拍手 144 二百四十一「入り口の変更」の辺り

△日

 やっと三番都市のある山へと来た。これを登るのかと見上げていると、ベル殿は車に戻れと言う。

 そのまま、車で山を登っていった。いや、自分でも何を言っているのかと思うけれど、本当の事なんだ。

 木の上を、まるで滑るように進む車。車とは、空中も移動出来るのか。凄い乗り物なのだな。さすがは古代の技術の結晶だ。

 三番都市では、やはり罠が多かったそうだ。探ったり解除したりが面倒だと、ベル殿が愚痴っていた。

 そういえば、三番都市の支援型は、これまで見てきた支援型とは少し異なる外見だ。今までの支援型は皆長い髪をしていたが、三番都市の支援型、ニルウォレアは短い髪で、まるで男の子のようだ。

 着ているものも、裾の長い衣服ではなく、裾が短くベル殿曰く「半ズボン」とやら言う衣服らしい。やはり男の子が着る事が多い服装だそうで、ベル殿は「マニッシュだなあ」と言っていた。まにっしゅ……とは、そのまま少年っぽいという意味らしい。

 ともかく、これでまずはこの地方での一つ目の都市の再起動が完了した。めでたい事だ。


 □日

 十一番都市の支援型は、また変わった娘だった。こちらも髪が短いが、ニルウォレアとはまた違う傾向だ。ふわふわとした髪は綿毛のようで、ちょっと触りたくなる。

 ベル殿は小声で「今度はアイドル路線?」と呟いていたけれど、あいどる、とは何だろうか。聞いてもうまく説明出来ないとはぐらかされたのだが。

 とにかく態度が大きな支援型だが、ニルウォレアには敵わないらしく、彼女に叱られておとなしくなっていた。

 十一番都市の再起動後、ベル殿の疲労が酷くなっていたので、次の都市へ向かう前に休養期間を取る事になった。ベル殿の体が心配だ。

 本人は、休めば問題ないと言っているけれど、本当だろうか。


 ◇日

 本日から休養日だ。ベル殿は単独行動を取ると宣言しているので、私はどうしようか。手持ち無沙汰なまま、なんとなく剣の稽古が出来る場所へ行くと、ヤード殿が既に稽古をしていた。考える事は同じなのだな。

 私は、私達は強くならなくてはならない。あの、マレジア殿の里で起きたような事は、二度とあってはならないのだ。

 あの時の事を思い返すと、今でも背筋が寒くなる。本当に、ベル殿が生きていて良かった。

 未だかつてない程の強敵。それが、異端管理局だ。マレジア殿も言っていたが、あれ程とは、正直思わなかった。侮っていた部分もあると思う。それも、自分の力への過信ではなく、ベル殿の力に頼り切った結果だった。

 あんな事は、二度とあってはならない。

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