投稿その15

 どうも私は料理下手と思われているフシがある。

 前にピクニックの写真をアップしたときも、イオンで買ったお惣菜だったでしょ。


 でも実際のところは、下手でもなく、上手いわけでもなく……普通なんだよね。

 これいちばん困るよね。下手だったら下手で、まだカワイイと思ってもらえたり、教えてもらったりできる可能性もあるけど、普通って……。

 実際に料理の本を見たら普通に作れるけど、それ以上でもそれ以下でもない。

 上手に盛り付けやアレンジもできるわけじゃないんで、まさに普通オブ普通。話も広がらないんですよ。


 だから私は、せめて自分で「料理上手」と言えるぐらいの自信をつけたい。

 でもそれにはどうしたらいいんだ?お母さんも普通だし、友達も……

 あ、花ちゃんなら料理できそうな気がする。できる子だからね、あの子は。

 ちょっとLINEしてみよう。


香『花ちゃん、料理得意?』

花『とつぜんだね』

花『普通かな』

 うーん、普通か。普通って人によるからわかんないなぁ。


香『作った料理の写真ある?』

花『(♪シュポ)』

 すぐに写真が送られてきた。さすが花ちゃん、できる子だね!

 送られてきた写真には……えっと~なんだこりゃ?

 お皿の真ん中に黄色いご飯が丸く盛られていて、そのまわりにカレーっぽい汁?と、細かく切られたカラフルな野菜?っぽいもの。

 ……なんだろう?色はカレーっぽいけどなぁ。この料理はウチじゃ見たこと無いよ。

 うーん、なんて返したらいいんだ?

 よし!困った時は「無難」だ。難が無いと書いて無難だからね。


香『すごいね!』

 えへへ、どうです?無難でしょ。


花『カレーだよ』

 カレー?私の知ってるカレーとぜんぜん違うぞ。

 カレーってこんなに華麗なのか?と、ひと笑いとれたところで(とれたの?)


香『何カレー?』

花『スパイスカレーだよ』

香『こんど作り方教えて!』

花『いいよ』


 ……あ、その前にこれ聞くの忘れてた。

香『作るの難しい?』 

花『スパイスの調合がちょっと難しかったよ』

香『そうなんだ!おつカレー』

 ――そう送ったら返事が来なくなった。


 翌日、学校で花ちゃんから料理を教えてもらう約束をした。

 金曜日の放課後、花ちゃんの家でスパイスカレーの作り方を教えてもらうことになった。

 さりげなく「昨日のLINEの最後って怒っちゃたの?」って聞いたら、ただ寝落ちしただけってことで安心したよ。


 ――でも、ここまでしてもらったのにごめんね、花ちゃん。

 このカレー“匂わせ”のために使わせてください!!


 花ちゃんが作った、と~っても華麗なカレーをそのまま使うのは、さすがに人としてやってはいけません。

 なのでさすがの私も、自分で作ったカレーの方をインスタにアップしたよ。

 もちろん花ちゃんのカレーもチラ見せしてね。


「カレー作った!一緒に食べたよ #おいしかったね」


 【匂わせポイントその15】友達と作ったカレーを“匂わせ用”にリユース!


 事情を知らない真純くんには彼氏と作ったと思わせて、事情を知ってる花ちゃんには感謝を伝える、一石二鳥の匂わせインスタ!

 これを見た真純くんはきっと「こんな料理上手な彼女がいてカレー氏さんも「辛せ」じゃなかった「幸せ」だね!」なんて思っちゃうかも知れない。

 (「辛」と「幸」は似ている)


 翌朝、さっそく真純くんにインスタを見たか聞いてみた。

「あのカレー、美味しそうだね!」

「そうでしょ!そうでしょ!スパイスカレーって言うんだよ」

「スパイスカレーか~。すごいね!」

「へへーん、こう見えても料理上手なんだよ~」

 おっと、自分で言っちゃった。

「確かに上手……」

「あー!かおりんおはよー!」

「は、花ちゃん!」

 なんと!真純くんとのハッピーターンに花ちゃんがカットインしてきた!

「インスタ見たよ!カレー美味しそうだったね!教えた甲斐あったよ」

「は、花ちゃん!それは……」

 ま、まずい!まさかの「匂わせバレ」か?

「へぇ~知らなかった!花ちゃんさんも香織さんのインスタ見てるんだ」

 えっ?真純くん、そっちに食いつく!?

「見てるよ~、かおりんのインスタって、いっつも彼氏さんと仲良さそうなんだよね~!」

「あーわかるわかる~!彼氏さんとの仲の良さ、すっごく伝わってくるよね~!」

「ね~!」

 こらこら!二人が意気投合してどうすんだ!


 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】花ちゃんの乱入には気をつけろ!


 これまで花ちゃんが、私と真純くんとのハッピーターン(←さっきからそれ何?)に割り込んでくることはなかったんだけどなぁ。

 結局そのあとは花ちゃんの「スパイスカレーの作り方講座」になっちゃって、真純くんと「三人」で盛り上がったよ。

 ま、それはそれで楽しかったけどさ。

 今回は「匂わせバレ」しやしないかと、ちょっと「ピリッ」としたよ。スパイスだけにね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る