投稿その16

 真純くんとUSJに行きた~い!!

 ミニオンが大好きな真純くんと一緒に、USJのミニオン・パークに行きた~い!!


 ということで、ずっと先延ばしにしていたバイト探しを本格的に始めることにしました。

 最初はね「頑張るぞ~!」って張り切っていたんだけど……


 「せっかくだから大好きなディズニーリゾートでバイトしたい!」と思って、ウチから舞浜までの移動時間を検索したんだけど、1時間半以上かかることが判明!

 わずか1分で、心がポキッと折れちゃいました。

 な~んか、バイトで往復3時間はちょっとね~。その分バイトした方がコスパが良さそうだし。

 ってことで、近所でバイト探しをすることにしました。


 それにしても、バイトってどうやって探すんだろう?

 コンビニとかスーパーとかの窓に「バイト募集」って貼ってあるのを見たことがあるけど、私、お金の計算とか苦手だからなぁ。他には無いのかな?

 できれば偶然、真純くんと会っちゃったりするようなバイトがいいんだけど……本屋とか、ラウンドワンとかかな?


 ……あ、待って!バイト中にいきなり真純くんが来店!なんてことになったら、ドキドキが止まらなくなって仕事にならないよ!

 だとしたら、真純くんに会わないバイトの方がいいよね。

 ……どこかの工場とか、倉庫とか?

 でもそういうバイトって、私みたいなひ弱な女子にもできるのかな……


 迷っていても答えが出ないので、翌朝、真純くんに直接聞いてみることにした。

「ねぇ真純くんって、普段お出かけするときはどこに行くの?」

「えっ?近所のスーパーとかコンビニにはよく行くよ」

 ふむふむ、その2つはナシだな。

「あとは本屋にもよく行くかなぁ」

 うん、だいたい予想通りだ。

「あとはね、イオンモール」

 あちゃ~!これでかなり選択肢が減っちゃったよ。イオンモールはお店がたくさんあるからね!

「あとホームセンターにもよく行くかな。他にもゲオとかツタヤとか、業務スーパーとかダイソーとかセリアとか、たまに家族でIKEAとかコストコにも行くかなぁ……」

 おい!止まらないな!

「あとはね……」

 と、止めないと!

「そ、そうなんだ~いろんなとこ行くんだね!」

「うん。お金はないんだけどね、出かけるのは好きなんだ」

「それじゃさ、ラウンドワンとか遊園地は?」

「あんまり友達が多い方じゃないからめったに行かないかな~。ゲーセンはたまに行くかも」


 ……これは困った。近所の小売店はほぼ全滅だ。

 ラウンドワンとかアミューズメント施設も厳しいかな~。

 やっぱり工場か倉庫かな~と思ったけど、それこそどうやってバイトを募集しているんだろう?

 バイトに関しては、わからないことが多すぎるから、あとでクラスのみんなに聞いてみようかな~。


 ――と、ちょっと意識が飛んでいた私を、現実世界の真純くんが不思議そうな目で見ていた。

「ねぇ香織さん、さっきからなんで、ボクがどこに行くか聞いてくるの?」

「え、えーっとね、それは……」

 うぅ……確かにそうだよね。でも本当のことは伝えにくいなぁ。

「えっとね、そうそう!今度の週末どこに行こうかな~って、参考にしようかな~って」

「えっ?ボクが行くところを聞いて、何か参考になるの?」

「あの……その……バイトの参考にしようと思って」

 あ~ホントのこと言っちゃった!私、嘘をつけない体質なんだよね~。

「うーん、やっぱりよくわからないんだけど、週末行くところと、バイトと、ボクが行くところに何か関係があるの?」

 なんかもう!グイグイくるな~!

「あの……その……うーんと……男子高校生がほとんど来ないお店を探しているというか……ごにょごにょ」

「あぁ!なるほどね!」

 真純くんが手を叩いた。いったい何に納得したの!?

「なるほど~!男子との出会いがあると彼氏さんが焼きもち焼いちゃうからだね!もう~香織さんは彼氏さん思いだなぁ」

「えへへ、そうなの~!!」

 よっしゃ!そういうことにしておこう!


 そんなこんなで、その日の夜はバイト探しに夢中になりすぎて“匂わせ”に力を入れられなかった。

 それでも私、頑張ってツイッターに投稿したよ!真夜中にこんな「匂わせツイート」をね!

「夜中までバイト探し!USJ行こうね #いっしょにね」


 【匂わせポイントその16】忙しさも味方にして「あなたのために頑張る私」匂わせ!


 こんな健気な私のツイートを見たら、きっと真純くんも「彼氏じゃなくてボクと行ったら「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」で“恋の魔法”をかけて、「ミニオン・パーク」でハチャメチャに愛してあげるのに!」なんて思うかも知れない!(長いよ!)


 翌朝、真純くんにツイッターを見たか聞いてみた。

「USJか~。よく知らないんだよね」

「えっ!?そうなの?」

「うん。知らないなぁ」

「だって、真純くん、ミニオンズの文房具使ってたよね?」

「ノートと鉛筆のこと?あれはね、文房具の福袋に入っていたんだ」

「そ、そうなの~!?」

 私ったら、また妄想が暴走して、ミニオンが好きだからUSJも好きなんだって勝手に思いこんでた!

 確かに思い返してみれば真純くん、そんなことひとことも言ってなかったかも……。

「えっと……USA、じゃなくてUFJじゃなくて、なんだっけ?その……忘れちゃった!」

 なんと!そこまで興味ないんか!見事な追い打ちで、香織さん、完全敗北です。


 ……むむっ、待てよ。もしかして今どきの男子高校生ってみんな、こんな感じなのか?

 そういえばあのときも真純くん「ジェラトーニ」と「ステラ・ルー」のこと知らなかったもんな~。

 ――いやそれ以前に、そもそもUSJに興味が無いってことは、ここ数日のバイト探しってなんだったんだ?

 「バイトするのはキミのせい」だったのに!

 私の時間を返せ~!!


 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】男子高校生の認知度調査は急務!


 もしかして今回って、いろいろ探りを入れてただけで、恋もバイトも何ひとつ進展してないよね?

 結局USJに行く理由が無くなっちゃったんで、バイト探しはいったんストップ。

 バイト自体には興味あるんだけどなぁ。でもそれより先に、女子と男子の認知度のギャップを調べることが必要だね!

 ということで次回は、男子高校生のドッキドキ生態調査~!

 震えて待ってなさい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る