第6話 川野辺の町②
「この辺りは変わってないんだね」
「そうだね。駅前とか国道沿いは結構開発が進んだけど、学校の辺りは住宅街だしあんまり変わってないかな」
「渋沢君の家はこの辺りなんだっけ?」
「ああ。うちは高校の少し先だな。川野小学校とか川野天神の近くだよ。大室の実家は川北寄りだったよね?確か栗田と家が近所とか言ってたし」
「うん。北川団地だよ」
「あそこの団地は大きいよな。記事に書いてみる?」
「う~ん。何かネタになるような話題あるかなぁ・・・ちょっと妹にでも聞いてみるよ」
「よろしくな あ、そろそろ高校着くけどとりあえず職員室行く感じ?」
「うん。そうだねまずは校長先生に挨拶かな」
川野辺高校。
僕らが3年間通った高校だ。
この地区では比較的レベル高い進学校だったから、受験こそ大変だったけど楽しい思い出がたくさん詰まった高校だ。
帰宅する学生たちの流れとは逆に校門をくぐると校庭では運動部が部活動に励んでいる。テニス部にサッカー部、後は陸上部かな?
「後でバスケ部も行ってみる?」
「うん。時間があればね。一応OGだし♪」
僕らは守衛さんに取材の旨を伝え職員室へ連絡を入れてもらった。
卒業してから4年も経つし先生方も変わってるんだろうな。
しばらく待っていると職員室の方から2人の女性が歩いてくるのが見えた。
「ああ!!相良先生に楓先輩?」
大室が女性に向かって声を上げた。
相良先生は知ってるけど楓先輩?
「久しぶりね小春ちゃん。"雑誌の取材で卒業生が来てます"って言われて驚いて来たけど、まさか小春ちゃんだとは。隣の人も卒業生よね。確か渋沢君?」
「はい 渋沢です。3年生の時先生のクラスでした。ご無沙汰してます」
相良先生。旧姓小島先生は僕らが3年生の時の担任だ。
親しみやすい先生で生徒から凄く人気があったんだよな。僕らが卒業するタイミングで産休に入るとか聞いてたけど復帰してたんだな。
「取材って言ってたけど2人共同じ職場で働いてるって事?」
「はい。偶然なんですけど」
「あ、渋沢君は今年の新入社員だから私の方が先輩です!」
「へぇそうなんだ。ちなみに写真とかも載っちゃう?今日ってちょっと髪型がイケてないんだけど・・・」
「あっ今日はご挨拶だけなので大丈夫ですよ。それより何で楓先輩が相良先生と一緒に?」
先輩ってことはバスケ部の先輩かな?背も高いし。
「そっか小春ちゃんや瑞樹には特に話してなかったもんね。私も去年からこの高校で先生やってるんだよ。まだまだ下っ端だけどね」
「えぇ~そうなんですか!じゃあバスケ部も先輩が?」
「そ。コーチ兼顧問ってことで指導してるよ。綾ちゃんとか美玖ちゃんも時々顔出してくれてるし今年のバスケ部は強いよ~」
「凄いなぁ~ あ、良かったらそのあたりも今後インタビューさせてください」
「もちろん・・・後、写真撮るときは教えてね。私も・・・もうちょっとおしゃれしてくれるから。流石にジャージ姿は恥ずかしいし」
「了解です。でも・・・あんまり先生方がおしゃれなカッコしてるのも不自然なのでほどほどな感じでお願いしますね」
懐かしい先生方との話の後、校長室に案内してもらいタウン誌の説明と協力のお願いなどをした。
校長先生にはあらかじめ編集長から話は通ってたみたいだけど卒業生が担当記者ということで"出来る限りの協力をさせていただく"と言ってくれた。
ありがたい話だなほんと。
「ねぇまだ時間早いしバスケ部行ってもいいかな?」
「うん。いいんじゃないか。今日は直帰だろ?」
「そだね。後で編集長に電話だけしとこ」
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バスケ部が練習をしている体育館に移動するとボールやバッシュの音が体育館に響き渡っていた。そして、
「そこ!休んでない!集中!」
「「はい!」」
先程の楓先輩が女子バスメンバに大声で指示を出していた。
「さっきの先輩、優しそうな顔してたけど結構スパルタなんだな・・・」
「うん。先輩って当時からストイックだったし結構厳しかったんだよね」
と話をしていると楓先輩が僕らに気付いて近づいてきてくれた。
「あ、2人共来たのね。どう?みんな頑張ってるでしょ」
「はい。スピードもありますし流石ですね。ところで男子は今日部活無いんですか?女子バスしかいないですよね」
そういえば確かに。いつも体育館を半々で使ってたよな。
「あ、男子は倉北学園で合同練習やってるのよ。清水君が仕事の合間にコーチをしてくれてるんだけど、最近は月一で倉北や森下と練習試合も兼ねて練習やっててね。ちなみに女子も森下とは月一で練習をやってるのよ」
「へぇ男子は清水先輩がコーチやってるんですね。それに合同練習ですか何だか面白そうですね」
「実際学校ごとの戦術もあるし教え方も違うから色々と勉強にもなるわよ」
「・・・地区の高校間の親睦とかそういうのも記事として面白そうですね」
「確かにいいかもしれないわね。地域振興にも役立ちそうだし。森下とか倉北の先生に知り合いも居るから声掛けといてあげようか?」
「はい お願いします!」
その後、OGということで女子バスメンバに大室も紹介され、半ば強引に時々練習を見に来ることを約束させられつつ僕たちは懐かしい川野辺高校を後にした。
「何だか懐かしかったな」
「そうだね。先輩にも会えたし何だか高校時代に戻った気分だったよ」
「そうだな。次来るときは取材だな。記事の構成とか考えないとな」
「うん。私もビシバシとスパルタで教えるからね!覚悟してよ~」
「・・・出来れば優しくお願いしたいなぁ~」
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