第20話 取材という名のデート①

僕は川野駅前に居た。

今の時間は9:00。大室との待ち合わせのちょうど1時間前だ。

流石にまだ早いよな・・・・


正直昨日は眼が冴えてしまって中々眠れなかった。

有坂との電話で"高校時代に大室が僕の事を好きだった"ということをあらためて聞いたからだ。

確かに仲良くはしていたけど・・・結構衝撃的な話だった。


鈍感な男の子が主人公のラブコメマンガやラノベとかは流行りだったので僕も当時よく読んでいた。"こんな鈍感な奴いないって・・・"とか思ってたし確か大室にも貸してあげたことがあった気がするんだよな。

まさか自分がそんな鈍感君だったとは・・・大室の奴どんな思いであの本読んでたんだろ・・・

本当、僕って駄目だよな。


でも・・・大室が今でも僕の事を好きでいてくれているなら・・・今度こそ。


などと考え事をしていると


「え!渋沢君?まだ待ち合わせの1時間前だよ!」

「あ、お 大室こそ何でこんな早く?」


まさかの1時間前に大室が駅前にやってきた。

なんで?


「え~と・・・その遊園地とか来るの久しぶりで何だか眠れなくて・・・

 渋沢君こそ何でこんなに早くに来てるのよ!」

「ぼ僕も・・・その・・・何だか今日の事考えたら眠れなくてさ」


何だかお互い同じようなセリフで、顔を見合わせて笑ってしまった。


「ふふ じゃあ私と同じだね♪」

「だね。今日はよろしくな」

「うん」


僕もデートとかは初めてではないけど、そんなに女性慣れはしてない。

正直なところさっきまでは結構緊張してたんだけど、大室の顔を見たとたんにリラックスできたというか・・・何だろなこの感じ。

高校時代の友人だからか?


「どうする?開園10時からだけど、そこのカフェでコーヒーでも飲んで時間を潰してから行く?」


あんまり早く行っても入り口で並ぶことになるし、それだったらエアコンの効いたカフェで話でもしていた方が・・・


「そうだね。今日行くところとかの話もしたいし♪一応取材だもんね」

「え?あ、そ そうだな取材だよな取材」

「あ~忘れてたな♪取材じゃないなら・・いったい何なのかな~」


「・・・大室と・・・そのデートだよ」

「ふぇ?」

「だから・・・昨日も・・その・・そんな感じで言っただろ。嫌だったか?」

「い 嫌じゃないです」


大室は顔を左右に振りながら少し照れた感じで告げてくれた。

大室って自分からはグイグイ来るけど、逆の立場になると弱いよな。

でも・・・ここまで来て嫌とか言われてたら流石に僕も辛かったわ。


「ということで・・その・・・取材の事も忘れてたわけじゃないよ。でも一番の目的は・・・僕が大室と一緒にリバーランドに来たかったんだ」

「・・・うん。ありがとう。

 私もデートとかに誘われたのって本当久しぶり・・・というか私こんな性格だから友達は多いけど・・・こういうところでデートとかあんまりしたことなくて・・・前に来たのも瑞樹や若菜ちゃん達とだったし」

「変に気負わなくてもいいよ。僕もそんなに慣れてるわけじゃないし、お互いリラックスして楽しもうぜ」

「そ そうだね」


「あ、ところで大室。その服凄く似合ってて可愛いな」

「えっ そ その・・・あ ありがとうございましゅ」


あ、噛んだ。

服装褒めたの駄目だったかな?大室耳まで赤くなっちゃったけど・・・

彼女持ちの有坂や鶴間からは、とりあえずパッと見て目についたところは素直に褒めとけって前に言われたけど・・・う~ん 女心って難しい。


ちなみに今日の大室は、遊園地ということを意識してか身軽そうなジーンズにちょっと清楚系な白いカットソーと言った服装。

僕の好みドンピシャなんだけど話したことあったっけな?

それに有坂に大室は爽やか系の男子好きだったはずとか聞いてたから、数少ない私服の中から僕もジーンズに白シャツとか着てきちゃったんだけど・・・今日の大室の服装だとちょっとペアルックっぽいよなこれ。


『ほんと、こういうとこなんだよなぁ~ 不意打ちしてくるから・・・私にも心の準備が・・・』


「ん?なんか言った?」

「え!あっ何でもないよ。ここのコーヒー美味しいよね~ははは」


笑い方が不自然だよ大室。

でも、今最後の方で"心の準備"とか言ってなかったか?

もしかして、僕からの告白を期待して待ってるのか?


『・・・だとしたら・・・告白頑張らないと』


「え?渋沢君なんか言った?」

(い 今・・・"告白頑張る"みたいなこと言ってなかった?)


「い いや何でもないよ。そろそろいい時間だしリバーランド向かおうか」

「そだね。楽しみ♪」

(も もしかして私・・・告白とかされちゃうの?)


お店を出た僕たちは、駅からリバーランドまでの遊歩道をのんびりと歩いた。

川野駅前からリバーランドはゆっくり歩いても5分弱。

昔は田園風景が広がる田舎の駅だったらしいけどリバーランドのおかげで随分駅前も賑やかになったし町の雰囲気も変わったんだろうな。

あ、そうだ昔の今の川野辺を記事にするのも面白いかもな。

今度、大室にも読者が付きそうか相談してみるかな。


と横を歩く大室を見てみると・・・さっきから僕をチラチラと見て何やらニヤニヤしてる。

そんなに僕とリバーランド行くの楽しみなのかな?

だとしたら僕も嬉しいんだけど。






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