拍手 146 二百四十三「異端管理局長」の辺り

「おおい、どうしよう……」

「何だよ?」

「異端管理局員に槍向けちゃったよ……」

「仕方ないだろ? 仕事なんだから」

「でもよお」

「向こうだって、何も言わなかったじゃないか」

「後から難癖つけてくるかもしれないだろ!?」

「んじゃ、難癖つけられるまでは問題なしっと」

「ええええ!?」

「ほら、俺は今日の報告書を書かなきゃならないんだから、愚痴は余所でやってくれ」

「だって、他に話聞いてくれる奴、いないし」

「寂しい奴だなあ」

「俺、田舎から出て来たばっかりだからよう……」

「すぐ慣れるって」

「なあ、異端管理局員って、噂通り怖いのか?」

「局員はそうでもねえよ。本当に怖いのは、上位局員の審問官の方だ」

「どう違うんだよ?」

「さっきもちらっと言ったけどな、局員ってのは下位局員って言って、俺らと変わらない仕事をしてるのが殆ど。で、上位局員は審問官と呼ばれていて、異端者を狩ったりしているのはこの人達」

「じゃあ、さっき槍向けちゃったのは、局員?」

「いや、あの人は審問官」

「まずいじゃないかあ!」

「大丈夫だって。あの人は話のわかる人だから。この間殉職したっていう審問官に比べりゃあな」

「……そんなに、怖い人?」

「怖い人っていうか、ヤバい奴」

「ヤバいって……?」

「人殺しを楽しむんだよ。異端者の事も、なるべく苦しみが長引くように殺す」

「ひいいいい」

「でもな、それは教義の中にもちゃんとあるんだよ。現世で苦しみの中罪をすすげば、天国への門が開けるってな」

「……異端者って、そんなに罪深いんだ」

「そりゃそうだ。何せ、神の教えに従わないんだからな」

「そっか……そうだよな……」

「ほら、もういいか。報告書は明日の朝までに提出しないとダメなんだよ」

「あ、うん。じゃあな」

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