第4話 友のために
「渋沢君?」
「あっ悪い起こしちゃったか」
ソファに寝ていた大室が起き上がり僕の事を見ている。
首回りが大きく開いたTシャツから見える肩、多分ブラも付けてないその結構大きなふくらみ。そしてショートパンツから見える脚。
ちょっと目のやり場に困るんですが・・・
「起きて大丈夫?飲んでたら急に眠りだしちゃったから。心配したんだよ」
「ああ大丈夫だよ。ちょっと飲み過ぎたのかも。それよりここって大室の家だよな。居酒屋から僕の事運んでくれたんだよね。重かったんじゃないか」
「私の家ってあの居酒屋の近所だったから全然大丈夫だよ。これでも結構鍛えてるしね」
と僕に向かって力こぶをみせる。
いや・・・腕を上げるとシャツの隙間から脇とか胸とか・・・
「め 迷惑かけちゃったな。ありがとう」
「いいよ。気にしないで。それよりさ何でさっきから横向いて話してんの?首でも寝違えた?」
自覚無いのかよ・・・色々見えそうなんだって・・・
「い いやその・・・ちょっと大室の恰好・・・目のやり場に困ってな」
「え?もしかして私が原因?って・・・全然気にしてなかったけど渋沢君って結構エッチだねぇ~ それとも私がエロすぎる?」
「エ エロすぎって・・・」
「でも、そっかぁ渋沢君は私なんかを見て欲情しちゃうんだねぇ~ そっか~」
「って ふ ふつうだろ!薄着の女性と2人きりで部屋にいたら意識するなって方が無茶だろ」
「え?そ そうだよね・・・2人きり・・・なんだよね今。ちょ ちょっと着替えて来るね! あ、覗かないでよ!」
「覗くか!」
と急に顔を赤くして僕が寝ていた部屋に行ってしまった。
なんなんだよあいつは・・・って無防備過ぎるだろ。
着替えて戻ってきた大室は、薄手のブラウスにパンツルックといったカジュアルな服装に着替えてきていた。家の中で着るにはちょっとおしゃれな様にも見えたけど、もしかしたら僕が居ることで気を使ったのかもしれない。
「ど どう?これなら大丈夫でしょ?」
「え?あぁ凄く似合ってるよ」
「え?似合ってる?そ そうありがとう」
何?ちょっと嬉しそうだけど。この答えでよかったよな?
「あ、お腹空いたでしょ。朝ごはん作るかちょっと待ってて」
「え?うん。ありがとう」
台所で朝食の準備を始める大室。
包丁の音と味噌汁の香り・・・何だかいいなぁこういうの。
今考えると香苗の家とか泊ったことなかったよな。
僕の家は実家だったしこういうシチュエーションも無かったな。
やっぱり、香苗にとっては遊びだったのかな僕は・・・・
「渋沢君・・・渋沢君ってば!」
「え?はい なに」
「大丈夫?食事作ったからご飯よそってくれるかな」
「ああゴメン。考え事してた。ご飯ね了解」
と炊飯器を開き、渡されたお茶碗にご飯をよそってテーブルに持っていくと味噌汁に焼き鮭、ほうれん草のお浸しという朝食が出来上がっていた。
「朝から豪華だね」
「ふふ。女子力高いでしょ~ これでも結構料理は得意なのさ!
まぁほうれん草は昨日作った残りものだし鮭も焼いただけだけどね」
「いや、それでも凄いと思うよ。こんな短時間で作ったんだから」
「もしかして惚れちゃった?」
「じゃ いただきま~す」
「あ~スルーした!!ず~る~い~」
・・・いや。なんだよ大室。"惚れちゃった"とかドキドキしただろ。
あいつ何僕にアピールしてるんだ。
駄目だこの流れは、完全に大室のペースだ・・・流れを変えないと。
「そ そういえばさ、そこのテーブルの写真。高2の時のバーベキューの写真だよな。随分懐かしい写真飾ってるんだな」
「・・・・この間ねちょっと昔の写真整理してて・・・何だか懐かしくってね」
「そっか。楽しかったもんなあの頃って」
「うん」
どうしたんだ急に黙り込んで。
写真の話ってもしかして触れちゃまずかったのか?
「渋沢君さぁ 昨日の飲みで有坂君と時々会ってるって言ってたでしょ?」
「ああ。ついこの間も一緒に飲みに行ったけど。それがどうかしたのか?」
「有坂君ってさぁ若菜ちゃんの事まだ憎んでるのかなぁ」
「山下の事? う~ん昨日も言ったけどあんまり踏み込んだ話はしたことはないからなぁ。話してる限り引きずってるとは思うけど、あいつの事だからもう憎んでは無いと思うよ。それがどうかしたのか?」
「・・・この間ね。若菜ちゃんに偶然会ったの」
「山下に?」
「うん。若菜ちゃんもね・・・有坂君のこと引きずってた。有坂君に謝りたいけどそれも出来なくて・・・辛そうだった」
「でもさ、それって自業自得だろ?有坂を裏切ったのは山下だぜ」
「それはそうなんだけど・・・話を聞いてる限り若菜ちゃんももちろん悪いけど、太田君が若菜ちゃんに言い寄ってたみたいで」
「健也が? 確かにあいつとも卒業以来連絡取り合ったりしてないけど・・・でもだからって」
健也が言い寄ったとしてもそれに答えたのは山下なんだし責任が無いとは言えないだろ。
「私もね。何が一番いいのかはわからないし、お節介かもしれないけど若菜ちゃんに有坂君に会う機会だけは作ってあげたいなって」
確かに有坂も今のままじゃな・・・会って話するのが一番か・・・
「・・・だとしたら僕は何をすればいいんだ?」
「協力してくれるの?
だとしたら有坂君の連絡先を教えてくれれば後は私が何とかするよ。高校の時の番号って多分変更してるでしょ?電話しても繋がらなかったから」
僕は黙ってスマホを取り出し大室に有坂の携帯番号を見せた。
「確かに卒業後にあいつ携帯を買い替えて番号が変わったよ。多分当時の仲間で番号を知ってるのは僕と鶴間くらいじゃないかな。
・・・僕も有坂と山下を会わせるのは賛成だけど僕はやっぱり山下の事はまだ許せない。でも有坂が許すって言うなら・・・」
「うん。ありがとう渋沢君」
僕の方を見て笑顔を見せる大室。不覚にも一瞬ドキっとしてしまった。
でも・・・人のためにこんなに動けるなんていい奴だな大室って。
「その・・・なんだ。手伝えることあったら遠慮なく言ってくれよ。有坂は大切な友達だし・・・それに仕事上とは言え大室は大切な相棒だからな」
「ありがとう。頼りにしてるよ相棒さん♪」
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