第19話 友との電話

『悪いなこんな時間に』

『気にすんなよ。っていうか電話してきたってことはそれなりの要件なんだろ?』


居酒屋からの帰り道、駅で大室と別れた後、僕は親友の有坂に電話をしていた。

明日大室に会う前に聞いておきたいことがあったんだ。


『・・・有坂。お前今幸せか?』

『なんだよ急に・・・・もしかして・・・若菜との事か?』

『あぁ。大室からまた付き合い始めたって聞いてな』

『そっか・・・僕は幸せだよ。

 若菜と会うまでは自分でも若菜に対してどんな感情をもってるのか正直わからなかったんだけど・・・実際に再会したら怒りとか憎しみとかそういう感情は不思議と無くってな。

 それで、当時の想いや今の気持ちとかお互い言いたかったことを言いあって・・・それで若菜に告白されて・・・僕ももう一度若菜を信じてやり直すことにしたんだ』

『そっか』


山下から告白したのか。

あいつも大室の話じゃ色々と悩んでたみたいだし勇気だしたんだな。


『ただ、付き合い始めたけど若菜は何処か僕に遠慮してるというか昔のことを気にしているような感じはあるんだよな・・・』

『それは仕方ないんじゃないかな。山下も有坂との事を随分悔いてたんだろ?山下って根は真面目だし、謝罪したから許される事だとは思ってないんだろ。きっと』

『ああ。そうだろうな。でも・・・僕は彼女を許すことにしたし信じることにしたんだ。だからさ、少しずつでも昔の様な自然な関係に戻りたいなとは思ってる。甘いかな?』

『いや・・・有坂は強いな』

『そんなことないさ。ま、結局のところ僕は若菜の事が好きだったって事かな』


さりげなく惚気てるし・・・でも何だか昔を思い出すな。

まぁこの調子なら2人は大丈夫かな。


『あ、今度さ大和や栗平も誘って川北のプールに行こうと思ってるんだ』

『川北のプール?ってあのウォータースライダーとかある?』

『そ。高1の頃に4人で行ったんだ。思い出の場所でもあるしな』

『・・・僕は当時誘われなかったぞ?』

『悪い悪い一応名目はダブルデートだったからな』

『はいはい。御1人様だった僕には縁のない話だよね』

『僻むな僻むな。それより僕と若菜の事聞きたくてわざわざ電話してきたってわけじゃないんだろ?本題はなんだ?』


やっぱりバレるか・・・


『・・・2人の事を聞きたかったのもあるけどさ・・もう1つ相談・・いや聞きたいことがあるんだ』(有坂の言う通りある意味こっちが本題だ)


『おぅなんだ?』

『・・・有坂って大室とも仲良かっただろ?』

『あぁ。まぁ元々は栗田や鮎川つながりで仲良くしてたんだけどな。渋沢に大室紹介したのも僕だっただろ。それがどうかしたのか?』


『・・・高校の頃、あいつ好きなやつとかいたのかなって』

『お前・・・それ本気にで言ってるのか?だとしたら鈍すぎだぞ』


気持ち有坂の声にイラつきが感じられる。

まぁそうだよな・・・


『だよな。悪い・・・当時は全く気が付いてなかった。本当もう一回高校からやり直したい気分だよ。。』

『結構、大室って顔に出るしわかりやすかったと思うんだけどなぁ。お前と話ししてる時の笑顔とか・・・あきらかに他のやつとは違ってたぜ』


そっか。あの笑顔は僕だけに向けられてたんだな。

はぁ~僕って・・・・

だとしたら、遅いかもしれないけど・・・僕も頑張らないとな。


『明日・・・』

『明日?』

『うん。僕は大室に告白するつもりだ』

『・・・は?告白?』

『あぁ今更なのかもだけどな』


『・・・何だか話の流れが読めないけど・・・お前と大室には色々と世話になったし、2人が幸せになるのは僕も願うところだ。頑張れよ!』

『あぁ ありがとうな』

『あ、そうだ。上手く言ったらお前らもプール行くか?』

『か 考えとくよ・・・』


聞いといてよかった。

やっぱり大室は高校の頃から僕の事を・・・


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<大室視点>


「ふぅ~」


渋沢君と駅で別れ横川行きの急行に飛び乗った私は車窓を見ながら一息ついた。


何だか疲れた・・・渋沢君を連れていったら何か言われるとは思ってたけど、瑞樹も幸ちゃんも綾子先輩もあんなに絡んでくるとは・・・

でも・・・

『渋沢君がリバーランドに誘ってくれた♪』

何だか自然と笑みがこぼれてしまう。

前に打合せしたときは半分冗談で言ったんだけどちゃんと覚えててくれたんだ。


と、電車が川野川に差し掛かったところで車窓にイルミネーションの光が飛び込んできた。

『あ、リバーランド。まだ今日は営業してるんだ』

リバーランドで夕方から行われるイルミネーションは県内外でも有名で夏場は花火も行われたりするので結構遅い時間まで営業している。


『電車から見るリバーランドも綺麗なんだよね』

『明日・・・もしかして一緒にイルミネーション見ちゃったりするのかな』


そう考えると何だか緊張しちゃうかも。

あ、明日何着て行けばいいのかな。

それに・・・渋沢君ってどんな服が好みなのかな♪

・・・って幾つだよ私。乙女か!

と自分自身に突っ込みを入れてしまったけど服の好みとかはやっぱり気になる。


[横川~横川~]


自宅最寄りの横川で降りた私は、渋沢君の好みを知ってそうな人に電話をしてみることにした。


『よぉどうした?』

『あ、有坂君?遅い時間にごめんね。ちょっと聞きたいことがあって』

『聞きたい事?何となく想像つくけど何だ?』

『え?想像つく?』

『あ、ゴメンこっちの話。で、何聞きたい事って』

『実はね。明日渋沢君と出掛けることになって・・・』



渋沢君が"親友"と言うだけあって有坂君は渋沢君の好みを色々知っていた。

ただ、渋沢君が好きそうな服についてだけ聞いたはずだったんだけど、何故か好きな食べ物とか女性のタイプとか色々とアドバイスまでくれたんだよね。

有坂君や若菜ちゃんには渋沢君の事とか話したことなかったと思うけど。


でも・・・明日楽しみだな♪

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