拍手 148 二百四十五「スンザーナの依頼」の辺り
「パーラギリアが襲撃されるですって!?」
周辺諸国から戻ったばかりのスンザーナにもたらされた情報は、大変衝撃的なものだった。
パーラギリアはシーリザニアの縁戚国と言ってもいい。昔から王家にも貴族家にもお互いの血が入り、つい三代前のパーラギリア王家にも、シーリザニアの王女が嫁いでいる。
そのパーラギリアが、シーリザニア同様異端管理局によって襲撃されるなど、あってはならない。
縁戚国だからという理由だけではなかった。パーラギリアはシーリザニアに次いで反教皇派を掲げる大国なのだ。パーラギリアの顔色を窺う周辺小国郡も多い。
ここで異端管理局にパーラギリアが屈してしまっては、周辺諸国による聖国への包囲網が瓦解しかねなかった。
何としても、パーラギリアには反教皇派でいてもらわなくては。そして、異端管理局の襲撃を防がなくては。
だが、残念な事にスンザーナにはたいした力はない。今もシーリザニアの新女王として振る舞ってはいるものの、国土はまだ回復せず、国民は未だに協力者の厚意にに縋っている状態だ。
そこで、スンザーナは思い出す。そうだ、自分には出来ない事でも、協力者ならば出来るのでは。
向こうにとっても、スンザーナは捨てたくない駒のようだ。それについては自覚がある。駒でも何でもいい、向こうがこちらを利用しようというのなら、こちらも向こうを利用するまでだ。
逆に、完全な厚意からの行動だけならば、甘え続ける訳にはいかない。お互いに利益が見込めるからこそ、助けるし助けられているのだから。
スンザーナはその思いを胸に、ティザーベルの元を訪れた。
無事、彼女の願いは聞き届けられた。大分怪しい交渉だったと思うけれど、最終的には打倒教皇で考えがまとまっているところも大きい。
クリール教を全て否定する気はないけれど、今の自分達に合わせて変えるべきところは変えてもいいと思っている。
その為には、厳格な教えを強要する教皇派は、邪魔でしかない。その思いは、教皇庁内、ひいては教会組織内にも連綿と受け継がれていると聞く。
今こそが、古きものを打ち壊す好機なのだ。スンザーナは自分と自分を信じる者達を信じて、己の道を突き進む。
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