第22話 取材という名のデート③

リバーレストラン。

小説の中では、主人公がハンバーグランチ、ヒロインはナポリタンを注文していた川沿いのレストランだ。

最初は注文も真似てみようと大室とも話してたんだけど。。。


お店一押し!と書かれている"期間限定リバーランチセット"というのが目に入ってしまった。

いわゆる大人のお子様ランチ的なセットでミニハンバーグにナポリタン、サラダに唐揚げ等少量ずつの料理が盛られている。普通に美味しそうだし"期間限定"という言葉も惹かれる。

大室も同じ事を思ったらしく結局僕らはリバーランチセットを注文した。


「渋沢君。このランチセットで正解だったね。これ中々美味しいよ」

「そうだな。味もしっかりしてるしコスパも良いし」

「うん うん。何となくだけど記事に出来そうだよね」


大室は流石だな。ちゃんと取材意識してる(僕は完全に忘れてた・・・)

こういうところは見習わないとな。


その後、デザートまでガッツリと食べた僕たちははランド内を散策した後ゲームセンターに入った。


「勝負だね」

「そうだな」


ここのゲームセンターはレトロゲームが多数あるということで人気のスポットの1つ。小説の中でも確か主人公たちがエアホッケーやレーシングゲームなどいくつものゲームを楽しんでた。


「あ、渋沢君"ファイターズストリート"もあるよ」

「懐かしいね。高校の頃流行ったよね」


"ファイターズストリート"は高校の頃に流行った対戦型の格闘ゲームだ。

今でも根強い人気ありシリーズ化もされている。

当時は毎週のように有坂や太田、鶴間と対戦してたよな。


「これで勝負しようか?」

「ほほぅ このゲームは僕も当時結構やりこんでたんだよ」

「へぇ~それは倒し甲斐があるかも」

「言ったな大室。じゃあ負けた方は明日の昼飯奢りな!」

「よ~し その勝負乗った!」


スポーツでは勝てないだろうけどゲームなら僕だって・・・・って


「何だよその技!」

「ふふん。私も当時結構ゲーセンに通ったんだよね~」


大室メチャ上手いじゃん!

素早いコントローラ捌きで見たことも無いようなコンボ技使うし、こっちの技も余裕でかわすし・・・


「明日のお昼ごちそうさまぁ~ な~に食べよっかなぁ~」

「くっ くそ~」


大室恐るべし!!

その後も当時の事を語らいながら懐かしいゲームを時間が経つのも忘れ色々と楽しんだ。

そういえば・・・高校の頃にも大室とゲーセンに行ったことあったよな。

確か有坂や山下も一緒だったけど懐かしいし楽しかったなあの頃。


ゲームセンターを出た後、いくつかのアトラクションを楽んでいるといつの間にか日も暮れて園内のイルミネーションが点灯し始めた。

鮮やかなイルミネーションが木々や園内のアトラクションを美しく彩っている。


「綺麗・・・・デートで人気って言うのも頷けるね」

「だね。雑誌で特集とかされるのも納得だ」


リバーランドのイルミネーションは通年行われているけど春夏秋冬季節に応じて色合いなどを変えており雑誌などでもよく取り上げられている。

こういう中を歩いてるとデート感あるよな。


「写真・・・」

「ん?」

「一緒に写真とか撮らない?

 ほら・・・その取材だし・・・カップルも楽しんでますよ的な・・・」


確かにこのイルミネーションは写真とか撮りたいよな。

っていうか僕から"写真撮ろう"とか言えばよかったな。

ほんと気が利かないな僕も・・・


「そうだね。あそこの人が集まってるところが撮影ポイントみたいだし行ってみようよ」

「うん」


僕は大室の手をそっと握りしめ撮影ポイントへと向かった。

リバーランドのほぼ中央にある見晴台はランド内のビューポイントでもあり撮影ポイントにもなっているので、写真撮影を行うカップルや家族連れで賑わっている。どうもリバーランドの職員さんが撮影のサービスをしてくれているようだ。


列に並びしばらく待っていると僕たちの番が来た。


「はい。カップルさんですね。撮影しますのでカメラをお貸し下さい」

「お願いします」


僕は係の人にスマホを渡すと大室と一緒に指定の位置に立った。


「はい。彼氏さんもう少し彼女さんとくっ付いて~ そうそう仲いい感じ!」

[カシャ]

「はいお疲れ様。もうそろそろ閉園の時間ですが最後まで楽しんで言ってくださいね」


スマホを受け取ると綺麗なイルミネーションをバックに僕と大室が笑顔で写っていた。あの係りの人、写真撮るの上手いな。


「渋沢君、その写真後で私にも共有してくれないかな」

「あぁこの後送っておくよ」


イルミネーションを堪能した僕たちはゲートは逆、同じ方向へと自然と足が向いていた。


「最後は・・・やっぱりあれだよな」

「うん。あれだよね」


僕らは最後に乗るアトラクションはリバーランドのシンボルでもあり小説のラストシーンでも使われていた観覧車だ。

普段は人気で長い行列が出来ている観覧車も閉演時間が近いこともあり、列も短くすぐに乗ることが出来た。


係りの人がゴンドラの扉を開け僕と大室はゴンドラへと誘導する。

思ったよりも狭い・・・


「観覧車も凄く久しぶり」

「あぁ 僕も久しぶりだ。意外と小さいんだな」


僕らが乗ったのは2人乗りの小さいゴンドラ・・・大きいゴンドラもあるみたいだけど、これって絶対カップル専用だろ・・・距離感が近すぎるよ。

膝がぶつかりそうな距離で向かい合わせに座る僕と大室・・・


「・・・外の景色綺麗だよな」

「え、あ、うん。さっき見たイルミネーションもだけど川野辺や横川の町も良く見えるね」

「・・・・・」


何だか気まずい。

でも・・・告白するならもうここしかないよな。

観覧車が一番高い地点に到達する直前。僕は思い切って大室に声を掛けた。


「あ あの大室・・・い いや大室小春さん」

「は はい!」

「その・・僕と・・・僕と結婚を前提に付き合ってくれないですか?」

「・・・・」


大室を見ると頬を赤らめながらもちょっと不満そうな顔をしている。

何か言い方間違ったのか?


「駄目・・・か?」

「・・・まだ・・って言ってもらってないよ」

「え?」

「私は・・・渋沢君の事が好き。渋沢君は?」

「ゴメン。そっちが先だよな。

 香苗の事もあって恋愛に関しては正直臆病になってたけど・・・僕は大室の事が好きだ。あらためて言うよ。僕と結婚を前提に付き合ってください」

「・・・はい 喜んで」


と大室は僕に抱き着いてきた。


「ちょ 大室危ないって」

「今はこのままで・・・開成君」

「小春・・・」


僕達の初めてのキスは多分一生忘れることはないだろう。

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