第9話 まさかの再会

翌週。

大室とは何事もなかったかのように一緒に仕事をしている。

まぁうちに泊まっただけで実際何もなかったしね。

でも・・・心なしか距離感が前より近くなったというか、僕との会話が増えた気がするんだけど・・・気のせいかな?


「じゃぁ構成はさっき話した通りで大丈夫だよね。

 今回は初版ってことでメインスポンサーの川野辺商店街の特集と堀内さんのインタビュー記事で次号からは商店街のお店の紹介。後は川野辺周辺のスポット紹介や地域振興として学校や公共施設の紹介だな」

「うん。私もだいたい同じようなイメージかな。商店街の方は次取材に行くときに堀内さんのインタビューとあわせて何点か紹介するお店を相談して決めればいいし、学校の方は相良先生や楓先輩に相談すればいいしね」


そうだった。先生方も協力してくれるって言ってたよな。


「そうだね。楓先輩が他の学校の先生にも紹介してくれるって言ってたよね。他の高校とかってあまりよくわからないから心強いよ」

「あ、他の高校で思い出したけど鶴間君って倉北学園卒業でしょ?協力頼めるかもよ。私もバスケ部時代の知り合いが森下学園に居るからちょっと聞いてみる」

「鶴間か。確かにそうだね。聞いてみるよ。森下の方は頼むな」


鶴間か・・・懐かしいな。有坂とは何度か会ったりしてたけど鶴間は最近連絡とってなかったから久々に連絡してみるかな。

そういえば、あいつ栗平とは仲良くしてるのかな?何年か前に連絡したときは喧嘩したとか深刻そうに相談されたけど僕からすれば痴話げんかだよあれは・・・


「あ、周辺スポットは市内ってことで範囲を広げればリバーランドとかも含められるし最近出来た高速のインターチェンジ周辺やサービスエリアのネタも良いかもよ。あ、取材ってことで一緒にリバーランドでも行っちゃう♪」

「なるほど。後は地域の求人情報やイベント情報、スポンサーの広告で紙面を埋める感じだよね?」

「あ~~ リバーランドの事スルーした~~。ひ~ど~い~」


気付かれたか・・・


「そそうだな。取材だもんな。今度一緒に行こうな」

「おっ聞いちゃったからね!約束だよ観覧車とか一緒に乗っちゃうからね!」

「えっ観覧車? っああ。今度な」


観覧車とか・・・デートみたいじゃないかよ。

大室のやつ何考えてるんだ・・・


「まぁ、リバーランドは後で2人の空いてる日を調整するとして、雑誌の方は細かいレイアウトやデザイン、校正は一応専属の担当さんがいるから今度紹介するね。ただ。うちみたいな小さな出版社だと企画、取材、原稿とかは私達がやらなきゃならないから結構大変よ」

「確かにそうだよな。大手なら専門職の人いるだろうからね。でもその分やりがいはありそうだね」


今回発行のタウン誌は、川野辺の駅や川北のバスターミナル、それに商店街等の人が集まるスポットを中心に無料配布冊子として置かれる他に電子版としてネットでも公開される。また電子版は有料会員向けのコンテンツも用意される。またサイトにはブログも用意され電子版と連動で僕も管理人として色々と情報を書き込むことになるそうだ。

正直やることが盛りだくさんだけど一応大室が担当している横川地区のタウン誌も同じ構成で展開しているということでテンプレートはあるので、そのテンプレを参考に対応させてもらう予定だ。

ちなみに横川の時は使えるテンプレートが無くって随分苦労したらしい。


「じゃとりあえず、やること決まったしお昼でも行こうか」

「うんそうだね。あ、お蕎麦の美味しい店あるんだけど行ってみない?」

「おっいいねぇ!」


ということで俺と大室は横川の駅前の飲食店街へと繰り出した。


「結構この辺りは食べ歩いてるのか?」

「うん。引っ越してきたばかりの頃食べ歩いたかな。後は今横川のタウン誌担当してるから色々と情報も入ってくるのよ♪」

「へぇいいな。今度僕にも美味しい店とか紹介してよ」


と目的の蕎麦屋を目指して歩いていたわけだけど・・・僕らが目指していた蕎麦屋さんから知った顔の女性が出てきた。

まさかこんなところで・・・


「え?開成君?」

「か 香苗・・・・・」


確か商社に就職するとか聞いてたけど、仕事中なのかスーツを着て隣には僕たちより少し年上に見える男性が一緒に居た。


「ん?上原さん知り合い?」

「え、あの・・・」

「あ、大学の同級生です。ね。上原さん」

「え、うん。大学で同じゼミで」

「そうなんだ。久しぶりに会ったんだろうし話とかするなら構わないよ。今昼休憩中だし俺はそこらで時間潰してるから」


この人が香苗が好きになった先輩かな・・・確かにカッコいいし優しそうで気も利く大人な感じの人だな。でも・・・


「あ、気を使っていただかなくても大丈夫ですよ。そこまで親しかったわけでもないですし・・・それに僕らは今から昼飯なので」

「おっそうか。話してたら昼飯食べる時間なくなっちゃうもんな」

「はい。ところでお2人の職場もこの近所なんですか?」

「いや僕らの会社は横浜の方だよ。この近所に取引先があって打合せでね。で、その取引先の人に勧められたお蕎麦屋で昼を食べた後ってところだ。」

「じゃあ本当に偶然だったんですね」

「そうだな。あ、食事前に引き留めてしまって悪かったね。じゃ僕らは行くから」


と香苗とその上司らしき男性は駅の方へと歩いていった。

香苗は最初に話したきり俯いて僕の方は見てこなかった。

やっぱり自分が振った相手を前にしたら気まずいよな。


「ねぇ、今の人がもしかして元カノさん?」

「ああ・・・まさかこんなところで会うとは思ってなかったけど」

「だよね。でも綺麗な人だったね。ちなみに・・その・・・まだ好きなの?」

「・・・いや。正直自分の中で整理がついたのかはっきりしてなかったんだけど、今日、香苗の事見ても全然恋愛感情とかはわいてこなかったんだよね。もう吹っ切れたのかもな」

「そ そう♪良かったね!

 あ、お昼休み終わっちゃうから早くお蕎麦食べよ!お腹空いたよ」

「おぅそうだな。初めてのお店だし楽しみだな」


・・・香苗。

もしさっきの男性が新しく好きになった人だとしたら左手の薬指に指輪してた。

結婚してるんじゃないのか?香苗は知らなかったのか?

まぁ今となっては僕に関係ない話かもしれないけど・・・・


ちなみにその後食べた蕎麦は大室お勧めということだけあって凄く美味しかった。

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