ふかふかの雲……。気持ち良く降り注ぐ柔らかい日光は、緊張した身体をほぐさせ、女性の怒鳴り声が……。


 ……ん? 怒鳴り声…?


 そうだった……。私は殺されたんだっけ……。

 そんで、見知らぬ場所に寝っ転がっていたと。


「…起きなさいッ! いつまで寝転がってグータラしてるのッ!?」


「えッ、…うわぁっ! すすすすみません……!」


 突然、御叱りの声が飛んで、驚き桃の木山椒の木…。


「わかればいいの、わかれば……。どっこいせ。アンタ、私の事知ってる?」


 …何だ、このひと? いきなり叱っておいて、自分の事を知ってるかなんて偉そうに…。


 そんなことをなんとなく思っていると、女の人の額に、青筋が一本…。

 成程、この方は思考が読めるらしい。

 それに、なんか、服装が神話に出てくる女神様が着ている装備と似てる…。

 もしかして、本物の女神様とか? いやいや、そんなわけ……ある!


「フフフ……、やっと実感出来た?

 いかにも、私は女神クロ―トーよ!」


 女神クロ―トー……。なーんか聞いた事有るような無いような……?


「えっとねぇ、私、貴女に謝らなきゃいけないの。

 西暦2020年の3月26日、貴女、通りすがりの強盗に殺されたじゃない? あれ、私のミスなの。貴女の運命の糸を紡いでいる時にね、短くプツンって切れちゃったの。

 申し訳ないけど、転生させるから、そこんとこヨロシクね」


 か……軽い。

神様ってこんなに軽いんか…?


「ちょっと待って下さい…!

前世の記憶って……持ったまま転生することは出来ないんですか?」


「んー? 出来なくはないけど……、中途半端な所でしか転生出来ないわよ? 例えば、母親の胎内からとか、もうすぐ天に召されそうな老人とか……」


「だったら無しでお願いしますッ!」


特に最後の選択肢、嫌だ!


「じゃあ、一眠りして貰うわね。あ、転生先は分からないことが有ったら、私がフォローするから安心してね。

それじゃ、行ってらっしゃーい」


また雲の上に寝転がるのは嫌気が差したけど、私は大人しく眠りに就くことにした……。

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