投稿その27
最近は変化球ばっかり使いすぎて、真純くんとの距離が1ミリも縮まってない。
だから、たまには直球を投げてみよう!
匂わせの直球って言ったら、縦読み。
今までこれを使ってこなかったのは、真純くんがピュアすぎて、縦読みに気がつかないと思うから。
でも大丈夫。今朝の時点で、種を蒔いておいたからね~。
「ねぇ真純くん、縦読みって知ってる?」(直球だな)
「縦読み?なんか聞いたことあるかも」
「ああいうのってどう思う?」
「見つけられたら楽しそうだよね!」
……真純くん、それって謎解き的な興味だよね?
でも興味を引けたみたいで良かった。
よーし!これで今日、縦読みを仕込んだツイートをしたら、気付いてくれるはずだぞ~!
ということでさっそく縦読みツイートにチャレンジしてみた。
「まさかの展開!
すっかり忘れてた!
みかんが机から出てきた!
らっきー!
ぶどうも出てきたらいいな」
……なにこれ!?
本文の意味がわからん!縦読みも直球すぎる!
これじゃ匂わせじゃなくて告白だよ。
うーむ、やってみると意外にムズいな~。
そしたらこんなのはどう?
「すきすき!
きすきす!
だんしの中でも
よんばんめぐらいに好き!」
いちばんじゃないのかい!
しかも縦読みと本文が同じ内容だし!
それに「だ」とか入ってるとキツイな~。
そういう言葉はなるべく使わない方がいいんだろうね。
うーん、なんか笑点の「あいうえお作文」みたいになってきたぞ。
ちょっと楽しいかも。
それじゃもう一声、いってみようか!
「こんしゅうまつの
えいがたのしみだよ
がんばってはやおきするよ
きっとおもしろいから!
きゅうじつなのにありがとう
たくさんいっしょに
いられたらいいね」
お~!なかなかいい出来なんじゃない?
……でもこれじゃ、真純くんに伝わらないかなぁ。
「声が聞きたい?はぁ?誰の?彼氏の?そんなのいつも聞いてんじゃん!」
ってなっちゃいそう。(真純くんはそんなこと言わない)
うーん、困ったな。
あ、だったらシンプルに考えてみよう
「真純」の文字を使えば良いんじゃない?
文字数が少ないから、考える時間も少なくて済むしね。
ということで、結局夜中までかかって投稿したのは、こんな縦読み&匂わせツイート。
「真っすぐで
純粋な
君が好きだよ」
【匂わせポイントその27】これってもう告白じゃない!?さすがに気付くでしょ。
これを読んだら真純くんもきっと
「かおりさんが縦読みに書いているのってボクのこと?
おーまいごっど!
りょうかいです!
さいこうだよ!!
んーたまらん!!
!!!!!!!!」
って、縦読みで絶叫してくれるかもしれない。
翌朝、ドキドキしながら真純くんに声をかけてみた。
「ねえ、真純くん、昨日のツイート読んでくれた?」
「読んだよ。ずいぶんストレートなメッセージだったね!」
「そ、そうかな~」
「彼氏さんも喜んだんじゃない?」
「うーん、そうかな~まだ聞いてないからなぁ~」
「あんなストレートな告白だったら、絶対に伝わってるよ」
んん~真純くん、もしかして……。
「えっと……何か気付かなかった?」
「何かって?何のこと?」
「えっとあの……縦読みとか」
「えっ?そうなの?ぜんぜん気付かなかったよ!」
あー予想通り気付いてなかったか!!
するととつぜん真純くんが、カバンの中をゴソゴソし始めた。
「真純くん?」
「あった!」
手の中にあったのは、真純くんのスマホ!!
「ねぇ香織さん、もう一回ツイート見てもいいかな?」
「や、やっぱりだめ~~!!」
私は真純くんのスマホを取り上げると同時に、自分のスマホを取り出してソッコーでツイートを削除した。
よっしゃあ!!証拠隠滅完了!!
さすがに目の前で本人に読まれるのは恥ずかしすぎる~!!
心臓が止まるかと思った!!
真純くんは何が起こったのかわからず、不思議そうな顔をしていたけど、私が「操作間違えて消しちゃった(テヘペロ)」って言ったら「やっぱり香織さんは面白いなぁ」って笑ってた。
もういい!今日だけは「おもしろ枠」でも許そう!!
……それにしても危なかったなぁ。縦読みはまだまだ早すぎるかも。
自分だけドキドキ度100%!縦読みは恥ずかしすぎて失敗!
【反省点】夜中の勢いは怖い!もう少し練習してから投稿しよう。
真純くんがツイートの文面を覚えていたらヤバいと思って、スマホを返しがてら聞いてみたら、「朝急いで見たから、良いメッセージだなとは思ったけど、細かいところまでは覚えてないよ」だって。
あー良かった。万が一、文面を全部覚えられていたら大変なことになってたよ。
夜中とはいえ、あの3行の完成度に酔いすぎてツイートしちゃった自分が恥ずかしい。
まるで「恋するうさぎとムーンダンス」だよ。
いい?香織、もう一度ちゃんと思い出して。
「匂わせ」はあくまでも「匂わせ」であって、直接言えるなら、とっくに言ってるはずでしょ。
「匂わせ」っていう茨の道を選んだ以上、告白するのはSNSじゃダメ!
いつか自分の口でちゃんと言えるようになるまで頑張ろうね、香織!
(結局恥ずかしくなって駆け込んだトイレの鏡の前で)
「何ぶつぶつ言ってんの香織?」
――クラスメイトに見られた。
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