しいよ♪」
そう。昔来た時は・・・・ウォータースライダーを楽しむカップルを羨まし気に眺めてたんだよな。一緒に来た友達は男友達だったし・・・あの頃の事を考えると今は夢みたいだな。
ちなみにプールそのものは"流れるプール"と名物のウォータースライダー、温浴施設と大枠変わらないもののウォータースライダーは滑る区間が長くなるようにリニューアルされたらしい。ちょっと楽しみだ。
「じゃ私達からだね。お先に~」
スライダーの順番が来ると我先にと栗平さんと鶴間が配置された浮き輪に慣れた感じで座った。栗平さんが前に座り鶴間が後ろから抱きしめる?様な形だ。
そして係員の人が浮き輪を少し押すと2人は長いトンネルへと消えていった。
栗平さんだろうか?悲鳴とも歓声ともつかない声が聞こえる。
・・・ってスライダーってあんな風にして浮き輪に乗って滑るの?
僕が小春を後ろから?
ちょっと僕が焦っていると横を有坂と山下さんが通り過ぎていった。
「先行かせてもらうな」
「お先に失礼しますね」
鶴間達と同様に山下さんを前にする形で浮き輪に座ると楽しそうに会話している。そして係りの人が浮き輪を押すと有坂達もトンネルへと消えていった。
何だかんだ言ってこの2人も楽しそうにしてるみたいだな。
「私達の番だね♪」
「あ あぁ」
そして、あれこれ妄想してしまいちょっと緊張気味ながらも小春を浮き輪の前に座らせ僕が後ろに座った。
「何だか緊張するね。前に来た時は1人用の浮き輪で滑ったから・・・このカップル用は私も初めてなんだ」
「そ そうなんだ。僕もこういうの初めてだけど・・・手の置き場に困るよな」
そう。鶴間や有坂は栗平さんや山下さんを後ろから抱くように腰に手を回していたけど・・・僕もやっていいのかこれ?
「そ その私の腰に手を回す感じで掴まってくれて大丈夫だよ」
「あ あぁ そう? そうか? じゃぁちょっとゴメンな」
と僕は後ろから大室を抱きしめる様な形で手を伸ばし、おへその前あたりで手を組むような形で大室に掴まった。
「あっ」
「ん?どうかした?」
「な 何でもない大丈夫」
何だか一瞬聞いてはいけない艶っぽい声が聞こえた気がしたけど・・・
「準備はよろしいですか?スタートしますね」
「「はい!!」」
押し出された浮き輪は水の流れに乗って少しずつ進み急こう配のトンネルに入った。右に左にと蛇行する浮き輪ボート。思った以上のスピードだ。
思わず小春を抱きしめる手にも力が入ってしまう。
そして・・・
[ザパァーーン]
「きゃ!」
「わぁ」
浮き輪の着水と共にスライダー下のプールに投げ出される僕と小春。
水面に顔を出すとすぐ横で小春も顔を出していた。
「大丈夫か?小春」
「え、うん 大丈夫。2人用ってバランス取るのが難しいんだね」
「あぁ落とされるとは思わなかったよ。でもこれ結構楽しいな」
「うん。昔に滑った時はそうでもなかったけど・・・2人で・・・開成君と乗ると楽しいみたい♪」
「え?ほんと?」
「ほんとだよ♪」
お互い顔を見合わせて笑ってしまった。
でも僕と滑るのが楽しいって・・・何だか嬉しいな。
「お~い おふたりさん。イチャつくのはいいけど、いつまでもそこに居ると次の人の邪魔だから早くプールから出ろよ!」
「あ、あぁすまない有坂! 小春 行こう」
「うん」
プールに来るまでは緊張もしたけど誘ってくれた有坂には感謝だな。
楽しすぎるよ本当。
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