普通の街並みと、普通に行き違う人々。

 そこに、私が、見知らぬ一軒家の門の前に立っている。

 そうだ–––––。私、転生したんだっけ。

 それにしても……、ここ、どこ?

 でも、何か見覚えあるような……。でも、パラレルワールドって、あの女神様言ってたもんね……。だったら来た事無いはず……。


 取り敢えず、私は勝手に人の家の庭に入る。結構抵抗ある方だ。

 庭には、雑草が所々生えていて、サボテンや観葉植物が並んでいる。この後が異常。穴ぼこの人型の的らしき板や、ナイフが数本突き刺さっている樹木が佇んでいるが、何故か不気味に思わない。思わないんじゃなくて、思えないんだ。

 そのまま奥まで歩いて、自分の姿が反射する窓ガラスを横目で見ると、明らかに別人の人間が居たけど、他には誰も居ないし、これが転生後の自分の姿だと自覚。


 でも……、これ、男子……?いや、身体付きから見て女子でしょう。

 良かったぁ……。男子だったらもう一度人生やり直したい……。



 ぱっと見は男子っぽい。でも、髪の毛を長くしたら女子に見えるかも……。

 黒い、癖が強いセミロングの髪の毛、前髪も目に掛かって見えづらい。人形のような透き通った白い肌に、所々火傷とか、謎の傷痕。勿体無いな……。目はパッチリ二重で、黒目が白目より大きい。背丈は140cmくらいかな。筋肉質っていう訳でもなさそうだし、そんなにガリじゃない。寧ろ、チビの方が似合ってる気がする。

 服装は、白い薄手のパーカーに、五部丈のパンツ。上下も動きやすい服装だけど、靴はスニーカーで、新品なのか、重くて上手く歩けない。


 窓ガラスの前で髪の毛をいじっていると、家の中から誰か出て来た。

 本人に直々に言ったら失礼だけど、一見ふくよかな女性。

 私の事を見つけるなり、ズカズカとこちらに向かってくる。

 一瞬逃げようと脳が命じたが、実行する前に女性が掴みかかって来る方が早かった。

 そして、


依生イオ、何処行ってたの?

 ……まさか、また記憶媒体メモリ落としたの?」


 と、厳しいようで甘い声。


 訳も分からず突っ立っていると、女性は一つ溜め息を吐き、


「ほら、れおん君と遊んで来たんでしょう? ……とにかく、中に入りなさい」


 れおん君? メモリ?

 何が何だかさっぱりわからない……。



 ……もう、とにかく、なるようになれ!

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