第18話 OG会②
体育館での練習試合を終えたOGメンバは、僕や栗田それに福島先輩を含める形で商店街にある小料理屋へと移動した。
バスケ部のOB清水さんの実家だ。
「いらっしゃい!」
「清水先輩ご無沙汰っす」
楽しそうに酒を飲むお客で賑わう店内。
栗田が挨拶する先には料理を作る若い男性が居た。
この人が清水さん?
「おぅ栗田久しぶりだな。近くに住んでんだからたまには顔位出せよ」
「すんません。うちもお店忙しくて」
「冗談だよ。奥の団体用の座敷を貸切にしてあるからみんなを案内してくれ」
「はい!ありがとうございます」
と清水先輩に指示された部屋に向かうと奥からOG会に参加していた清水先輩がいつの間にか着替えてカウンターの中へ。
「裕也。お店ありがとうね。私も手伝うよ~」
「ありがとな美玖」
そっか。この2人夫婦なんだな。
ともう1人年配の女性がカウンターの中に入っていった。
「おかえり美玖ちゃん。どうだった久々の高校は」
「はい。凄く楽しかったです」
「そりゃよかった。今日は私が店番してあげるから美玖ちゃんと裕也はバスケ部の皆さんのお相手してあげなさいな」
「え、でも」
「いいのいいの。今日のお客さんは常連客ばかりだし私も飲みながら相手するから」
「はい。ありがとうございますお義母さん」
年配の女性は清水先輩のお母さんか。
家族でお店やってるんだな。
お店の雰囲気も良いし今度取材させてもらおう。
「渋沢!何やってるんだ早く来いよ」
「おぅ悪い栗田」
栗田の待つお店の奥に行くと大小2つの和室があり僕たちは広い方の部屋に案内された。思ったより広く今日の人数くらいなら余裕だ。
靴を脱いで畳に上がり手前のテーブルに座ろうとしたところ、村田先輩に声を掛けられた。
「あ、渋沢君。君はあっちの席ね」
「え、はい・・・って、え!」
村田先輩に指定された奥まったところにあるテーブルには大室が1人で座っていた。
「あ・・・大室」
「渋沢君・・・」
大室は僕の顔を見ると少し顔を赤くして視線をそらしてしまった。
このままじゃ駄目だよな・・・大室の対面に座ると僕は思い切って大室に話しかけた。
「あ、あのさ大室。さっきから僕の事避けてない?何か嫌な事とかしたかな?」
「そ そんなこと無いよ・・・」
「だったらいいんだけど・・・・その・・・もしかしてみんなが言ってる告白に関係してる?」
「ふぇ?こ 告白?ナ ナンノコトカナ」
隠すの下手だぞ大室。。。メチャクチャ動揺してるじゃないか。
でも、だとすると・・・告白の相手は・・・それなら余計にこういうの女性から言わせるのはな。それに僕も・・・・
「大室。明日って時間あるかな?」
「あ 明日?大丈夫だけど・・・・何かあるの?」
「前に・・・大室言ってただろ取材でリバーランド行こうって。
良かったら・・・その明日とかどうかな?」
「え?取材って・・・でも明日休日だし・・・もしかして それって・・・」
「え え~と・・・そう思ってくれても構わないけど・・・僕とじゃ嫌かな?」
「う うん!だ 大丈夫!絶対行く!」
「じゃあ リバーランドの最寄りの川野駅前に10:00でいい?」
「うん大丈夫!!」
「ありがとう。じゃ明日よろしくな」
さっきまで照れてるような困ったような顔してたのに今は凄く嬉しそうな顔をしている。本当大室って表情が豊かだよな。
何だか癒される気がするし、僕も幸せな気分になれる。
「どうした若者!飲んでるか!」
「ちょ!綾子先輩。まだ始まったばかりなのにどんだけ飲んでるんですか!
それに若者って、私1つ下なだけですよ」
「いいの!1つ下でも私より若いんだから」
と村田先輩は急に大室の耳元で顔を寄せ僕にも聞こえる程度の小さな声で囁いた。
「明日は楽しんでらっしゃいよ」
「ふぇ?もしかして聞いてたんですか?」
「ふっ 誰がこの席案内したと思ってるのよ」
そして大室に後ろから抱き着くようにもう一人。
「もちろん私も聞いてましたよ。小春せ~んぱい♪」
「さ 幸ちゃんまで・・・」
「後で結果教えてくださいね♡」
「何だか大変だな大室も・・・」
「うん・・・」
その後、仕事帰りというOBの由良先輩と長谷部先輩も加わり朝まで飲むぞ!という勢いになったんだけど僕と大室は"明日仕事で早いんでしょ?無理しないで今日は帰りなさい”と村田先輩に先に帰された。
仕事じゃないのは知ってるはずなんだけど・・・なんだかんだ言って村田先輩って面倒見がいいし大室の事を気に掛けてるんだな。
「でも、何だか悪かったね。僕が明日誘わなければ先輩方と朝まで飲めたのに」
「だ 大丈夫だよ。綾子先輩や幸ちゃんとはいつでも会えるし他の先輩方も基本地元の人だから。それに・・・・」
「それに?」
「私も・・その・・・明日楽しみだし」
「そ そうか。それなら良かったよ。うん。ありがと」
楽しみとか言ってくれると。素直に嬉しいな。
商店街を抜け川野辺駅前に到着。
「じゃあ明日な。寝坊すんなよ」
「うん。渋沢君こそ」
手を振りながら自動改札を通る大室。
僕は大室の姿が見えなくなるのを待って自宅に向かって歩き出した。
恋愛は・・・正直当分出来ないと思ってたんだけどな・・・
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