私は家の中のリビングに連れて行かれ、布製の3人掛けソファに座らせられる。

 女性は何やら、工具箱のような黒いプラスチック製の箱の中を漁っている。

 そして、カメラのメモリより小さい、ICチップらしきものを見つけ出し、私の方へ足を運んだ。



 明らかに……、人間とは思えない威圧感。

 身体が大きいからだけではない、謎の要因。


 そして、いきなり私の頭部を掴み、力を入れた。


「いっ………」


 ……爪を立てられているにも関わらず、不思議と、痛くない。


 徐々に、傷がつくられる感覚が大きくなる。頭皮が特定の部分のみ裂け、次に頭蓋骨にヒビが入ったような、軽い音が鳴った。

 –––––正に今、頭蓋骨を割っているんだ。この、怪力の持ち主は。

 私の脳を見て、血を軽く浴びてるんだ。それでもなお、動揺しない事には頭が下がる。

 オカルトチックなものは好きだけど、グロい系は好みじゃない。

 ……なんで? もしかして、私を喰べるとか……。


 あり得る。


「……よし、終わり。傷もそのうち塞ぐでしょ」


 ……足掻こうとする前に、終わってしまった。

 自分のノロマさを恨みたい一瞬だった。


 廊下から、誰かが来る気配がした。


「お、記憶戻った? 兄さん」


 は……? 兄さん…?

 ちょっと、誰の事を言って……。


 横目で見ると、ぱっと見、小4くらいのチビな女の子。

 しかし、チビだと思った瞬間、鋭い視線と大量の殺気。

 すぐさま視線を逸らした。


「あ、まさか主記憶媒体メインメモリも失くした? 自分のこと、わかってる?」


主記憶媒体メインメモリ……、あっ、確認してなかった! じゃあもう一度……」


「ひゃあ、止めて……」


 はっ。つい声を出してしまった……。


「やっぱり壊れてるじゃん…」


「一から思い出させるしかないみたいね……。よいしょ」


女性の周囲に、何かキラキラした金粉が飛んで、なんか……、若返った。


……若返った!?


なになに!? なにこの世界パラレルワールド!?

魔法もアリなんて聞いてないよ!?


「おかーさん、なんで若返ってんの……」


「えー? 駄目?」


「いや別に駄目と言っている訳じゃ……、ん? 兄さん、なにそんな間抜けた表情かおしてんの?」


え、私、間抜けた顔してんの? うっわ、恥ずかし……。


……ん? “兄さん”?

ということは……、うっそ!


いやでも、男子特有の持ち物は無かったし……、もしかして、身体は女子でも本能は男子?

うーむ……、紛らわしい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る