投稿その25

 隣の席のピュアな男の子、真純くんに振り向いて欲しい!

 なーんて意気込んでいるんだけど、実は最近、悩みがあって……。


 なんかここんとこ“匂わせ彼氏”のキャラ設定がユルい気がするんだよね~。

 その詰めの甘さのせいで失敗してることが多い気がする。


 ということで、これまで投稿してきた彼氏の情報を元に、いま真純くんに伝わっている彼氏像が、どんな人物なのか振り返ってみましょう!


 えっと、過去の投稿によると私の彼氏は……寝顔を撮ってくれて、小説が好きで、流行に敏感で、マリオカートを一緒にやってくれて、優しくてマッチョで筋トレしてて休日はマイクロブタカフェやスパ銭やディズニーシーでデートしてくれて……って、なんじゃこりゃ!

 その場しのぎの設定を盛りすぎて、アクティブなのかインドアなのか、文化系なのか体育会系なのか、女子なのか男子なのか、さっぱり意味がわからん!


 甘い!キャラ設定が甘々すぎる~!

 ……けど、どうやって修正したらいいんだ?

 うーん、男子とまともに会話したことがないから、私にとってどんな男子が理想的なのかよくわからん。


 だったらということで、目をつぶって理想の彼氏の姿を思い浮かべてみた……


 あぁ~やっぱりみなさんの予想通り、真純くんの顔しか浮かんでこないよ!

 だめだこりゃ!


 でもなぁ~今までの設定を全部撤回するわけにはいかないからなぁ~少しずつ軌道修正してみようか。


 まずは文化系と体育会系だけど「部活で試合」みたいなことを匂わせたことがあるから、体育会系で攻めよう。


 部活は何部にしようかな……。

 今後、小道具を使った匂わせをしていくことも考えたら……道具の少ないスポーツにしよう!

 剣道とかアイスホッケーとかアメフトとか道具が高すぎてJKには予算的にムリだもんね。


 だとしたら水泳とか格闘技なら道具が少なくていいかな……。

 でも「応援」って感じは匂わせづらいなぁ。

 水泳の応援ってどうするんだろう?水着を振るわけにもいかないよなぁ。


 あ!“応援感”出すならアレじゃない?

 サッカー!!

 サッカー部なら休日に試合を応援しに行くのも変じゃないし。


 ということで、さっそく軌道修正!

 さりげなくサッカーボールを持って、ユニフォームを着て、フェイスペイントをした“匂わせ写真”をインスタにアップした。


「今週は試合だね!気合い入れて応援するよ!#予選突破 #あと1勝」


 【匂わせポイントその25】「これで彼氏がサッカー部じゃなかったら嘘だろ」匂わせ!


 これを見たら真純くんもさすがに「彼氏さんサッカー部だったんだ。まさっかーとは思っていたけど!きっと顔立ちもシューットした感じなのかな?うらやましすぎてレッドカード!恋のスタジアムから退場してくれ!」なんて、オーバーヘッド告白してきちゃうかも!(なんだそりゃ)


 翌朝、真純くんにインスタを見たか聞いてみた。

「見た見た!フェイスペイントかっこ良かったよ!」

 おぉ!もしかして、恋のキックオフ、始まっちゃった?

「それにしても、香織さんの彼氏さんって、日本代表だったんだね!」

「……はぁ!?」

「だって、日の丸のフェイスペイントに、青地に肩から三本線のユニフォームでしょ。あれって日本代表だよね!」

「えっとえっと……」

 し、しまったぁ!テキトーに「サッカー フェイスペイント」でググった画像を参考にしたらこんな目に……

 もっとサッカーのことを予習しておくんだった!

「彼氏さん、高校生なんだよね?すごいな~!もう日本代表に選ばれてるんだ!」

「ま、まぁそんな感じ!?」

「そんなにすごい選手なのに、週末はサッカーの練習だけじゃなくて、デートもしてくれるんだね!」

「そうなの!余裕があるの!文武両道?一石二鳥?才色兼備?……じゃなくてなんだっけ?」

「泰然自若?」

「そう!それかも!わかんないけどそれでいいや!」

 よし、話が逸れそうだ!このままサッカーの話題を切り上げるぞ!

「でも香織さんがあのインスタをアップしたってことは、今週末に日本代表の試合があるってことだよね?」

 あ、戻っちゃった。

「そうなのかな~そんな気がするかもなぁ」

 本当に試合あるのかな?よくわかんないから適当に答えちゃったけど。

 そんなの調べようがないと思うんけどなぁ……。


 するととつぜん真純くんは、遠くで友達と話している寛太くんを呼び出した。

「おーい寛太!今週って日本代表のユースの試合あったっけ?」

「えっ!?なんで寛太くんに聞くの!?」

「だって寛太が所属してるクラブチームの仲間が日本代表の選手なんだよ。たぶん香織さんの彼氏さんと同じチームなんじゃないかな」

「あわわわわわ~」

 ちょっと!予想外のカウンターなんだけど!

 これはまずい!嘘がバレちゃう!

「真純くん!お願い!恥ずかしいから彼氏のことはナイショにしといて!」

「あ、そうか!ごめん、気が付かなかったよ。寛太~!やっぱり大丈夫~!」

 真純くんがすぐに寛太くんのことを止めてくれたおかげで、寛太くんはそのまま元いた友達のところに戻っていった。

 ――私、香織ことJKのGKは、真純くんのカウンターからのロングシュートをなんとか止めることに成功した!


 サッカー理解度10%!匂わせ失敗!


 【反省点】前回に続き2回連続でシミュレーション甘すぎ問題!反省せよ!


 ちょっとさ、これはもう、帰りにノートを買って、彼氏のプロフィールを練り直さないといけないレベルだよ。

 まさっかー高校生にも日本代表がいたなんてね~(そこから!?)

 付け焼き刃は危険だよ。もっとちゃんと勉強しないと!


 そして完璧に匂わせて、いつか真純くんにも恋のサイドチェンジからのキラーパス送っちゃうからね!

 ……などと、反省して5秒後に付け焼き刃。

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