投稿その12
中学生の弟から「ゲームの対戦相手がいないから遊ぼう」と言われた。
たまには家族サービス?で付き合ってあげるか。
対戦するゲームは「ニンテンドースイッチ」の「マリオカート」。
弟といい勝負になるゲームってこれくらいしか無いんだよね。だから私から指定した。
格闘系なんてぜんぜんダメだし、負けたら負けたで悔しくて、弟に本物のパンチが炸裂しちゃうからね。
リビングにあるテレビでマリオカートをやりはじめたら、そこそこ盛り上がった。……ごめん嘘。めっちゃ盛り上がった。大興奮だった。
やっぱ身内相手だとやりたい放題できるから楽しいよね!あー、ストレス解消!!
お母さんも姉弟が盛り上がってるのを見て、こっそりスマホで写真を撮ってたみたい。
――んん?ちょっと待てよ。その写真、使えるんじゃないか?
お母さんに写真を見せてもらうと、うまい具合に弟の手しか写ってない写真があった。
それ以外にもお母さんは姉弟が仲良く遊んでるのが嬉しかったみたいで、20枚ぐらい隠し撮りしてた。それはちょっと引いたけど。
さっそく写真をお母さんに送ってもらって、インスタにアップした。
「ひさしぶりにゲーム!負けまくったけど盛り上がった!#マリオカート」
【匂わせポイントその12】2画面分割&男の人の手も見せて「対戦プレイ匂わせ」!
マリオカートの「2人対戦プレイ」って、縦に2画面になるでしょ。
これって真純くんに「彼氏(架空)と遊んでるのかな~」って匂わせられるよね。
ゲーム好きな真純くんなら、絶対に気付いてくれるはず!
しかも「負けまくった」ってコメントで、ゲームが得意じゃないことにも気付いてくれるはず。
そしたら真純くんから「ボクが手とり、足とり、コントローラーとり、教えてあげるかーと」って言われちゃうかも。(最後の「かーと」はマリオカートにかけてるらしい)
翌朝、真純くんにインスタの感想を聞いてみた。
「香織さんって、マリオカートやるんだね」
おぉ!なんか嬉しそうだぞ。
「ま、たまにね~」
「対戦って盛り上がるよね~」
「そうなのそうなの!負けまくったんだけどね~」
さぁ来い!真純くん!「ボクが教えるかーと」って言うんだ!
「ボク、マリオカートやったことないから、やったらヘタなんだろうなぁ」
うぉ!想定外!まさかマリオカートやったことないなんて!
「それじゃ真純くんは普段はどんなゲームやってるの?」
答えによっては、私の家に誘って一緒にゲームやるなんて流れに持ち込めるかも!
「えっと、ボク、スマホのゲームしかやらないんだよね」
「うへぇ~、そ、そうなんだ!」
スイッチとかプレステとかのゲームを予想してたから、ちょっとコケそうになったけど、大丈夫!私ならいける!私なら話を広げられるはずだ!
「そしたらさ、どんなスマホゲーやってんの?」
「えっと……香織さん知ってるかな~「ナンプレ」っていうゲームなんだけど」
ナンプレ?何プレー?なにそれ?
「ちょっとわかんない」
「あのね「ナンプレ」って3×3の9個のマスを1ブロックとして、それが3×3の9ブロックあって、1から9までの数字をタテ・ヨコ・ナナメにかぶらないように入れていくゲームなんだけど……」
「じ、地味……じゃなくて、なんかインテリジェンスが高そうなゲームだね」
「オンラインのゲームじゃないからさ、ひとりで黙々とマスを埋めていくんだ」
「地……じゃなくて、それじゃ対戦はできなさそうだね……」
「そうだね。オンライン対戦が無いなんて、今っぽくはないよね」
うぅーなんとか褒めたいんだけど……褒めどころが全く浮かんでこないぞ。
「でもね「ナンプレ」って、スティーブ・ジョブズが好きだった「禅」に通じるものがあるというか、数字に集中することで心が落ち着いて行く気がするというか……」
「は、はぁ……」
「最高レベルの「地獄級」を5分以内にクリアした時なんて、無から有、静から動へのカタルシスがすごくて、思わずガッツポーズしちゃうぐらいなんだよ」
真純くんのガッツポーズ、見てみたいけど……。
「……そ、そっか、頑張ってね!」
ごめん真純くん!私には高尚すぎて無理だ!
「ト、トイレ行くね」
――話についていけなくなった私は、慌ててトイレへ駆け込んで、シクシクと泣いた。
会話のグルーヴ度0%!匂わせ失敗!
【反省点】まさかの逃亡!みんながマリカーをやってると思ったら大間違い!
うーん、今後はゲーム関連の匂わせはやめておこう。真純くんが別の宇宙に行ってしまうから。
ただひとつわかったのは、真純くんも嬉しければガッツポーズをするってことだ。
ずーっと落ち着いた感じの男の子かと思ったけど、そういう瞬間もあるんだね。
いつか協力プレイのゲームを一緒にやって、ハイタッチとかしちゃう日が来たらいいな。
……それにしても「カタルシス」ってなんだ?
カルシウム豊富な乳製品? 小林製薬の肩こりを和らげる薬?
ま、使いどころがわかんないから忘れよう。
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